三百四十四話 孤児院爆破事件
「「お母様凄いです!」」
母親の見せた戦い方に、ルーシーお姉様とリルムが王妃様と皇妃様に駆け寄っていきます。
対して、ルーカスお兄様は実母の戦い方に度肝を抜かれている様だ。
「うーん、育児で時間を取られると体が鈍りますわね」
「同感です。抱っこをして微妙に腕力は鍛えられているのですが、体幹はだめですね」
そしてお互いに体が鈍ったと言う王妃様と皇妃様。
あの戦いを見せておいて、まだ上があるのですか。
因みに殲滅したゴブリンは、スラちゃんとプリンが同じスライムのヒカリに消化方法と討伐証の取り方を教えていた。
ここはスライム同士仲良くやって貰いたい。
「炊き出しもそろそろ終わりそうだな。くー、ずっと野菜を切っていて腕が疲れたぞ」
「僕も同じです。ある意味身体強化の良い訓練になりました」
「レイナの様に、包丁でまな板をぶった斬らない様に手加減をするのは大変だからなあ」
ジンさんと苦笑しあっているが、治療に並んでいる人もいないので炊き出しはもう終わりの様だ。
皆で後片付けをしている時だった。
ズドーン!
ズドーン!
ズドーン!
皇都の外れの方で、爆発音が聞こえた。
大きな煙も空に上がっていて、一目で緊急事態だと分かった。
「えっ? 何が起こったの?」
「慌てるな、陽動の可能性もある。出来るだけ大教会に避難するんだ」
周りの人も突然の事態に何が何だか分かっていなかったけど、ジンさんが素早く指示を出した。
各国の要人は、直ぐ様聖騎士の警護の元で大教会に避難をする。
「とー! 行くよ、ブッチー!」
「ヒヒーン」
リズとスラちゃんは、颯爽とブッチーにまたがって煙の方に向かっていった。
うん、君はこういう時に真っ先に動くよね。
そう思って、僕もジンさんもポニさん達に乗っていたんだ。
「怪我人がいたら、大教会にゲートを繋いで運びます」
「オッケー、準備しておくわよ」
僕の言葉にアイビー様が答えてくれた。
僕達もプリンとジンさんと聖騎士と共に現場に急行します。
「市内の巡回と門の警備レベルを上げよ。不審者を取り逃すな」
「「「はっ」」」
後ろからヤークス枢機卿が聖騎士に指示を出す声が聞こえてきた。
このどさくさに紛れて、犯人が逃げられない様にしないと。
ここは残った聖騎士にお任せです。
「くそ、建物が崩れているぞ」
「えーっと、建物の中に何人か取り残されている人がいます」
「よし、手分けして探そう」
現場に着くと、建物があっただろう残骸がそこにあった。
既に多くの人が、崩れた建物の瓦礫の撤去作業を始めていた。
「とー!」
「グハァ!」
そんな中、建物の物陰で様子を見ていた不審者がいて、リズのドロップキックが炸裂していた。
直ぐ様聖騎士が拘束するが、爆破事件の関係者で間違い無いだろう。
「そっちの崩れた所に、反応が二つあります」
「よーし、瓦礫をどかすぞ!」
レンガが崩れてしまっている所に反応があった。
ジンさんと街の人がレンガをどかすと、シスターが子どもを抱え込む様に埋もれていた。
「リズ、とりあえずエリアヒールをかけよう」
「分かった!」
聖騎士が用意した担架に、リズが倒した不審者も含めて三人が乗せられている。
子どもは、ミカエルと同じくらいの女の子だ。
瓦礫の粉で真っ白になっていた。
僕とリズで二人にエリアヒールに生活魔法をかける。
「大丈夫だ、二人とも生きているぞ」
「直ぐにゲートを繋ぎます」
ジンさんが生死を確認しているが問題は無さそうだ。
僕がゲートを繋いでいると、僕達の側に多くの子どもがやってきた。
「シスター! シスター!」
「ブリット、しっかり!」
子ども達は、どうやらこの二人の知り合いの様だ。
ちょっと話を聞いてみよう。
「君達はこの二人の知り合い?」
「私達、孤児院で一緒なの」
「双翼の天使様が炊き出しをするから、皆で行ったんだ」
「ブリットが熱を出したから、シスターが一緒に残っていたんだ」
「じゃあ、この建物に残っていたのはこの二人だけなんだね?」
「うん……」
成程、ここは孤児院でたまたまこの二人以外は僕達の行っていた炊き出しに来ていて難を逃れていたのか。
とは言え、目の前で怪我している二人を見てこの子達も動揺しているし、そもそも住む場所がなくなってしまった。
なので、この子達も含めて大教会に送ります。
「はあ? 爆破されたのは、孤児院だと?」
「何と非道な事でしょう!」
僕の報告を聞いたナッシュ枢機卿とレリーフ枢機卿が、あまりの非道な事に怒りを露わにしている。
一方で怪我した二人は、カレン様や聖女様見習いに研究員もついて治療にあたっている。
「シスターは、全身打撲に内臓までダメージを受けているな」
「幼い子も、足を骨折している。回復魔法をかけた後でも、暫く固定した方が良いですな」
「リズも治療する!」
「いちゃいの、とでけ!」
僕とリズの治療の効果があってか、最悪の事態は免れた様だ。
直ぐに追加の治療が行われていた。
ミカエルも自分と同じ小さな子が怪我をしているので、一生懸命に回復魔法を使っていた。
とはいえ専門的な治療が必要な為、二人は大教会付属の医療施設に運ばれていった。
「この子達の心のケアも必要ですね」
「目の前でとても恐ろしいものを見てしまったのですから」
王妃様と皇妃様にティナおばあさまは、二人の事が心配で涙が止まらない子ども達を抱きしめていた。
カレン様やワーロード司祭にシェジェク伯爵やクレイモアさんも、泣いている子ども達を抱きしめている。
こういう時に、大人の女性がいるってのは有難いな。
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