二百九十一話 ジンさんは凄い人?
「あっ、アレク様。お待ちしておりました」
庭で掃除をしていたシスターが、僕に気がついた様だ。
この前揉みくちゃにされたから、僕はここのシスターに苦手意識があるけど。
シスターは、この前も立ち寄った教会の施設の中に入っていき、誰かを呼びに行った様だ。
その間に、僕達はポニさん達を教会の馬丁に預けておく。
はは、ポニさん達は頭がいいから、馬丁の後をスタスタとついていったぞ。
「皆様、お待ちしておりました。どうぞ中にお入り下さい」
「グレアム司祭様、朝早くにすみません」
「ほほほ、聖女様の到着が待ち遠しいのはこちらとて同じ事じゃ」
いつもとは違う豪華な衣装に身を包んだグレアム司祭様が、建物の外まで僕達を出迎えてくれた。
グレアム司祭様の先導で、僕達は建物の中に入り応接室に通された。
「おや、其方の男性は初めてですな」
「初めまして司祭様、ジンと申します」
「ジンさんはAランク冒険者で、リズ達の冒険者のお師匠様なんだよ!」
「なんと、双翼の天使様のお師匠様でおられるとは。それは凄い方ですね」
あ、ジンさんの自己紹介にリズが追加情報を被せてきたから、グレアム司祭様がジンさんの事を凄い人だと絶賛している。
当のジンさんはというと、頑張って笑顔を作っているけど、頬がピクピクとしている。
きっとリズが余計な事を言ったのが効いているのだろうな。
「ジンさんは閣僚の娘とも婚姻していますし、帝国の皇子様にも好かれているのです」
「年始に挨拶にいった時に両腕に皇子様を抱っこしていた時は、私もびっくりしましたわ」
「なんと、帝国の皇子様からも好かれているとは。ジン様は凄いお方なんですな」
「あはは……」
更にルーカスお兄様とアイビー様もジンさんの情報をグレアム司祭様に伝えていて、グレアム司祭様はジンさんの事を物凄い人だと思った様だ。
ジンさんからは、もう空笑いしか出てこないけどね。
「ジンは名誉貴族でもありますし腕も一流ですから、本日は皆の護衛の為に連れてきました。突然の参加になり申し訳ありません」
「いえいえ、他の方からの信頼も厚い様ですし、それだけ腕の立つお方なら我々も大歓迎です」
今度はティナおばあさまがジンさん抜きで、グレアム司祭様と話をしている。
ジンさんの事が話題の中心なのに、肝心のジンさんが空気の様になっているなあ。
「そうそう、本日教皇国側から参加する高位の者も来ております。皆様にご挨拶をしたいそうなので、ここに呼んできます」
ジンさんの話題で場の空気が温まった所で、グレアム司祭様が部屋を出ていった。
それと同時に、ジンさんが空気の抜けた様な声を出してソファーに寄りかかった。
「俺、何でここにいるんだろう……」
ジンさんの心からの呟きに、誰も返答をしなかったのだった。
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