三百二十八話 助っ人到着

「リリー、すまん。まさかこんな事になるとは思ってなかったよ」

「仕方ないよ。お義姉さんの為に頑張るから」


 本当は僕とジンさんが教皇国に行く時に来るはずだったリリーさんが、一ヵ月以上早くジンさんの屋敷にやってきた。

 しかし、リリーさんもレイナさんとカミラさんの育児レベルの低さを仕方ないの一言でぶった斬ったよ。

 更には宰相と商務卿の屋敷からも応援の侍従がやってきた。

 ルリアンさんやナンシーさんの実家からも、ジンさんの屋敷に侍従がきている。

 ルリアンさんとナンシーさんは、レイナさんとカミラさんよりも一足早く僕達が教皇国から帰ってきた頃に出産となるからなあ。

 ソフィアさんもそろそろ出産だし帝国のケイリさんも秋には出産するし、今年は僕の周りでは本当に出産ラッシュだなあ。


 早速リリーさんは侍従と共に、レイナさんとカミラさんが育児の勉強をしている僕の屋敷にやってきた。

 

「えっ……」


 リリーさんと侍従は、育児部屋に入って固まってしまった。

 レイナさんとカミラさんは、またもやスラちゃんからオムツの交換方法を習っていたのだ。

 若干スラちゃんも、二人に対してキツめに指導している様な気がするぞ。


「お、お兄ちゃん……」

「リリー、何も言うな。二人の育児レベルは、スライム以下だ」


 思わずリリーさんと侍従が絶句している。

 二人の家事レベルの低さは周知の事実だったけど、まさかここまでとは思わなかった様だ。

 早速リリーさんと侍従は、レイナさんとカミラさんの育児指導に入っていった。

 ジンさんも二人の事が心配なので、ここに残るそうだ。


 そして侍従のお姉さんはというと、出産が近くなったソフィアさんの所に出向いていた。

 辺境伯様の屋敷ではいつでも出産できるように、万全の準備を進めている。

 教会もいつでも助産師さんを派遣する事になっている。

 リズとサンディとミカエルも、今日はソフィアさんの所に行っている。

 僕も辺境伯様の屋敷に合流した。


「にーに!」

「おっと」


 屋敷に入ると、ミカエルが僕に抱きついてきた。

 その後ろに、リズとサンディもついてきている。


「お兄ちゃん、レイナさんとカミラさんはどうだった?」

「今日からリリーさんが来られてますけど」

「だいぶ苦戦していたよ。レイナさんもカミラさんも、スラちゃんに怒られながらオムツを交換していたよ」


 サンディはともかくとしてリズにも心配されるほどなので、レイナさんとカミラさんは頑張って育児を勉強してもらわないと。

 僕は屋敷に戻る三人を見送ってから、ソフィアさんの所に向かった。


「こんにちは」

「いらっしゃい、アレク君」


 ソフィアさんは、ソファーに座って本を読んでいた。

 双子を妊娠しているだけあって、ソフィアさんのお腹はとっても大きいなあ。

 ソフィアさんの側には、何かあった時の為に侍従が控えていた。

 僕はソフィアさんの向かいのソファーに座った。


「アレク君も大変ね、ずっとレイナとカミラの相手をしていて」

「リリーさんもきてくれたので、これからは大丈夫ですよ。スラちゃんがオムツの交換方法でレイナさんとカミラさんを怒っていましたよ」

「スラちゃんは優秀なベビーシッターだもんね。私の赤ちゃんもお世話になりそうだわ」

「むしろスラちゃんがお世話したいって感じですよ。流石にプリンはスラちゃんには敵わないですけどね」


 侍従に出してもらったお茶を飲みながら、ソフィアさんと談笑している。

 ソフィアさんは自分が出産間近なのに、やっぱりレイナさんとカミラさんの事が気になってしまう様だ。


「リリーさんも侍従もきましたし、レイナさんとカミラさんの育児レベルが上がらなくても最悪の事は防げそうです」

「でも、やっぱり我が子は自分の手で育ててみたいものよ。出産が近づくと、尚更気持ちが強くなるわ」


 ソフィアさんは自分のお腹を撫でながら話してくれるけど、もう母親の表情だね。

 あまり長居しても良くないので、この辺りで帰ることにします。

 さて、レイナさんとカミラさんの様子はどうなっているのかな?


「「はあ……」」


 あ、食堂でジンさんとリリーさんが燃え尽きていた。

 

「アレク、二人はまだ母親になる自覚が薄いな」

「逆に言うと、もう少しすれば実感が湧くはずだと」


 うん、ジンさんとリリーさんの兄弟の苦労はもう少し続きそうだ。

 何にせよ、レイナさんとカミラさんに頑張ってもらわないと。

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