二百八十二話 ホッと一息

「お兄ちゃん、何かあったの?」

「だいぶお疲れですけど」

「色々あったんだよ、色々と」

「「?」」


 教皇国でシスターにもみくちゃにされた後、僕は国境の警備隊からプリンを回収して再び代官所に戻った。

 シスターにもみくちゃにされてかなり疲れちゃったよ……

 プリンも僕を見て疲れていたのが分かっていたのか、少しびっくりしていた。

 因みにプリンは国境で大活躍だったらしく、街の巡回にも着いていったらしい。

 プリンの活躍を聞いたスラちゃんがちょっと嫉妬していて、次の自分の出番に向けてやる気になっていた。


「それで、盗聴の魔導具が他にも複数見つかったのか」

「そうだよ。玄関と会議室にもあったんだ」

「でも、職員の人は皆良い人でしたよ」


 サンディの報告が一番引っかかった。

 となると、魔導具を仕掛けた人はここの職員ではないのか。

 

「となると、この代官所に出入りする者に不審者が紛れておったか。そこまで分かれば絞れるな」

「はっ、直ぐに調査いたします」


 ここはサーゲロイド辺境伯に任せておこう。

 直ぐに兵がここ暫く訪れた人を調べ始めた。

 もしかしたら、意外な人が対象なのかも知れないぞ。


「さて、今日はこれくらいにしておこう。ここまで色々と分かれば、こちらも対応ができる」

「教皇国も重要人物が式典に参加するとなると、王国も格を合わせないとならないな」

「そうですね。まだ時間はありますし、対策する時間はありますね」

「儂らも忙しくなるな。ほは、中々楽しい時になりそうだぞ」


 僕らもやる事は沢山あるので、一旦辺境伯領の屋敷に戻ってリズとサンディとスラちゃんとプリンを探索班として置いていって、残りの皆で王城に向かった。


「ふむ、そこまで分かったなら対応策はある。軍にしても外交にしても、最高レベルで対応する様に」

「「畏まりました」」

「サーゲロイド辺境伯にも軍備の配備と予算を付けよう。嫡男にも後ほど王城で話し合いに参加してもらうぞ」

「息子にとっても良い機会かと。私めも全身全霊で事にあたります」


 早速閣僚を集めて、聖女様を出迎える為に特別体制を組む事になった。

 特に直接対応にあたる部局は、直ぐに動き始める事になった。


「聖女様とは面識もあるし、私も色々と動きますわね」

「叔母上がいてくださるなら、教皇国との格も問題ないのでとても有難いです」


 ティナおばあさまも聖女様の出迎えに参加する事になった。

 聖女様と面識があるのは、とっても大きな武器だよね。

 話し合いはこれで終わって、ティナおばあさまもサーゲロイド辺境伯領に向かう事になった。


「あ、おばあちゃんがいるよ」

「今夜は私もこちらにいる事になったのよ」

「そうなんだ!」


 ちょうど応接室にいたリズとサンディの所に僕達は合流した。

 幸いにして、サーゲロイド辺境伯の屋敷には何も怪しい物は無かったという。

 あれ?

 スラちゃんとプリンはどこに行ったのだろうか?


「あ、帰ってきた!」

「スラちゃん達は買い物に行っていたんですよ」


 ノエルさんに抱かれているスラちゃんとプリンの姿があった。

 どうやらサーゲロイド辺境伯領の特産品を買ってきた様だ。


「なになに? 牛乳プリンに、ベビーカステラに、草団子。全部デザートじゃん!」

「我が領は畜産が盛んで、牛乳も卵も取れますぞ。てんさいを使った精糖業もあるのじゃ」


 いやね、確かに美味しいですよ。

 特に牛乳プリンは絶品です。

 でも、他に何か買っても良いのでは?

 と、思ったら、スラちゃんとプリンが妙に熱い視線を僕に向けてきた。


「えっとね、スラちゃんとプリンが牛乳プリンの材料を買ってきたんだって。お兄ちゃんに作って貰いたいんだって」

「はっ?」


 いやね、ゼラチンとかも確か商店で普通に売っていたけど、主人に料理を作って貰いたいが為に材料を買ってくる従魔ってどうなのでしょうか?

 とはいえ、リズもサンディも期待している視線を向けてくるので、どこかで作らないといけないかも。

 前世の調理実習で牛乳プリンを作った経験があって、本当に良かったよ。


「しかし、この牛乳プリンは美味いわね」

「万人受けする味なので、聖女様に出すにもちょうどいいなあ」

「ちょうどサーゲロイド辺境伯領の特産品を使っているので、地元のデザートとして出せるな」


 僕が作る作らないに関わらず、牛乳プリンを歓迎会で出すのは決定の様だ。

 聖女様も年頃の女性だから、甘い物は喜ぶだろうね。

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