三百五十五話 皆が怒っている理由
「くそ、お前らは何故ここまで他国の事に口を挟むのだ! ここは教皇国で起きている事だぞ! 宗教心から来ているのか!」
アホスタイル枢機卿は、口から唾を飛ばしゼェゼェと息を切らしながら自分の思惑がうまくいかない苛立ちを僕達にぶつけている。
いくら頭に血が上っているとはいえ、喋っただけでゼェゼェいうなんて流石に太り過ぎでしょう。
「貴方達は大変な罪を犯しました」
「皇都に無理矢理侵入して、怪我人も出しています」
「不要ないざこざを生んだ貴方の罪は重いでしょう」
ティナおばあさまとシェジェク伯爵とクレイモアさんが、それっぽい事を言っているけど、本当に怒っている理由は違うのだ。
「しかーし、一番大きい罪は寝ているリズを起こした事だ!」
「人が折角惰眠を貪っていた所を、あんなでかい音で叩き起こしやがって。人の睡眠を邪魔するものは、万死に値する!」
「「「「そうだ!」」」」
「はっ?」
そうそう、これだよこれ。
これには僕も怒っているんだよね。
気持ちよく寝ている所を叩き起こされると、不快な気持ちになるよね。
僕達全員が力を込めて熱弁していた。
一方のアホスタイル枢機卿はそんな理由で怒っているなんて思っても見なかったようで、僕達の熱弁を聞いて固まっていた。
「ほほほ、つまりは貴様らがこの作戦を立てた時点で負けが決まっていたのだ」
「確かにあの大きな音は、我々もとても不快に思いましたからな」
教皇とヤークス枢機卿も、笑いながら僕達の怒っている理由に納得していた。
侵入時に陽動を仕掛けるために、何箇所にも派手に爆発型の魔導具を仕掛けた時点で既にアホスタイル枢機卿の負けは決定していたのだ。
「くそー! 奴らを一人残らず殺してしまえ!」
「「「はっ!」」」
僕達の発言にとうとうキレてしまったアホスタイル枢機卿は、兵に僕達の殺害指示を出した。
兵は剣を抜いて、勢いよくこちらに向かってくる。
でも、僕達が何もせずにただベラベラと喋っていたと思っているのかな?
「はあ、諦めの悪いお馬鹿さんね。アレク君、やっちゃって」
「はい、行くよプリン」
思わず溜息をついているティナおばあさまからの指示で、僕とプリンは皆が喋っている間に溜めていた魔力を一気に解放した。
バリバリバリバリ。
「「「ギャー!」」」
「おお、これがサイクロプス討伐の際にも使ったという裁きの雷か」
「何と凄まじい威力だろうか」
「双翼の天使様を怒らせると、敵には神の一撃が与えられるのか」
僕とプリンの合体魔法による広範囲の雷撃が、兵だけでなくアホスタイル枢機卿達も巻き込んでいく。
殺しはしないけど、これで暫くはまともに動けない筈だ。
というか、教皇に枢機卿は僕とプリンの雷撃を神の一撃と勘違いしている。
サイファ枢機卿も、教皇や枢機卿の言葉を聞いてうんうんと頷かないの。
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