三百八話 皆んなで温泉

 さて、皆で温泉に入る事になったのだが、前回温泉に入った際に僕は女子更衣室に連れていかれたのだ。

 なので今回僕は、ジンさんとルーカスお兄様とマイク様の後をこっそりとついていく。

 ついていくのだが……


 がし。


「お兄ちゃんはこっちだよ!」

「一緒に着替えようね!」

「……はい……」


 更衣室の前に着いたら、リズとエレノアに僕の両脇をがしっと掴まれていた。

 ジンさんとルーカスお兄様とマイク様が、僕の事をご愁傷様って顔で見ていた。

 因みにスラちゃんとプリンは巻き込まれない為に、ちゃっかりとジンさんの腕の中に収まっていた。

 僕は全てを諦めて、リズとエレノアに拘束されたまま女子更衣室に向かっていった。

 

「にーに、ぬぐー」

「はいはい、ちょっと待っててね」


 温泉が待ち遠しいのか、早速ミカエルが服を脱ぎ出した。

 あっという間にすっぽんぽんになるのだけど、一人で温泉に向かわない様に近衛騎士のジェリルさんとランカーさんが見ていてくれた。


「お兄ちゃん、服脱ぐの手伝って!」

「エレノアも!」

「はいはい、今行きますよ」


 前回と同じくまたしてもリズとエレノアが服を脱ぐのに手間取っているので、僕は二人の服を脱がせていく。

 そんな僕の様子を、カレン様とジェリルさんとランカーさんが見つめていた。


「アレク様は、本当に優しいお兄ちゃんですね」

「その代わりに何でも一人でこなしてしまうのです」

「近衛騎士としてお世話をする機会があまりないんですよ」


 あの、僕に言いたい事は分かったので、三人とも水着を着てから話をしてくれませんか?

 僕は服を脱がされない様に、チャチャっと着替えていきます。


「にーに、いこ!」

「転ばない様に、手を繋ごうね」

「うん!」


 早く温泉に入りたいミカエルの手を繋いで、浴場に向かっていきます。

 でも、温泉に入る前に体を洗わないと。

 ここで、とある人から声がかかった。


「アレク君、久しぶりに体を洗ってあげるね」

「ミカエルちゃんもキレイキレイにしてあげるよ」

「あい!」


 エマさんとオリビアさんが僕の体を洗ってくれる事に。

 お互い辺境伯様の屋敷にいた頃は、良く一緒にお風呂に入っていたっけ。

 ミカエルも一緒になって体を洗ってもらいます。


「アレク君、昔に比べて大きくなったね」

「本当だね。背も大きくなったね」


 エマさんとオリビアさんは僕が三歳の頃と比べていたけど、流石に五歳になったのだから大きくなっているよ。


「ミカエルちゃんは昔のアレク君みたいだね」

「アレク君が小さかったから、ちょうどこんな感じだったよね」

「うー」


 ミカエルは頭を洗われているから目を閉じているけど、昔の僕やリズは小さかったよね。

 今のミカエルと同じくらいだったのか。

 そう思うと、僕も大きくなったんだね。


「リズちゃんは私が洗いますわ」

「わーい、じゃあお返しにリズがアイビーお姉ちゃんを洗ってあげる!」


 女性陣はワイワイと体を洗いっこしている様だ。

 うん、あそこにはあえて近づかない様にしよう。


「ふいー」


 体を洗い終えた僕とミカエルは、早速温泉に入った。

 何だかミカエルが温泉が気持ち良くておじいさんの様な声を出しているのが面白い。


「とっても気持ち良い温泉ですね」

「美肌などにも効果があるらしいですわよ」

「そんな効果があるのですね」


 そしてカレン様とアイビー様は仲良く温泉の効能について話をしている。

 でも、何でこの世界の女性向けの水着ってビキニしかないんだろうか?

 カレン様は年齢の割にお胸が大きいから、それは凄い事になっている。

 勿論似合っているけどね。


「今日はのんびりとするぞ」

「ジンさん、おじいちゃんみたい」

「おお。良いな、じいさん。今日は温泉に浸かって、枯れた身と心を癒したいぞ」


 最近色々とあったジンさんが、気持ちよさそうな表情で温泉に浸かっている。

 リズに何か言われても、もうどうでも良いようだ。

 

「にーに、ごはんなに?」

「何だろう? 何が出てくるかな? そろそろのぼせちゃうから、温泉から出ようね」

「あい!」


 ミカエルの気持ちは夕食に向いているな。

 でも、顔も良い色になってきたから温泉から出ないと。

 

 がし。


「じゃあ、私達がお着替えをお手伝いしますね」

「お手伝いしますね」

「……はい」


 ここぞとばかりに、ジェリルさんとランカーさんが僕の肩を掴んだ。

 しかも、とっても良い笑顔で。

 僕は断ることができず、一緒に更衣室に向かっていたのだった。

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