転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

五百八十五話 ボンバー伯爵がボンバーします

　カチャ。

「ははは、待たせたな」

　何か目茶苦茶偉そうにしながら、スキンヘッドの太った人が応接室に入ってきたよ。

　貴族服が金糸で刺繍されていて、辺境伯様どころか陛下よりも豪華だよ。

　オマケに、指には豪華な宝石の付いた指輪を複数はめています。

　僕達は、ボンバー伯爵が座ってからソファーに座りました。

「ボンバー伯爵、この手紙ですが……」

「おーおー、その手紙か」

　早速といった感じで、辺境伯様が懐からボンバー伯爵が出してきた手紙をテーブルの上に出しました。

　ボンバー伯爵は手紙を見て、思わずニヤリとしています。

　うーん、何でこんなにもボンバー伯爵は自信満々なんだろうか？

「「この話、キッパリとお断りします！」」

「はっ？」

「「ぷぷっ」」

　おお、辺境伯様とマロード男爵様が声を揃えて手紙の件を断ると、ボンバー伯爵は訳が分からないという表情に変わりました。

　そんなボンバー伯爵の表情を見た瞬間、イザベラ様とマロード男爵夫人が手で口元を隠しながらも思わず吹き出してしまいました。

　というか、僕も吹き出しそうでかなり危なかったです。

　バン！

「なっ、たかが男爵如きが伯爵からの要請を断るとは、一体どういう事だ！」

　ボンバー伯爵は思わず顔を真っ赤にしながら席を立ったけど、やはりというかマロード男爵の事を格下の貴族だと見下していたんだね。

　ボンバー伯爵の様子に、皆呆れ顔になっちゃいました。

「はあ。ボンバー伯爵、ここには辺境伯である私もいるのだがな」

「うるさーい！　俺はマロード男爵と話をしているんだ！　辺境伯は引っ込んでいろ！」

　あーあ、ボンバー伯爵は完全に頭にきていて、周りの事が見えなくなっているよ。

　辺境伯様にも、思わず喧嘩を売っているよ。

　どうして貴族主義の貴族は、こうも自分勝手なんだろう。

「男爵如きが伯爵家から嫁を貰うんだ、光栄だと思うんだな！」

　ドーン。

「「「「「うん？」」」」」

　顔を真っ赤にして口からつばを飛ばしながらボンバー伯爵が喋るから、僕達は逆に冷静になっちゃいました。

　そして、ボンバー伯爵は懐からテーブルの上に一枚の紙を出しました。

　テーブルに紙を叩きつけたって表現の方が正しいかな。

　全員がその紙を見た瞬間に、思わずはてなマークがいっぱい頭の上に浮かびました。

「これは、ボンバー伯爵家ベラミ嬢とマロード男爵家ライアンの婚姻許可書？」

「既にこの婚姻は、内務卿閣下のお墨付きなのだ！」

　貴族の嫡男の婚姻だから、内務卿に申請を出さないといけないのは分かります。

　そして、この婚姻許可書自体は確かに本物の用紙です。

　ボンバー伯爵は自信満々に書類を僕達に見せているけど、この書類はツッコミどころ満載でどこから指摘すれば良いか皆迷っています。

　とりあえず、ジャブから始めよう。

　僕達は顔を見合わせて、それから最初にマロード男爵様が話し始めました。

「ボンバー伯爵様、この書類に記載されているサインは私のものではありません。第一、私の名前が間違っております」

「はあ？」

　うーん、ジャブにしてはダメージが大きかったかな？

　ボンバー伯爵は、アホづらのまま固まってしまいました。