転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

四百七十八話 害獣駆除という名のストレス発散

　王都で起きた貴族跡目を巡る争いは決着したけど、関係者は精神的に疲れてしまった。

　アホ貴族の醜態を見てしまったし、後始末も大変だった。

「よし、ストレス発散するわよ」

「「「おー！」」」

　という事で、大暴れしてストレスを発散したい人達の要望で、マロード男爵領の森にやってきました。

　マロード男爵領恒例の、秋の害獣駆除を行う為です。

　一度に偉い人が来たら王城の仕事が回らないので、二日間に分ける事に。

　一日目は王妃様とアリア様を筆頭に、軍務卿と内務卿。

　そしてアイビー様とエレノアも参加しています。

　勿論護衛として近衛騎士とジンさん達も参加していて、赤ちゃん軍団はマロード男爵の屋敷で纏めて面倒を見て貰っています。

「あの、そのゴツい武器は？」

「今日は害獣駆除だから、森の中でも使える物を選びましたわ」

「これなら、剣やハルバードよりも取り回しが効きますわよ」

「は、はあ……」

　騎士服を着てやる気満々の王妃様とアリア様が手にしていたのは、かなりゴツい頭部が付いたメイスだった。

　質問をしたジンさんも呆れる程の気合です。

「いやあ、王妃様も側室様も凄いやる気ですわね」

「いえいえ、このくらいは当然ですわ」

「相手はイノシシですから、このくらいでないと叩き潰ぶせませんわ」

　そして王妃様とアリア様は、本当にたまたまマロード男爵領に来ていた薬草採取でいつも一緒のおばちゃんと仲良く談笑しています。

　まあ、辺境伯領で行われた様々な結婚式でお互い顔を合わせているから、すっかり意気投合していますね。

　勿論、おばちゃんの武器もメイスです。

　しかも前にリズとスラちゃんによって魔鉄化してあるから、滅茶苦茶硬いんだよね。

　他の人はいつもの装備で、アイビー様とエレノアはレイピアを装備しています。

「内務卿もやる気満々ですな」

「いえいえ、軍務卿も中々のものかと」

　アホ貴族の対応で一番苦労した軍務卿と内務卿も、滅茶苦茶やる気になっています。

　なんと、軍務卿と内務卿ともゴツいガントレットを装備しています。

　もしかして、イノシシと鹿を物理的に殴って退治するのですか？

　二人ともニヤリとしながら話をしていますよ。

　うーん、これは不穏な雰囲気ですよ。

　そんな気持ちの中、僕達は森の中に入っていきました。

「うりゃー！」

「せーい！」

「どっせーい！」

　バキン、ボカン、ズドン。

「「「ブフゥ」」」

「お、王妃様、アリア様、あまり先走らないで下さい」

　嗚呼、僕の懸念が現実に。

　王妃様とアリア様がおばちゃんと共にメイスをバットの様に振り回して、突っ込んできたイノシシをぶっ飛ばしています。

　しかもジェリルさんよりも前に走りながら、次々とイノシシを倒していきます。

　うわあ、イノシシの頭がお見せできない位にぐちゃぐちゃになっているよ。

　念の為にスラちゃんが一緒についているけど、スラちゃんの補助なんて何もいらないなあ。

「ハハハ、次だ次！」

「どんどん行くぞ！」

　バキバキ、ボキン！

「「「ピィ」」」

「閣下、お待ち下さい」

　軍務卿と内務卿も、拳を振り回して次々と鹿を倒していきます。

　兵も、軍務卿と内務卿の後をついていくのに必死です。

　こちらにもアマリリスがついているけど、何もする事がない。

「なあ、俺ら護衛の意味があるか？」

「全くないわね。うち漏らす獲物もないし」

「怪我すらしないから、本当にやる事がないわね」

「ぶぅ、つまらないよ」

　ジンさんとレイナさんとカミラさんの呟きも、とってもよく理解できます。

　ストレス発散の為に害獣を狩るデストロイアとなった人達を止めるのは難しく、ただ後を追うだけです。

　何にもやる事がないので、リズ達もかなり暇そうです。