三百七十四話 ブリットのお試しお泊まり その二
午後は辺境伯領での炊き出しです。
今日はルーカスお兄様達は用事があって来れないので、僕達に加えてジンさんも参加します。
午前中勉強を手伝ってくれたルリアンさんの代わりにレイナさんも参加し、ジンさんの妹のルルーさんとレイナさんの妹のクラヴィーアさんも炊き出しに参加します。
ついでと言わんばかりに、ポニさん達も護衛として同行します。
「わあ、おうましゃん!」
「たかいね!」
ブリットは馬やポニーに乗るのが初めてなのか、ユキさんにミカエルと一緒に乗っています。
ミカエルは何回かポニさん達に乗っているので、自信満々に手綱を持っています。
一応、ユキさんはこっちの指示で動いているけどね。
「あら、ミカエルちゃん。可愛い女の子と一緒で良いわね」
「うん!」
商店街のおばちゃんが、ユキさんに乗っているミカエルとブリットに笑顔で声をかけています。
ミカエルとブリットの件は既に街中に広まっているので、微笑ましい顔でミカエルとブリットの事を見つめています。
既に街の住人として、受け入れられている感じだ。
順調に教会前に到着し、イザベラ様の号令の下で皆一斉に動き出します。
僕達も何回も炊き出しを行っているのでそれぞれの場所で作業するのだが、ここでトラブルが発生。
「私も調理にまわろうかな?」
「「「止めてくれ!」」」
「えー」
何故かレイナさんが、炊き出しの調理担当にまわろうと言い出したのだ。
あの、野菜をまな板ごとぶった斬るレイナさんが、です。
ジンさんに加えて、レイナさんの実家で散々レイナさんの破壊的な料理を見てきたクラヴィーアさんにルルーさん、挙句の果てには治療を受ける為に炊き出しの所にきていた多くの冒険者までもがレイナさんを止めていた。
周りからの懇願もあってか、流石にレイナさんも調理担当から外れていつもの列の整理に回っていた。
「しかし、クラヴィーアちゃんとルルーちゃんは、レイナとジンに何処となく似ているわよね」
「二人とも姉妹ではないのに、両方とも苦労性って所はありそうね」
「あはは……」
炊き出しに参加している商店街のおばちゃんが、列整理しながらちょっと項垂れるレイナさんを見てそしてクラヴィーアさんとルルーさんを見ていた。
確かに皆赤っぽい髪色をして外見は似ているけど、二人にとっては姉と義姉であるレイナさんの事で苦労している事はきっと同じなのだろう。
二人とも、おばちゃんから言われた苦労性の所は否定しなかった。
さてさて、今日の治療班にはミカエルとブリットも参加している。
二人ともやる気満々なので、ここでダメとは言えないよね。
二人の護衛にプリンもついているし、リズも隣にいるから大丈夫だと割り切ろう。
「いちゃちの、とでけ!」
「おお、すげー。本当に傷が治ったぞ。ミカエル、すげーな」
「えへへ」
いかつい顔をした冒険者が、小さなミカエルに治療をしてもらってかなり驚いていた。
この街の多くの冒険者はミカエルと顔見知りなので、ちょっと前まで赤ちゃんだったミカエルが回復魔法を使った事に驚いていた。
「はい、どうでちゅか?」
「おやまあ、すっかり良くなったよ。有難うね」
「えへへ」
一方のブリットも、年寄り陣に大人気だ。
小さなシスターさんが一生懸命に治療するのが、老人にとっては微笑ましい光景の様だ。
二人とも舌足らずな話し方で頑張っていて、うまくやっている様だ。
この街の住人は良い人が多いから、あまり心配はしていないんだけどね。
「ジンは子爵様になっても、やっている事は変わらないか」
「そりゃ急には変わらないぞ。コイツらの子守もあるし、冒険者も続けるというか更に頑張れと発破かけられた」
「ジン、誰に発破かけられた?」
「陛下と王妃様に、アリア様とティナ様だ。各国で活躍している冒険者は少ないってな」
「ははは、ちげえねえ」
ジンさんは炊き出しの料理を作りながら、顔馴染みの冒険者と話をしていた。
ジンさんは名誉貴族から世襲貴族になったとは言え今まで王族と辺境伯様のサポートをしていたから、これからもジンさんの職務は全く変わらない。
エドちゃんやルカちゃんにも気に入られているし、帝国の双子ちゃんや教皇国や共和国にもパイプがある。
そんな冒険者なんて、各国を探しても殆どいないよね。
こうして、殆どトラブルもなく炊き出しは終了。
「あーあ、久々に包丁持ちたかったな」
「レイナ、寝言は寝て言え」
「お姉様、まだ包丁持つには早いです」
「えっと、お義姉様も頑張れば、きっと、上手く、なる、はず、です」
「えー! 三人とも酷いよ、ちょっとは慰めてよ!」
「「「無理!」」」
「そんなー」
レイナさんの料理下手を慰める所かハッキリと無理という辺り、ジンさんとクラヴィーアさんとリリーさんは仲が良いと見ておこう。
僕も、レイナさんが調理担当になるのはまだ早いと思うな。
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