四百七十一話 血塗れで駆け込んだ人
以前王城での会議で報告された不穏な動きを見せているという貴族の件だったが、予想とは別の方向で静かにしていた理由が発覚した。
それは、秋の王城での会議で報告された。
「大騒ぎしていた伯爵家当主が病死寸前で、跡目を巡って正妻と側室とで争いが起きております」
「第一子が側室の子で、第二子が正妻の子か。まあ、貴族としてはよくあることだな」
「問題なのは第一子第二子共に幼年で、実質的な権力は正妻と側室にあります」
「報告によると、正妻側室共に伯爵家の出らしいな。普通は跡目争いが怒らないように、正妻と側室で爵位の差をつけるものだ」
内務卿からの報告を聞いた陛下は、実に馬鹿馬鹿しいといった表情をしていた。
何か反乱を企てていたかと思ったら、本人は病死寸前だったとは。
しかも、自分の跡目すら管理出来てなかった様です。
「貴族の跡継ぎ問題だから、我々としては何もできません」
「いちいちそんな事に付き合ってられない。当事者同士で決着をつけないと。しかし、あの伯爵も暴飲暴食が過ぎたな」
「オークと見間違う程に太っておりましたから、我々も気を引き締めなければ」
という事で、伯爵家の件はこれで終了し議題は別の事に移っていきました。
「欲に塗れた女性って何をやるのか分からないわ」
「せめて幼い子どもに不幸な事が起きない事を願うばかりだわ」
王妃様とアリア様も、伯爵家の内情を知らされていた。
親の勝手な思いで、子どもが巻き込まれないことを祈るだけだよ。
こういった感じで、この時は伯爵家の事は伯爵家で解決する内容だったので特に問題になっていませんでした。
事態が大きく動いたのは、会議から二週間後の事でした。
「はい、どうぞー」
「熱いから気を付けてね」
この日は大聖堂で王家主催の炊き出しと無料治療が行われていて、リズとエレノアが出来上がったスープを並んでいる人に配っています。
ルーカスお兄様とアイビー様とルーシーお姉様も、順番に配膳を行っています。
王妃様とアリア様に、ティナおばあさまも一緒に配膳を行っています。
因みに、ルカちゃんとエドちゃんは王城でミカエル達子ども軍団と共にお留守番です。
今日は珍しくレイナさんとカミラさんが、ルリアンさんとナンシーさんと共に子ども軍団の面倒を見ています。
トントントントン。
「ルリアンとナンシーはともかくとして、レイナとカミラは料理は駄目だからなあ」
「まだ駄目なんですか?」
「二人の料理の腕が上がる早さよりも、レイカが料理を覚える方が早そうだな」
ジンさんが炊き出しにレイナさんとカミラさんがいない理由を話してくれたけど、何故かレイナさんとカミラさんは炊き出しの度に料理を作ろうとして周りに止められるんだよね。
そんな事を思いながら、僕はジンさんとスラちゃんと共に野菜を切っていきます。
そして、炊き出しと無料治療が一息ついた時でした。
「す、すみません。治療を、治療をして下さい」
侍従の服を着た若い女性が、小さな子どもを二人抱えてこちらに走ってきたのだ。
侍従も小さな子どもも、顔も服も血だらけです。
急いで簡易ベッドを用意して、三人を寝かせます。
「お兄ちゃん、準備オッケーだよ」
「じゃあ、やるよ」
二人の子どもがかなりの重傷なので、僕とリズの合体魔法で治療していきます。
侍従も背中などに多くの怪我をしているので、スラちゃんが治療していきます。
三人とも治療を受けている間に気を失ってしまったが、何とか助ける事ができました。
でも、こんな酷い事を誰がしたんだろうか。
そんな事を思っていたら、直ぐに答えがやってきました。
「待てー!」
「侍従はどこに行った!」
血の付いた剣を持った執事服を着た男と兵が、何人もこっちにやってきたのだ。
すぐさま王妃様やアリア様にルーカスお兄様達は、直ぐに僕達の側に避難してきます。
勿論近衛兵に加えて、ティナおばあさまが戦闘準備に入りました。
プリンとアマリリスも臨戦態勢です。
そして剣を持った男達は、ティナおばあさまを見て一言。
「ばばあ、侍従をどこに隠しやがった!」
「隠していると、ただじゃおかねえぞ!」
うわあ、この人たち王家に対して喧嘩を売ったぞ。
問答無用で不敬罪でしょう。
「確保!」
「「「ぎゃー!」」」
ティナおばあさまの怒号を聞いたプリンが、剣を持った男達に電撃を放ちます。
更にはアマリリスが、慣れた感じで男達を縛っていきます。
こいつら、一体誰なんだろう?
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