三百四話 急遽卒業式に参加

 カレン様が動ける様にリハビリ中なので、元々カレン様と予定されていたイベントが中止になっている。

 だからといって暇になる訳でもなく、今日は別の公務が舞い込んできた。


「元々ルーシーお姉様とエレノアが行く事になっていたので、僕まで参加しなくても良い気がするのですが」

「えー、折角だから一緒にいようよ!」

「そうだよ!」


 僕は馬車の中でルーシーお姉様とエレノアに愚痴をこぼしています。

 今日は王立学園の卒園式。

 僕の予定が空いたので、急遽来賓として参加する事になりました。

 ルーシーお姉様とエレノアは、元々卒園式に参加予定だったので一緒の馬車に乗っています。

 因みにリズとサンディは、ルーカスお兄様とアイビー様と共に入園式の方に来賓として参加する予定です。

 

「大人の王族が誰も参加していないけど、大丈夫なのかな?」

「大丈夫じゃないかな? アレク君がいるし」

「そうそう」

「うーん、卒業生代表もマイク様だし何とかなるかなあ」


 とりあえずどうにかなると期待して、僕達の乗った馬車は学園に到着しました。


「聖女様の襲撃事件の事は私も聞いているよ」

「アレク君も大変だったね」

「本当に大変でしたよ……」


 僕達を出迎えてくれたのは、エマさんとオリビアさんだった。

 そっか、二人も生徒会に入ったって言っていたよね。

 知っている人が出迎えてくれたので、僕もルーシーお姉様もエレノアもホッとしていた。

 そのまま体育館のステージ横にある控室まで案内してくれた。


「皆様、卒園式に出席頂き有難う御座います」


 控室では、セシルさんが僕達の担当としてついてくれた。

 マイク様は生徒会長というのもあって、相当忙しいという。

 挨拶は別のタイミングにしておこう。


「本日ですが、来賓紹介の後に来賓代表挨拶をアレク君にして頂きます」

「え? ルーシーお姉様かエレノアではないのですか?」

「アレク君の入学式での挨拶が好評でしたので、今回も是非アレク君にという事になりました」

「「良かった……」」


 ルーシーお姉様とエレノアは、自分が挨拶しなくなってホッとしていた。

 僕としても入園式はいきなり挨拶となったので、まだ余裕があるだけ良いとしておこう。

 因みに着替えは既に終わっているので、後は卒園式が始まるまではやる事がなくなった。


「セシルさん、卒園式が始まるまで辺境伯様とマロード男爵に挨拶をしてきても良いですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。アナウンスがありましたら、席に戻って下さいね」

「はい、分かりました」

「あ、私も挨拶に行きますね」

「エレノアも挨拶に行くよ」


 という事で、皆で保護者席にいる辺境伯様とマロード男爵の所に挨拶に行きます。

 ちょうど隣同士でいたので、まとめて挨拶ができそうだ。


「辺境伯様、マロード男爵様、マイク様とセシルさんの卒園おめでとうございます」

「「おめでとうございます」」

「おお、アレク君か。わざわざ来てくれて有難う」

「ルーシー様とエレノア様もわざわざ挨拶に来て頂き有難う御座います」


 王族の衣装を着た三人の子どもが突然保護者席にやってきたので、周りは何だろうと思って少しザワザワしていた。

 だけど、入園式で僕の事を見た保護者がいたらしく、また辺境伯様とマロード男爵に挨拶をしたら直ぐに騒ぎはおさまっていった。

 あ、マロード男爵に相談があったんだ。

 ついでだから、マロード男爵に聞いてみよう。


「マロード男爵様、実は聖女様が療養の為にマロード男爵領の温泉を利用したいと申しております」

「何? 聖女様が、我が領地の温泉に来られるだと?」


 そうなのだ、カレン様の希望で温泉で湯治をする事になったのだ。

 だからといって、大々的に何かをする予定はない。


「聖女様は出迎えとかは不要と言っております。以前私達が宿泊した宿で二、三日滞在できれば良いそうです」

「成程、普通の温泉利用客として扱って欲しいのですね。分かりました、念の為に警備はつける様にしておきます」

「よろしくお願いします」


 僕達も一緒に宿泊するけど、念の為に警備はお願いしておこう。

 さて、もうそろそろ開始時間の様なので席に戻らないと。

 僕達は急いで壇上の用意された席に戻っていった。

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