二百十三話 賄賂と帳簿とお金お金

 陛下とクロール男爵夫妻にシェーンさんとミリアはまだ話があるというので、現場見学も兼ねて僕とルーカスお兄様が護衛の近衛騎士と共にポートコールの代官邸に移動した。


「おかえり、お兄ちゃん。ミリアちゃんは?」

「陛下とお話があるから、王城に残っているよ」

「そうなんだ!」


 代官邸に戻ると、リズとスラちゃんが出迎えてくれた。

 しかし、僕にはもっと気になる事がある。


「何? 机の上にいっぱい置かれている袋の山は?」

「全部お金だよ! リズとスラちゃんが見つけたの!」

「これが全部お金とは……」


 ルーカスお兄様もあ然とする光景だった。

 広めの机の上にお金が詰まった袋が沢山並べられている。

 一体幾らになるんだろうか。


「アレク殿下、おかえりなさいませ。ルーカス殿下もよく来られました」

「カールトンさん。物凄いお金の山ですね」

「これ、全部横領したお金ですか?」

「そうです。実は昨日逃走しようとした船にも沢山のお金が積まれていました。まだまだ、出てきそうです」

「お金を貯める才能はあったみたいですね……」

「その才能を、統治に向けてくれればよかったのですが……」


 既に旧当主となってしまったが、お金は貯めることができるんだ。

 僕とルーカスお兄様も、余りの金額の多さにびっくりしてしまった。

 

「また、あったよ! 今度は台所の戸棚の中だよ」


 ドスン、ドスン。


 またもや目の前にお金が入った袋が積まれていく。

 そして、リズとスラちゃんは、意気揚々と屋敷の中へ消えていった。


「台所からも出てくるとは……」

「隠した本人も、きっと忘れていますね」


 ここにいても戦力にならないので、僕とルーカスお兄様はカールトンさんと一緒に帳簿を確認する事にした。


「あった、これだ」

「賄賂を贈っていたリストですね」

「賄賂を贈って、不正を見過ごす様に依頼をしていたんだ」


 カールトンさんと共に帳簿を調べていたら、贈収賄のリストが見つかった。

 一番お金を贈っていた人物は、確かバザール領の件でも不正をしていたから更迭されたはず。

 だから、今回不正な税収が分かったのか。

 このリストは重要なものなので、直ぐに王城に送った。


「これは、街の人から賄賂を貰ったリストですね」

「恐らく仕事をする上で、便宜をはかって貰ったのだろう」

「このリストにある人物も直ぐに事情聴取をしないと」


 次に見つかったのは、街の商人の関係性を示す書類。

 結構な金額の賄賂を受け取っているなあ。

 港湾関連の商人が多いから、何か特殊な物を取り扱っているのかもしれない。

 カールトンさんは兵に指示をだして、関係者の捕縛と聴取を命じた。


「お兄ちゃん、お昼だよ!」

「お、もうこんな時間か」

「これは、調査終わるまで時間かかるぞ」


 集中していたら時間がたっていたらしく、リズが昼食だと迎えに来た。

 余りの不正の凄さに辟易しながらも、皆で食堂に移動した。


「このお魚美味しいね!」

「新鮮だっていうのもあるのかもしれないね」

「後で王城にお土産として持って帰ろう」


 港町らしく昼食は魚を使った料理が並んでいて、結構美味しかった。

 時間があったら、魚をいっぱい買って皆で食べたいなあ。

 そんな中、侍従が食堂に駆け込んできた。


「すみません、街の人が治療を受けられないかと訪ねてきました」


 どうやら、僕達の昼食時間は長くはとれなさそうだ。

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