転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

六百四十話 夜明け前の異変

　でも、そんな穏やかな眠りも長く続きませんでした。

　ちょんちょん、ちょんちょん。

「うん……スラちゃん？　なあに？」

　明け方、何故かスラちゃんが僕の事を起こしてきました。

　何だかとっても焦っている様な……

　あっ、もしかして。

　ゆさゆさ、ゆさゆさ。

「ティナおばあさま、起きてください。何か異変が起きているみたいです」

「ううーん、アレク君分かったわ。ちょっと待っていてね」

　もそもそしながらも、ティナおばあさまが起きました。

　その間に、スラちゃんと起きてきたプリンが、リズの事を起こしています。

　念の為に探索魔法をかけてっと。

「あっ、屋敷の周りを誰かが取り囲んでいます！」

「間違いなく、奇襲ね。屋敷が見張られていたのね」

「うーん、むにゃむにゃ……」

　直ぐに、ティナおばあさまが騎士服に着替えながら準備をしていました。

　すると、慌てた様子のジンさんが僕達の部屋に入ってきました。

　ドン。

「おい、屋敷が囲まれているぞ。急いで準備を……大丈夫みたいだな」

「ジン、急いでいるとはいえノックはしなさい。スラちゃん、レイクランド辺境伯様を起こしてきて」

　着替え終わっている僕達を見てジンさん達はホッと一安心しているけど、マナーの所でティナおばあさまに怒られちゃったね。

　でも、教皇国の時と同じくジンさんは冒険者の勘で危機を察知したんだ。

　ジンさんは、本当に凄いなあ。

「迂闊でしたな。まさか、こんなタイミングで賊が襲ってくるとは」

　完全フル装備のレイクランド辺境伯様が、しまったといった表情をしています。

　でも、それ以上に気になっている事が。

「ふ、ふふふ、お馬鹿さんのせいで可愛い赤ちゃんが泣いてしまったわ……」

　同じく完全フル装備のカレン様が、ガチギレで大剣を背負っています。

　これはどう考えても、眠れる獅子を叩き起こしちゃったみたいですね。

「時間がないし、簡単な作戦会議だ。屋敷は完全閉鎖状態で、俺達はスラちゃんのショートワープで外に出る。辺境伯様は、屋敷内の指揮をお願い出来ますか？」

「心得た。屋敷に入ってきた賊は、残らず叩きのめしてやるぞ」

「ふふふ、お馬鹿さんの口から色々と聞かないとならないので、殺しては駄目ですわね」

「えっ、ええ……その通りです……」

　ジンさんはカレン様の迫力にビビっているけど、カレン様は何とか理解してくれました。

　背丈ほどある大剣をマジックバッグにしまって、今度はまたしてもごっついメイスを取り出した。

　あの、そんなごっついメイスだと、大剣と同じ結果になっちゃうんじゃないかな？

「取り敢えず、これでいこう。俺達とアレク達に別れて、一気に制圧するぞ」

「「「はい！」」」

　取り敢えず役割が決まったので、僕達はスラちゃんのショートワープで屋敷の外に出ました。