三百七十二話 ジンさんの子どもが産まれて一週間
「ほら、おじいちゃんでちゅよ。べろべろばあ」
「お父様、キモい、キモすぎる」
「ははは……」
ジンさんが子爵になってレイナさんとカミラさんが赤ちゃんを産んで一週間、僕は夕方になると商務卿を王城に迎えに行っている。
商務卿は孫に会いたい効果なのか、仕事はバリバリとこなす様になっていた。
孫に会うと、だいぶ残念なおじいちゃんに早変わりするけど。
因みに、ジンさんは辺境伯様の屋敷に出向いています。
贈り物のお礼を言いに行っているそうです。
「ふわぁ!」
「ほら、レイカもお父様の顔を見て泣いちゃったじゃない!」
「そ、そんな……」
そして、ドアップの商務卿を見て赤ちゃんが泣き出すという事の繰り返しです。
レイナさんの赤ちゃんがレイカちゃんで、カミラさんの赤ちゃんがガイルです。
お母さんの名前からとったみたいで、ジンさんも賛成しています。
「お前はいつもレイカと一緒にいて! 羨ましすぎるぞ!」
「私には、リリーに貴族令嬢としての振る舞いを教えると言う大義名分がありますので」
「くー!」
そして、レイナさんの妹さんは、突然貴族令嬢になったリリーさんのサポートアンド教育を兼ねて、暫くジンさんの屋敷に留まる事になっています。
実際にリリーさんに貴族令嬢として教育する事はジンさんも賛成だし、商務卿夫人も賛成している。
という事で、レイナさんの妹のクラヴィーアさんもジンさんの屋敷に留まる事になりました。
「それよりも、お姉様に一言言って下さい。体を動かしたいって言って、剣を振るっているのですよ」
クラヴィーアさんの言う通り、レイナさんとカミラさんは妊婦で動けなかったからってストレス発散の為に剣を振るっています。
流石に僕も、まだ早すぎるのではと思っています。
という事で、商務卿にはレイナさんとカミラさんに説教をしてもらいに席を外してもらいました。
「しかし、とんでもない量の贈り物がきていますわね」
「ジンさんは、各国の人に面識がありますから」
部屋の中には、ジンさんと赤ちゃん宛に沢山の贈り物が積まれていた。
ジンさんの子爵叙爵祝いに加えて、出産祝いも含まれています。
帝国皇族やシェジェク伯爵に加えて、共和国のクレイモアさんや教皇国の偉い人からの贈り物もあります。
僕達は実際に使える物を贈っているし、王族からも贈り物が沢山あります。
ジンさんの同級生が出産祝いを持ってきた時に外国の要人からの大量の贈り物を見て、ジンさんに向かってどこの大貴族様だよってツッコミを入れていたのを思い出します。
まあジンさんは、普通の子爵ではあり得ない程のコネクションを持っているからなあ。
僕は、クラヴィーアさんと共に庭に移動します。
そろそろ商務卿を王都に送らないといけない時間になっています。
なのですが、少し待つ事にしました。
「商務卿を送って行くのは、もう少し待ちますか」
「そうですわね。珍しくお父様が本気で怒っているので」
庭では本気で怒っている商務卿と、しょんぼりしているレイナさんとカミラさんの姿があったのだ。
流石に親として、いきなり剣を振る娘に対して一言言いたいのもあるのだろう。
商務卿は、かなりガミガミと怒っていた。
僕とクラヴィーアさんは、そっと庭から離れていった。
因みに妥協案として、レイナさんとカミラさんは早朝訓練にだけ参加してオッケーになったという。
当然ですが、当面は冒険者活動もダメですよ。
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