三百六話 マイク様とセシルさんの結婚式の話

 コンコン。


「皆様、ご到着されました」

「どうぞ、お入り下さい」


 応接室の中から、大人の女性の声が聞こえてきた。

 さっきマイク様も言っていたけど、この声はイザベラ様の声かな?


「皆様、遠い所からお疲れ様です。そして、聖女様。ようこそマロード男爵領へお越し頂きました」


 出迎えてくれたのはマロード男爵夫人で、声を出したのはイザベラ様だった様だ。

 エマさんとオリビアさんも中に居たが、一体何の話をしていたのだろうか?

 とりあえずソファーに座って、話を聞く事にした。


「エマお姉ちゃん、オリビアお姉ちゃん。どんなお話をしていたの?」

「マイクお兄様とセシルさんの結婚式の話をしていたんだ」

「今年はジェイドお兄様とソフィアさんの赤ちゃんが生まれるから、来年かなって話をしていたんだよ」

「おお、マイクお兄ちゃんとセシルお姉ちゃんの結婚式! リズも興味ある!」


 リズの質問に嬉々として答えるエマさんとオリビアさん。

 そうか。二人は学園も卒業したし、後は結婚式をいつ挙げるかという状態か。

 すると、意外な人が興味を示してきた。


「結婚式ですが、とっても素敵ですね。お二人は素敵ですので、とっても良い結婚式になりますわね」


 そう、カレン様が二人の結婚式について話をしてきたのだ。

 やっぱり女性は結婚式に憧れるんだね。

 そしていつの間にかセシルさん以外の女性陣が一箇所に集まって、結婚式の会話が始まっていた。


「辺境伯が絡むから、王族が参加しても問題ないわね」

「場所はマロード男爵領ですわね。自然に囲まれた美しい教会もありますし、楽しみですわ」


 ティナおばあさまとアイビー様が、既に結婚式の参加者と会場に言及し始めた。

 

「マイク様のお披露目を兼ねて、パレードもしないといけませんわ」

「警備に辺境伯領の兵士も貸し出す必要がありますわね」


 マロード男爵夫人とイザベラ様も、結婚式当日の話を具体的に詰めている。


「ここはお料理がとっても美味しいんだよ」

「今日もお鍋が凄く楽しみなんだ」

「お野菜とかも美味しいよ」

「ジュースも美味しかったんだ」

「そうなんだね。とっても楽しみね」


 カレン様は、一生懸命に話すルーシーお姉様とリズとエレノアとサンディに耳を傾けていた。

 子ども達は料理の方に興味津々の様だ。


「こうなると、暫く止まらないぞ。俺の時も、ここからが大変だったぞ」

「ここまでくると、皆を止めるのは不可能ですね」


 そして、ジンさんが苦笑しながら飲み物に口をつけていた。

 女性陣の迫力に押されて、マイク様とセシルさんと男性陣は隅っこに集まっています。

 うーん、僕達では女性陣は止めようもないな。


「すまん、待たせた……」

「あ、あなた良い所に。こっちに来て」


 と、ここで少し遅れてやってきたマロード男爵が、賑やかに話している女性陣にビックリしていた。

 すかさずマロード男爵夫人が、旦那を女性陣の方に引きずり込んでいった。

 うん、マロード男爵へ聖女様の紹介を兼ねてマイク様とセシルさんの結婚式の話を詰めるつもりだ。

 予想以上に女性陣の話は盛り上がり、結局温泉に向かう時間ギリギリまで話し合っていた。

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