三百十七話 聖女様歓迎式典開始の遅れ
「おー、いっぱい!」
「そうね、人がいっぱいいるわね」
歓迎式典の時間になったので、皆で会場に移動します。
お昼寝をたっぷりして元気いっぱいのミカエルは、聖女用の衣装に身を包んだカレン様と手を繋ぎながら会場の雰囲気にびっくりしています。
僕達は周りよりも三段ほど高い所に陣取ります。
今夜は立食形式だけど、僕達は子どもが多いしカレン様も完調ではないので椅子が用意されています。
フロアの壁際にも椅子が用意されているけどね。
「後で兄が挨拶にきますので、その際はよろしくお願いします」
「あい!」
ベストール侯爵家として参加しているノエルさんは、近衛騎士の服装ではなくドレスを身に纏っていた。
ミカエルにとってノエルさんは一緒に住んでいるお姉さんだから、了解と言わんばかりに手を上げていた。
ノエルさんを見送って、他の参加者を見渡す。
うーん、貴族主義の連中以外は揃っている様だ。
もう歓迎式典が始まる五分前なのに、何でいないのだろう。
僕と同じ事を、陛下も思っていた様だ。
「奴らは、大物は後から来るというわけわからん理論を持っているのだ」
「主賓を待たせる方が失礼だと思うのですが」
「常識的に考えればアレクの言う通りだ。しかし、奴らには常識がないのが困り事なのだがな」
貴族主義の連中に一般常識があれば、聖女様に会わせろとしつこく言ってこないよね。
カレン様に王国の恥部を見せる事になるけど、こればかりは仕方ない。
そして式典の直前になって、まるで大物の様な態度で貴族主義の連中が会場に姿を見せた。
ニヤニヤとコチラを見ていて、少し気持ち悪いなあ。
だけど、何だか見た事のある顔だなあ。
「あれはムノー男爵ね。魔獣化して皆を襲うという大不祥事を起こしたムノー子爵の親戚にあたるのよ」
「ムノー子爵がマロード男爵領でとんでもない事をやらかしたのに、自分は王都にいて関係ないとふんぞり返っているのよ」
王妃様とアリア様もあの太った男性の視線に気がついた様だ。
成程、だから僕も見た事がある顔だったんだ。
そして親戚の不祥事で被った汚名を晴らすために、聖女様に取り入ろうとしているのか。
というか、あのムノー子爵の親戚なら、闇ギルドとの関わり合いもありそうだけど。
要注意人物である事は間違いなさそうだから、僕も警戒を強めよう。
因みにルカちゃんとエドちゃんはお休みタイムなので、いつもの部屋で侍従に見守られながらすやすやと眠っています。
「皆様、そろそろお時間でございます」
「そうか、ではあのバカのせいで始まるのが遅くなったとガツンと言ってやるか」
係の者が僕達に式典が始まると言ってきた。
既に開始時間を二十分も過ぎているので、陛下もムノー男爵の態度に頭にきているのだろう。
うん、これは絶対に歓迎式典で一波乱ありそうだぞ。
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