四百五十五話 皆で怪我人の治療

 僕達は屋敷の侍従に案内されて、屋敷のすぐ近くにある病院に向かいました。

 ベッドには多くの怪我人が寝込んでいて、中には具合の悪い人もいます。


「皆様、双翼の天使様がいらっしゃいました。辺境伯領の治療研究所からも人が来ております」

「た、助かった」

「有難い、これで何とかなるぞ」


 侍従が僕達が到着したと伝えると、ベッドに寝込んでいる人から安堵の声が聞こえてきました。

 とにかく治療を始めないと。

 僕達は手分けして治療を始めます。


「どうですか? 良くなりましたか?」

「凄い、全く痛くない!」


 僕とリズは回復魔法を使えるので、治せる範囲の怪我人をドンドンと治していきます。


「この方には、ポーションと毒消しポーションの両方を服用した方が良いでしょう」

「はい、これを飲ませて下さい」

「直ぐに良くなる」


 サンディとイヨは、治療研究所の研究員と共に主に病人を診ています。

 ポーションと毒消しポーションは沢山あるし、生薬も持ってきています。

 研究員も三人来てくれたので、手分けして治療にあたります。

 午前中には、ほぼ全ての怪我人と病人の治療を終える事ができました。


「流石は辺境伯領の研究所の方ですね。的確に治療されており感動しました」

「いえいえ、我々はできる事をやったまでです。良いサンプルも取れましたし、更に精進します」


 病院に勤めているシスターが研究員の手際の良さを褒めているけど、研究員は至って冷静に受け答えしていた。

 でも、研究員もちょっと嬉しそうですよ。


「我々は本日一杯こちらにおりますので、街の人の治療も行ないます」

「リズも頑張るよ!」

「それはとても有難いです。魔物を倒そうとして怪我をした人が多くおります」


 リズ達は、このまま病院に陣取って街の人の治療にあたるそうです。

 ノエルさんもいるので、ここはお任せします。

 僕とティナおばあさまは、一旦屋敷に戻ります。


「僕は炊き出しのお手伝いをします」

「気をつけてね。私はクラヴィーアと共に文官の所にいるわ」


 ちょうどお昼前のタイミングで屋敷の前で侍従が炊き出しの準備をしていたので、僕はそのまま炊き出しの準備を手伝います。

 ティナおばあさまは、僕に声をかけて屋敷の中に入って行きました。

 さて、僕も野菜を切っていこう。


 トントントントン。


「アレク殿下、とても上手な包丁さばきですね」

「いつも炊き出しのお手伝いをしていますから。このくらいはできますよ」


 僕の包丁さばきに屋敷の侍従は驚いているけど、野菜を切るのは朝飯前です。

 ついでだから、皆には美味しい料理を食べてもらおう。

 という事で、秘密兵器のバザール領特製ソースを使った野菜炒めを作ります。


「おお、何だか美味しそうな匂いがしてきたぞ」

「ボウズ、ちょっと味見させてくれ」

「良いですよ。熱いから気をつけてくださいね」

「はふはふ、なんだこれは! 滅茶苦茶美味いぞ!」

「バザール領特製のソースを使っただけですよ。とっても美味しいですよ」


 並んでいたおっさんに味見をして貰ったけど、いい感じにできている様です。

 流石はバザール領のソースだなあ。

 炊き出しに並んでいる人にも、とっても好評です。


「バザール領なら、すぐ近くだな」

「この騒ぎが収まったら、仕入れに行くか」


 うんうん、冒険者や兵の討伐も始まったからか、街の人も少しずつやる気になってきている。

 ブランターク男爵領からバザール子爵領は近いし、きっと良い取引相手になってくれるはずだよ。


 夕方になると、兵と冒険者達も森から戻ってきました。

 沢山の獲物を捕らえたらしく、プリンのアイテムボックスに沢山入れてきたそうです。

 今頃は、冒険者ギルドは沢山の獲物の解体で大忙しなんだろうな。

 因みに、ランディ様とクラヴィーアさんとルルーさんも話し合いに参加します。


「いやあ、上級冒険者にとっては中々面白い場所だな」

「因みに、午前中にギルドにも獲物を置いてきているから、解体出来ない量ではないぞ」

「そーなんだ」


 下級冒険者にとっては地獄の現場であっても、上級冒険者にとっては宝の山なんだろう。

 ホクホク顔で、とっても良い笑顔だ。


「我々も華の騎士様に鍛えて頂き、大変助かりました。お陰様で、大きな怪我人もなく順調です」

「それは良かったわ。私も頑張ったかいがありますわ」


 辺境伯領の兵も、ティナおばあさまがたまに指導しているのもあってかとても強くなっています。

 怪我人も部隊の治癒師でどうにかできているらしく、全然平気だそうです。


「あと、ゴブリンの巣を発見しました。かなり大型なので、明日より順次攻略を始めます」

「獲物が沢山あったから、ゴブリンも大規模になったようだな。典型的なゴブリンの自然拡大の例だぞ」

「逆を言うと、今なら潰せるというわけですね。皆さん、申し訳ないですが宜しくお願い致します」

「おう、大将はどんと屋敷で構えてな」


 ランディ様が兵と冒険者にお礼を言うけど、兵と冒険者もやる気になっています。

 動物や魔物の数も少なくなったので、明日からはいよいよ本命のゴブリン退治です。

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