四百四十三話 大暴れしたストール男爵
「くそ、くそ、くそ。俺は貴族なんだぞ!」
「誰か、助けて……」
事件が発生したのは温泉街の食堂で、以前に僕達も利用した事のある所だった。
どうもストール男爵は酔っ払っている様で、ナイフを持って給仕のお姉さんを人質に取っていた。
ストール男爵に同行していたと思われる人物は既に拘束されていたので、後はストール男爵をどうにかするだけらしい。
「マイク様、それにセシル様も。結婚式ではなかったのですか?」
「もう披露宴だけだし、主な方からの挨拶も終わった。何も問題はない」
「私達の事よりも領民の命の方が大切ですわ」
「「「マイク様! セシル様!」」」
現場の指揮官が、なぜここにマイク様とセシルさんがいるのかとびっくりしていた。
でもマイク様とセシルさんはここにいて当たり前だといった感じだし、集まった領民もマイク様とセシルさんに大きな歓声を上げていた。
「くそ! 同じ男爵なのに対応が違うじゃないか! もっと貴族を敬え!」
うん、酔っ払いが何か言っているけど、気にしない事にしよう。
こちらも、人質の救出準備は万端です。
「はあ、アホには何をいっても無駄ですね。スラちゃん、やっていいわよ」
王妃様はギャーギャー喚いているストール男爵に呆れながらも、冷静にスラちゃんに指示を出していた。
スラちゃんは王妃様に触手で敬礼をすると、さっとショートワープを使いました。
「えっ?」
「あー!」
スラちゃんのショートワープであっという間に助けられた給仕のお姉さんは、びっくりしていてよく分かっていなかった。
そして、スラちゃんよ。
毎回の事だけど、悪人のお尻に触手を突き刺すのは止めなさい。
でも、これで店内はストール男爵だけなんだけど、随分と暴れたんだな。
店内は椅子や机が散乱していて、めちゃくちゃになっているぞ。
「くそ、くそくそ!」
「あっ!」
バシッ。
そして、何を血迷ったのか、ストール男爵は王妃様目掛けて水魔法を乱射したのだ。
すかさずスラちゃんが魔法障壁を張って魔法を防ぐけど、もうストール男爵はめちゃくちゃだなあ。
「はあ、はあ、はあ、はあ。くそ、なぜスライムの魔法障壁が破れないんだ!」
ストール男爵は魔力があまりないのか、あっという間に魔法を撃ち終えてしまった。
膝をついて、荒い息を上げていた。
スラちゃんも、変な踊りでストール男爵を煽らないの。
そして水魔法で更にぐちゃぐちゃになった店内を見て、マイク様が一言。
「このお店、お前ら同級生組の二次会会場だったんだよ。王妃様とアリア様絶賛のすき焼きを出す予定だったんだ」
「「「はあ?」」」
マイク様の呟きを聞いた同級生の女性陣が、思わず声を上げていた。
店内だけでなく厨房もめちゃくちゃになっていて、二次会どころではないのは明白だ。
怒りの止まらない女性陣が、王妃様とアリア様に質問していた。
「王妃様、アリア様。こいつ締めても良いですか?」
「ちょっと、許せないんですけど」
「ええ、良いわよ。なにせ陛下にお土産として頼んだしゃぶしゃぶセットも、このお店に頼んだのよ。これじゃあ、陛下へのお土産も駄目になっただろうしね」
「へっ?」
あーあ、ストール男爵は二次会会場どころか陛下へのお土産まで駄目にしちゃったんだ。
ストール男爵は、今更ながらしまったといった顔になった。
でも、もう何もかもが遅いだろうね。
王妃様はにこやかに女性陣への攻撃を許可していた。
「王族を直接攻撃した時点で、既に貴族としての権限は全て停止されたから遠慮はいらないわよ。ただ、お喋りできる程度にしていてね」
「「「はい!」」」
そして、アリア様もにこやかに女性陣への攻撃を許可していた。
まあ、王族を直接攻撃したから、ならず者を制圧するという大義名分もあるしね。
ポキポキ、ポキポキ。
ポキポキ、ポキポキ。
「や、やめ、やめて……」
ポキポキ、ポキポキ。
ポキポキ、ポキポキ。
無言で拳を鳴らす女性陣を見て、ストール男爵はズリズリと下がっていった。
しかし、壁にぶつかってもうこれ以上下がれなくなった。
ストール男爵は顔面蒼白だけど、もう遅いだろうなあ。
「「「成敗!」」」
「あー!」
そしてストール男爵は、怒れる女性陣によってボコボコにされました。
あまりにも女性陣がストール男爵をボコボコにしすぎたので、僕がストール男爵を治療する事になりました。
こうして、ボコボコにされたストール男爵はあえなく捕縛されました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます