五百二十八話 冒険者の行動履歴

 ずずずず。


「あっ、壁にも何かあったよ」

「本当だね、削った痕があるよ」

「とっても怪しい」


 またもやリズ達が何かを見つけました。

 テーブルを三人で移動して、壁を指さしています。

 確かに、壁の一部の色が明らかに違います。

 ギルドマスターが試しに壁をナイフで触ると簡単に削る事ができて、しかも削った壁の中を見てビックリ。


「何だか怪しいものが沢山ありますね」

「こりゃ、ある意味宝の山だな。そういえば、奴は長期滞在者だったな」

「全ての家具と、家具に隠された所も調べないといけませんね」


 書類っぽいものや良くわからない魔導具もあって、ギルドマスターも思わず苦笑していました。

 でも、ジェイド様が言ったみたいに家具を動かしたりすると、隣の部屋に泊まっている人の迷惑になるんじゃないかな?

 そこで、隣の部屋に泊まっていた人に来てもらいました。


「いやあ、これは派手な事になっていますね」

「キュー」


 隣の部屋に泊まっていたのは、まさかのルシアさんとククリさんでした。

 ルシアさんと従魔のポッキーは人がゴタゴタ動いている部屋を見てビックリしつつ、何故かリズ達に混ざって宝探しを始めていました。


「そういえば、夜中に何かを削る音がしていました。ゴソゴソと物音がする時もありましたね。全く顔を合わせていないので、部屋に誰が入っていたかは分かりません。そういえば、全く話し声が聞こえてきませんでした」

「となると、あの冒険者は外部でやり取りしていて、この宿はいわば倉庫扱いか」


 ククリさんがジェイドさんに話をしているので、事情を聞くのに全く支障はありません。

 もしかしたら、あの冒険者と街中で接触していた人物がいるかもしれないなあ。

 と、ここでマリーさんが僕達の所にやってきて話しかけてきました。


「ジェイド様、ギルドマスター、ちょっと気になった事があります。あの冒険者の活動履歴を調べていた所、ここ一年程全く依頼を受けていませんでした。その前は頻繁に依頼を受けています」

「全く依頼を受けていないのは、確かに気になりますね。依頼を受けなくなったのに、何か理由がありそうですね」

「他に同じような行動パターンをしている冒険者をリストアップできるか? あと、王都のギルド本部にも、冒険者に怪しい動きがあった事を伝えて欲しい」

「分かりました」


 確か闇ギルドは、この一年は目立った動きをしていません。

 ちょうどタイミングが重なるので、とっても怪しいですね。

 因みにスラちゃんは長距離転移を繰り返していて、王城に逐一報告しています。


「キュー」

「お、流石はポッキーだね。私達の手の届かない所にあるものも取ってくるとは」

「「「すごーい!」」」


 因みにルシアさんはともかくとして、ポッキーはアイテムボックスも駆使していて大活躍していました。

 ポッキーには、あとでご褒美をあげないとな。

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