四百六十八話 ジジ馬鹿と息子にからかわれた陛下

 そしてリズ達の勉強も終わって、ジンさん達と一緒に赤ちゃんの面倒を見ていた時だった。


 かちゃ。


「いやはや、ようやく会議が終わったぞ」

「予定通りの収穫量で良かったですな」

「商人の取引の量が増えるのは良いことですぞ」

「「「うにゅ?」」」


 部屋に陛下と宰相と商務卿が入ってきた。

 三人とも首をもんだりと、ちょっと疲れた様子です。

 これは赤ちゃんをかまって癒やされにきましたね。

 早速宰相と商務卿はこちらにやってきて、ガイルちゃんとレイカちゃんを抱っこしました。


「ガイルちゃん、じーじですよ」

「じー」

「そうじゃ。じーじゃ。ガイルは本当に可愛いのう」

「おじいちゃん、キモイよ。人には見せられない顔になっているよ」

「何をいうか。会議で枯れ果てた心の潤いを取り戻しているだけじゃ」


 宰相は、ガイルちゃんにじーと言ってもらって満面の笑みです。

 孫娘のカミラさんにボロクソに言われても、全く気にしていません。


「ほほほ、レイカは可愛いなあ」

「あうあう」

「ほらレイカ、じーじの事を呼んで頂戴」

「うにゅ? じー?」

「ははは、レイカは賢いなあ」

「お父様、キモイ、キモ過ぎる」

「ははは」

「だめだこりゃ……」


 一方の商務卿は、レイカちゃんを抱っこしたままおしゃべりをしていました。

 こちらもレイナさんにボロクソに言われても、全く気にしていません。

 おじいちゃんの孫と遊びたいパワーって凄いんだな。

 さてさて、陛下はどうなっているかな?


「さあ、ルカちゃん、こっちにおいで」


 ぷい。


「や」

「そ、そんな。じゃあ、エドちゃん、こっちにおいで」


 ぷい。


「や」

「えー! そ、そんな……」


 陛下はジンさんに抱きついているルカちゃんとエドちゃんを抱っこしようとしたけど、ルカちゃんとエドちゃんもジンさんに抱きついたままぷいとそっぽを向いてしまった。

 まあ、ルカちゃんとエドちゃんもそっぽを向いた後でニコッとしているから、どうも赤ちゃんなのにわざとやっている様だぞ。


「おいジン、どうなっているんだよ!」

「俺に聞かないで下さいよ。赤ちゃんの時に散々泣かせたからではないですか?」

「なっ」

「そうね。あなたには前科がありますから、しょうがないですね。ほら、二人ともこっちにおいで」

「「まー!」」

「とほほ……」


 陛下がジンさんに噛みついてもさらりとかわされてしまい、更にはアリア様に追撃を受けてしまった。

 陛下は思わずずーんと落ち込んでしまったけど、誰も慰めに行かなかった。

 まあ、皆も自業自得って思っているんだけどね。


 かちゃ。


「ただいま戻り……」

「えっ? 何々?」


 と、ここで学園見学に行っていた王妃様とルーカスお兄様とアイビー様が戻ってきました。

 項垂れている陛下を見て、ルーカスお兄様とアイビー様は思わず固まってしまった。

 そりゃ、目の前で大人が落ち込んでいればびっくりするよね。


「いつもの事よ。二人とも気にしないで」

「「あ、はい」」

「学園見学は特に問題ありませんでした。念の為にテロの警戒もしていましたが、何もありませんでした」

「そう、それは良かったわ。ルーカスとアイビーも、少し休みなさいね」

「「ありがとうございます」」


 そしてティナおばあさまが陛下が落ち込んでいる理由を適当に話すと、ルーカスお兄様とアイビー様も直ぐに納得した様です。

 因みに王妃様は最初から陛下が落ち込んでいる理由に気が付いた様で、特に気にする素振りもありませんでした。

 うーん、流石に陛下は可哀想だけど、もう少ししたらいつも通りに復活するでしょう。

 と、ここにいる殆どの人が思っているので、特に気にしていませんでした。

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