二百三十一話 人質救出大作戦
「「あうあう」」
「可愛いね」
「小さいね」
赤ちゃんが産まれてから数日、リズとサンディと共に赤ちゃんの様子を見に来ている。
今はお姉さん達からお乳を貰ってご機嫌な状態だ。
交代で赤ちゃんの世話をしているようで、夜泣きの時でも休めているという。
因みに旦那さんは赤ちゃんの夜泣きにダウンしていた。
この辺は父親と母親の違いがあるのかもしれない。
「メイちゃん」
「リラちゃん」
「「あうー」」
赤ちゃんの名前はメイとリラに決まった。
女の子が産まれた後、旦那さんが人名辞典と睨めっこしながら付けた名前だ。
とっても良い名前だと、僕達も大賛成だ。
ミカエルも赤ちゃんの事を興味深く見ている。
自分より小さい子どもに興味津々の様だ。
そして、ミカエルの時と相変わらずスラちゃんとプリンが大活躍。
オシメを変えるタイミングとかもバッチリ教えてくれるのだ。
時々育児の練習としてソフィアさんが屋敷にくるけど、スラちゃんを是非借りたいと言っていた程だった。
「さて、そろそろ王城に行かないとね」
「「えー」」
最近サンディが感情を素直に見せてくれるのは良い事なのだが、リズと一緒に勉強タイムを嫌がるのは余り良い傾向ではないな。
まあ、子どもらしくなってきたといえばそうなのかもしれない。
「ほら、今日はレイナさんやカミラさんはギルドに用事があるから一緒に行かないよ」
「でも、カミラお姉ちゃんがおばあちゃんに問題集を渡していたもん」
あらら、カミラさんがティナおばあさまに問題集を渡していたのを見ていたのか。
レイナさんとカミラさん達はギルドで魔法講座にいっているし、今日は同行しないから油断したかなと思っていたけどそうではなかったか。
とはいえ勉強はしないといけないので、リズとサンディにはあきらめて貰ってゲートを王城に繋いで一緒に行く事にした。
「おお、アレクか。丁度いい所に来た。五歳の祝いの件で話があるぞ」
王城に着くと、待っていたかの様に陛下が立っていた。
来月貴族版の五歳の祝いがあるのは知っているのだけど、何か特別な事でもあったのかな?
よく見ると、陛下の横にはティナおばあさまとルーカスお兄様もいた。
「リズちゃんとサンディはお勉強ね」
「お兄ちゃんが会議終わるまで、頑張ろうね」
「あー!」
そして、リズとサンディはお腹が大分目立ってきた王妃様とアリア様に勉強部屋にドナドナされていった。
リズが何か言っていたけど、ここは諦めて貰おう。
僕は、陛下とティナおばあさまとルーカスお兄様と共に会議室に移動した。
会議室に入ると、閣僚に加えて近衛騎士の人も何人かいた。
もしかして、何だか不穏な空気?
「これからいう事は他言無用だ。各々漏れがないように」
「「「はっ」」」
会議が始まった瞬間、陛下から参加者全員にかん口令が敷かれた。
それほど重要な事なのだろう。
「実はこの後行われる五歳の祝いの際に、とある貴族がアレクの暗殺を計画している事が判明した」
「え!」
僕は思わず声を上げてしまった。
僕の暗殺を計画しているなんて、びっくりだよ。
僕がビックリするのと同時に、僕の両側に座っているティナおばあさまとルーカスお兄様の怒気がめらめらと燃えているのですが。
「先月の会議の際に、貴族主義の連中で覇権争いが起きていると言ったが、今回もその一環だ。軍務卿、報告を」
「はっ。主犯は貴族主義のコールセン伯爵です。配下にしているブレンダン男爵の資金源を断ち尚且つブレンダン男爵の家族を人質にとる事で、男爵を都合の良い操り人形にするようです」
「何という酷いことを」
ティナおばあさまが思わず声にする程、報告された内容は酷いものだった。
ブレンダン男爵の人権について何も考えていないのだろう。
「報告を続けます。五歳の祝いの際にアレク殿下が陛下と共に貴族からの挨拶を受けますが、その際にブレンダン男爵にアレク殿下を襲撃させる予定だとの事です」
「あの、陛下と一緒って、ティナおばあさまやエレノアにリズも一緒にいると思いますけど、その事を分かっていて今回の僕への襲撃を計画しているのですか?」
「いえ、そこまで考えていないかと。アレク殿下は貴族主義の貴族にとって目の敵なので、アレク殿下を暗殺するだけ考えている様です」
「なんという無計画性なんだろう。そんな単純な方法で暗殺が成功すると思っているのかな?」
「コールセン伯爵がそこまで思っている訳がないだろう。ブレンダン男爵に全ての罪を被せて、自分は高みの見物の気分なんだろうな」
ルーカスお兄様の疑問に陛下が一刀両断した。
閣僚も近衛騎士もあほらしい展開に溜息をついている。
そもそも既にここまで暗殺計画がばれていて、逆にコールセン伯爵側の情報管理が大丈夫なのか余計な心配をしてしまった。
「既にブレンダン男爵の家族を監禁している場所も把握している。アレクも余もいる場面で事を起こそうなんて、国家反逆罪も良い所だな」
「これも、例のポートコール事件での資金源の流れを追っていたら判明した事だ。まあ、内容が低レベルであるがな」
「とはいえ内部で自滅してくれる分にはかなわないが、他人に被害を出す様では駄目だ」
「この後、コールセン伯爵の屋敷を捜索する。とはいえ、ルーカスやアレクがいくら強いとはいえ前線に出す訳にはいかない。そこで、従魔を借りる事にする」
あの、僕は既に何回も前線に立っているですがとは言えないので、ここは黙っておく。
実は、この会議には僕とティナおばあさまとルーカスお兄様の他に、スラちゃんとプリンとアイビー様の従魔であるアマリリスも参加していた。
当然の如くスラちゃんとプリンとアマリリスも怒っており、陛下からの提案にやる気満々で触手や脚を上げていた。
「ふふふ、ならそのお馬鹿さんに鉄槌を下さないといけませんね」
「伯母上、頼むから生かして下さいね」
「勿論ですわ。馬鹿なことを後悔させないといけませんから、そう簡単に殺しはしませんわ」
勿論の事だが、ティナおばあさまは近衛騎士の一員として捜索に参加する気満々でいる。
陛下も念の為と言っているけど、僕はティナおばあさまの事だから半殺し位で収めると思う。
多分、大丈夫だと思いたい。
こうして伯爵家の捜索と男爵家の救出作戦が、軍と近衛騎士を中心として行われる事になった。
スラちゃんとプリンとアマリリスも、何度も言うけどやりすぎないようにね。
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