四百七十二話 屋敷の中は修羅場状態
直ぐに近衛兵が、拘束した男の身体検査を始めます。
すると、兵の兜に描かれていた紋章にランカーさんが気づいた様です。
「この紋章、ジェームス伯爵家のものですね」
「確か、今ごたごたを起こしているバンクス伯爵家の側室の実家ですよ」
ランカーさんの話にジェリルさんが返します。
もしかして、もしかすると。
僕とティナおばあさまは、思わず顔を見合わせました。
僕は、直ぐに寝ている子どもを鑑定します。
「ティナおばあさま、二人はバンクス伯爵家の子どもです」
「二人は侍従と一緒に王城で保護するわ。後は現状を把握するために、ジェームス伯爵家、バンクス伯爵家、それと正妻の実家であるハリアー伯爵家に兵を調査に行かせましょう」
「はい」
僕は王城にゲートを繋いで、侍従と子どもを王城に運びます。
安全もあるので、王妃様やアリア様にルーカスお兄様達も王城に戻ります。
続いて、王城にある兵の詰め所にゲートを繋いでティナおばあさまが軍務卿に説明すると、内務卿も来た方が良いという事になって呼んできました。
その間に、兵が三つの伯爵家に向かっていきます。
一番のトラブルが起きていると思われるバンクス伯爵家へは、多くの兵とともにスラちゃんとプリンとアマリリスも同行しています。
「いやはや、先程バンクス伯爵家の隣の屋敷からバンクス伯爵家で乱闘騒ぎが起きていると連絡があったのですよ」
「運良く炊き出しが行われていた所に、バンクス伯爵家の子どもを抱いた侍従が駆け込んできたのか」
「バンクス伯爵家では、怪我人が複数出ているかもしれませんわ。アレクくん、悪いけど一緒についてきてね」
「分かりました」
内務卿と軍務卿とティナおばあさまと立ち話をしてから、僕達は馬車に乗って現地に移動します。
既に三人の怪我人と剣を持った男達がいるという事は、バンクス伯爵家は大変な事になっていると考えて良いでしょう。
馬車の中は重い空気で包まれていて、誰もあまり言葉を発していませんでした。
「くそ、怪我人が多いぞ」
「こっちに運んで来い!」
馬車はバンクス伯爵家の屋敷前に到着したのだが、屋敷の前は修羅場でした。
多くの侍従が怪我をしていて、兵によって庭に運び出されています。
スラちゃんが怪我人の間を動き回って、次々と治療をしていました。
それと共に、多くの武装兵が拘束されて庭に並べられています。
あまりの惨状に、僕達は言葉を失ってしまいました。
リズ達を連れてこなくて良かったと思っていたら、軍務卿の所に兵が報告しに来ました。
「軍務卿閣下、報告いたします。バンクス伯爵家に正妻側室両方の要請を受けたジェームス伯爵家ハリアー伯爵家の武装兵が雪崩れ込んだ様です。目的は、双方の子どもの殺害です」
「くそ、自分の子ども可愛さに暴挙にでたのか」
兵の報告は何となく予想できたけど、本当に酷いことをするなあ。
貴族としてではなくて、人として恥ずかしくないのかな?
内務卿とティナおばあさまも、あまりの酷さに憤慨しています。
と、ここでランカーさんが僕の事を呼んできました。
さっきの赤ちゃんよりも少し大きい赤ちゃんを抱いた侍従が側にいるよ。
「アレク殿下、この子の治療をお願いします。武装兵がこの子の首を締めていたので保護しました」
「ええ! 何でそんな酷い事を。直ぐに治療します」
幸いにして赤ちゃんの怪我は酷くなく、直ぐに良くなりました。
侍従も突き飛ばされたのか腕に怪我をしていたけど、軽傷だったのであっという間に治りました。
すると、赤ちゃんを抱いていた侍従が僕とティナおばあさまに衝撃的な事実を伝えました。
「あの、実はこの子は私とご主人様の子どもになります」
「えっ、そうなんですか?」
「はい、私はその、バンクス男爵家の娘で、バンクス伯爵家の側室になります」
「その話は詳しく聞きたいけど、先ずは貴方と赤ちゃんの身の安全が最優先ね。アレク君、王城の医務室にゲートを繋いでくれるかしら?」
「はい、直ぐに繋ぎます」
何だか、バンクス伯爵家の問題は色々と複雑そうだぞ。
そう思いながら、僕は王城の医務室にゲートを繋いだのだった。
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