三百五十四話 悪の親玉と遭遇

 僕達が大教会に足を踏み入れると、祭壇付近に教皇や枢機卿が縛られて座らされていた。

 教皇や枢機卿の周りを兵が取り囲み、更にはその兵の後ろに豚みたいな教会関係者がいた。

 一番豪華な衣装を着ているのが、例のアホスタイル枢機卿なのだろう。

 鼻息荒く、僕達の方を指差していた。


「おーお、ここまでやってくるとは流石だな。流石は双翼の天使様御一行といった所だな」


 うーん、アホスタイル枢機卿はオークよりも更に太った醜い姿で、魔物がブヒブヒと喋っているとしか見えないぞ。


「お兄ちゃん、あの人がアホスタイル枢機卿?」

「そうだね。僕の鑑定でも、間違いなくアホスタイル枢機卿ってでているよ。悪に魂を売り渡した者とも出ているね」

「ふーん、そうなんだ。オークよりも太っているから、魔物が喋っているかと思ったよ」

「「「ぶふぉ!」」」


 リズが僕が思っている事を声に出したので、僕達の周りにいる大人がお腹を抱えて爆笑を堪える様に笑っている。

 そんな僕達の余裕のある姿に、オーク枢機卿もといアホスタイル枢機卿の怒りに火がついた様だ。

 

「おいこら、余裕ぶっているのも今のうちだけだ。人質がこちらの手にある事を分かっているのか! 一匹やっちまえ!」


 と、ここでアホスタイル枢機卿の指示を受けた兵が若いシスターの髪の毛を掴んで剣を振り下ろした。


 すか。


「えっ?」


 剣は若いシスターの首を切ろうとしていたのだが、突然シスターの姿が消えて剣は空振りしてしまった。

 兵は何が何だかわからない様だ。


「はあ、僕達が何もしないであんな馬鹿な事を話していないですよ」

「あれ?」


 切られる寸前だったシスターは僕達の側に来ていて、何が何だか分からない様子だった。

 そのシスターの側では、スラちゃんがアホスタイル枢機卿を挑発する様にクネクネと謎の踊りをしていた。


 シュンシュンシュンシュン。


「はあ!」

「「「えっ!」」」

「ぐっはあ!」


 そして、スラちゃんは人質になっていた全ての人を連れてきた。

 いくらスラちゃんのショートワープとはいえ、近距離でも一回に連れてこれるのは一人が限度だ。

 なら、素早く次の人をショートワープで連れてくれば良い。

 アホスタイル枢機卿は突然目の前から全ての人質が消えて、目玉が飛び出しそうな程驚いている。

 対して、助けられた人も突然僕達の側に現れたので、状況を把握できていない様だ。

 更にスラちゃんは、アホスタイル枢機卿のお尻に触手を突き刺してからこちらに戻ってきた。

 スラちゃん、最近悪人のお尻に触手を突き刺す事が多いなあ。

 スラちゃんは、全ての人質をこちらに連れてきた所で、またもや謎のクネクネダンスをプリンと共に行なってアホスタイル枢機卿達を挑発していた。


「教皇様、ご無事ですか?」

「ああ、ありがとう。流石は皆様方だ」


 その間に、拘束されていた人の縄をジンさんや近衛騎士が切っていく。

 リズも回復魔法をかけて治療しているが、どうも複数の人に殴られた痕があった。

 特に教皇様とヤークス枢機卿はボコボコにされていた。

 もしかしたら、一緒に捕まった若いシスターを庇ったのかもしれない。


「アホスタイル枢機卿、これで形勢逆転ね」

「ぐっ」


 僕達が大教会に足を踏み入れて僅か数分。

 全ての人質も取り返して、完全に状況は変わった。

 ティナおばあさまは剣をすらりと抜いて、剣先をお尻を押さえているアホスタイル枢機卿に向けた。

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