四百一話 ジンさんは有名人?
カラカラカラ。
馬車は皇都の防壁を抜けて街道に入ります。
目的地は懐古派の領地だった、ブレイクランドです。
大きな街というので、街道には所々にブレイクランドへの案内看板が立っています。
「ブレイクランドには、皇都より四日後に着く予定です」
「おう、看板に従って行けば良いんだな?」
「はい、案内に従って行けば大丈夫です」
「りょーかい」
馬車の御者は、ジンさんがつとめています。
僕とジンさん以外は全て女性なので、女性陣の会話に巻き込まれないように逃げた様です。
ジンさんは、いの一番でいつの間にか御者席に座っていました。
「あの、ジン様が御者を勤めていて良いのですか?」
「良いの良いの。本人がやりたいって言っているのだから」
「全く問題ないよ。どうせ逃げただけだから」
アレクサさんの疑問に、レイナさんとカミラさんが答えている。
流石ジンさんの妻だけあって、ジンさんの考えがよく分かっている。
しかし、アレクサさんの疑問は別の所にあった。
「いえ、教皇国で絶大なる人気を誇るジン様が御者をつとめるとなると、とても目立つのではないかと思われまして」
「「あっ」」
アレクサさんの疑問に、僕とティナおばあさまはあって思った。
レイナさんとカミラさん、それにルリアンさんとナンシーさんは知らないけど、教皇国におけるジンさんの人気は絶大だった。
ということで、馬車を止めてジェリルさんがジンさんと御者を交換します。
幸いにも、朝早くて街道ですれ違った人はいませんでした。
「くそ、上手く女性陣から抜け出せたと思ったのに」
「しかし、教皇国ではあんたが尊敬対象の有名人とはね」
「王国ではお笑い対象なのにね」
「どっちかというと、いつもツッコミしているよ」
うん、いつもジンさんとレイナさんとカミラさんは夫婦漫才をしていて、リズの言う通りボケるレイナさんとカミラさんにツッコミを入れるジンさんって構図だ。
僕だけでなく、冒険者ギルドの人達や商店街の人達もきっと同じ事を思っているだろうな。
まあ、ジンさんの事で話が続くのは可哀想だから、話の内容を変えよう。
「アレクサさんは、どんな魔法が使えますか?」
「私は聖魔法が使えます。また、火魔法も少しだけ扱えます」
「おお、リズよりも凄いね」
「いえ、私なんかはまだまだです」
リズは聖魔法特化型だから、他の魔法が使えないんだよな。
だから、他の魔法が使えないんだよね。
アレクサさんの事をリズとスラちゃんとプリンが褒めているけど、きっと鍛えたらもっと凄い魔法の使い手になりそうだね。
「じゃあ、目的地に着くまでは、アレクサの魔法訓練を行いましょう」
「お、それならカミラの出番だな」
「そうね。冒険者に教える前に、復習といきましょうか」
「すみません、よろしくお願いします」
馬車の中での暇つぶしを兼ねて、皆でアレクサさんの魔法訓練を手伝う事に。
最初はアレクサさんとリズが手を繋いで、二人で魔力循環を行います。
「お姉さん、もっと沢山魔力を流しても大丈夫だよ!」
「は、はい。リズ様の魔力量は物凄いですね」
短期間でアレクサさんの強化を行うので、リズとの魔力循環を経験してもらう。
魔力量だけでいったら、リズは凄いものがあるからなあ。
「じゃあ、次はアレク君と魔力循環をやってみましょうね」
「は、はい」
おお、カミラさんもスパルタだなあ。
リズの後に、ちょっとの休憩を挟んで僕と魔力循環を行わせるとは。
「アレクサさん、僕の事は気にせずに思いっきり魔力を流して貰っても良いですよ」
「はい」
カミラさんの特訓の意味が分かったので、僕も魔力循環は遠慮なく行います。
アレクサさんも、なんとか頑張って魔力循環を行っています。
アレクサさんは、僕の後にルリアンさんとナンシーさん、更にはスラちゃんとも魔力循環を行いました。
「はあはあはあ」
「じゃあ、息を整えたら今度は一人で魔力循環を行ってみましょうね」
「は、はい」
汗だくになったアレクサさんに飲み物を手渡して、息を整えさせます。
そして自分自身で魔力循環を行うと、アレクサさんはびっくりした顔になった。
「え! 魔力がスムーズに流れている」
「自分よりも魔力量や魔力操作が上手い人と魔力循環を行うと、普通に一人で訓練するよりも魔力循環が上手くなるんだよ」
「あ、もしかして小さい時に僕とリズが毎日手を繫いて魔力循環をしていたのも、そういう効果があったんですね」
「そういう事よ」
ふふんとカミラさんは得意げな顔をしているけど、この強制魔力循環は初心者にはかなりキツい訓練だぞ。
僕とリズは魔力量が多いけど、二人ともほぼ魔力量が同じだったから小さい時でも二人で魔力循環を行っても影響がなかったんだ。
ともあれ、アレクサさんの魔力制御がかなり上がったのは事実です。
訓練はこれで終了して、昼食を食べる為に村に到着します。
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