四百十三話 捕まえた不審者の情報

 僕はゲートを繋いで、皆と共にブレイクランドから辺境伯領の屋敷に戻ります。

 すると、辺境伯様の屋敷にいたミカエル達の子どもが僕達の到着に気がついて、一斉に駆け寄ってきた。


「にーに、おかえり!」

「ただいま。元気になったね」

「うん!」


 僕にミカエルが抱きついてきたけど、ジュルジュルだった鼻水も止まって体調は良さそうだ。

 他の子どもも全員くしゃみや鼻水は止まっている。

 治療研究所で作った薬がよく効いたんだ。

 本当に良かったよ。


「皆おかえり。ティナ様から報告は受けていたが、そちらも中々面白い事になっているな」


 辺境伯様も僕達の所に姿を現した。

 辺境伯様の言っている面白い事とは、きっと僕達がオカマさんと会う事だろうな。

 先ずは捕えた不審者の事もあるのだが、王城からアリア様も手が空いているという連絡がティナおばあさまに入ったので、王城からアリア様を迎えて応接室に移動します。

 因みに、リズとサンディはミカエル達と遊んでいます。


「どうも捕まえた不審者は、子どものみかかる病気にわざと罹っていた様だ」

「つまり風邪をひいた状態で、そこら中に動いたという事か」

「そうだな。我々も風邪をひいた他人の側にいると風邪にかかる事があるが、まさにその状態だ」


 辺境伯様が捕まえた不審者の事を伝えると、ジンさんが同意していた。

 丁度昨年末に風邪が流行って周りの人から風邪が移る事を、ジンさんは身をもって体験していたからなあ。

 因みにレイナさんとカミラさんは、レイカちゃんとガイルちゃんと共にジンさんが風邪をひいてもピンピンしていたっけ。


「しかもその不審者は闇ギルドの関係者だった。ギルドナンバーズのドクターの配下の者から薬を渡されて、辺境伯領をウロウロしろと言われたそうだ」

「何となくは想像していましたが、やはり闇ギルドの関係者でしたか。既に辺境伯領の治療研究所経由で各地の治療研究所に情報は渡っていますが、他の病気も出てくる可能性がありますわね」

「可能性が否めないばかりか、かなり高い所が頭の痛い所ですな。いずれにせよ、闇ギルドの動きが活発になっている証拠です」


 辺境伯様とアリア様が話をしているけど、ドクターが絡んでいるのか。

 ドクターならわざと病気を他人に感染させて、周りに移す事も出来るだろう。


「既に各地へ警戒する様に伝えております。しかし、今回の様に一般人に変装されると中々捕まえることは出来ません」

「警備は厳重にしないといけませんが、我が領も警備を通り抜けられたので悔しい限りです」


 警備は今後の問題にもなるだろうけど、ここは領主である辺境伯様の分野だ。

 勿論、僕達も協力するけどね。

 そして、ちょっと気になった事が。


「辺境伯様、不審者を捕まえた時にボコボコにしたと聞きましたが、もしかして巡回に協力していたポニさん達がやったのですか?」

「不審者を見つけたのは確かにポニー達だ。しかし、不審者をボコボコにしたのはイザベラなんだよ」

「「「えっ!」」」


 おおう、辺境伯様からまさかの答えが帰ってきたぞ。

 あのイザベラ様が不審者をボコボコにしたとは。

 応接室にいた他の人も、思わず驚いていたぞ。


「というか、厳密には不審者を最初に見つけたのはミカエル達なんだ。薬が効いて元気になったのでミカエル達は庭で遊んでいたのだが、屋敷を覗く不審者がいたんだよ」

「まさか、辺境伯様の屋敷を覗いていたのが、例の不審者ですか?」

「その通りだ。そして、ミカエル達の側には巡回に同行しなかったポニーとイザベラがいてな。ポニーや護衛の者よりも真っ先にイザベラが飛び出したんだ」


 おお、不審者も馬鹿なのか、よりによって辺境伯様の屋敷を覗いていたとは。


「イザベラは子ども達に再び病気がうつると思って、気がついたら不審者をぶん殴っていたと言っていたよ。因みに不審者と不審者に接触した大人も薬を飲んでいるぞ」

「イザベラ様の気持ちは良く分かるなあ。私も再びレイカに何かされると思ったら、思わず手を出すなあ」

「うんうん、同感ね。私もそいつをぶん殴っているわ」


 イザベラ様の行動に、レイナさんとカミラさんは強く頷いていた。

 これも子どもや孫を思う気持ちの現れなのだろう。

 因みにぶん殴ってのびてしまった不審者は、ナンシーさんとルリアンさんが治療したという。

 まあ、辺境伯領での騒動はこれで収まったという事ですね。

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