二百十話 お金の袋がいっぱい

 重要人物の移送も終わったので、先ずは代官の屋敷に皆で向かう。

 少女は目を覚まさないでいるのだが、だいぶ顔色が良くなっている。

 

「建物の外観は変えてないが、内装はかなり派手だな」

「これは相当派手に横領したとしか言えませんね」

「こんなにも贅沢品を集めて、一体何をしようとしていたのか」


 代官邸に着くと、直ぐに内装の豪華さに目がついた。

 高価な絵画に動物の剥製も飾ってあって、カーペットも派手な色合いだ。

 宰相も軍務卿も内務卿も、思わず呆れる程だ。


 寝ている少女をソファーに寝かせて、僕達は屋敷の中を調べていく。

 因みに執事などの不正に関与した人は既に拘束済みで、追加で王城に護送されている。


「お金がいっぱい入った袋だよ」

「またか。どんどんと、怪しい物が見つかるな」


 リズとスラちゃんが次々と怪しい物を見つけてくるので、そのたびに軍務卿はうんざりしていた。

 既に応接室の机の上には、お金が入った袋が沢山並べられている。

 更には資金の流れを記載した帳簿も見つかった。


「二重帳簿をつけていたのか。相当がめつくやっているな」

「しかし、想像以上に横領額が大きいから、調べるのは難儀だな」


 内務卿と宰相が話をしているが、捜査を長時間行わないとならないらしい。

 更には王都の男爵の屋敷も同時に調べているらしく、暫くは何回も調査で来ないといけないぞ。


 夕方になったので、今日の捜索はこれで終了。

 一旦王城に帰るのだが、一つ問題がある。


「起きないねえ」

「余程疲れてしまっているんだよ。体力の回復に努めているんだ」


 治療を行った少女が、全く目を覚まさないのだ。

 相当体力を消耗しているのだろうな。

 仕方ないので、この屋敷にある客室に寝かせる事にした。

 勿論、兵がガッチリと警戒するので、身の安全はバッチリだ。


 ここは兵に任せて、一旦皆で王城に戻り報告をする事になった。


「相当がめつい事をやっていたようだな。本人達はほぼ観念しているが、どうも横領額が大きすぎて本人も記憶が曖昧らしいぞ」

「どれだけ横領していたんですか……」


 陛下と色々と話をしたが、余りの内容に閉口してしまった。

 本人もよく覚えていないんじゃ、帳簿は見つかっても裏付けに時間がかかるだろうな。


「保護された少女の事だが、明日王城で再度鑑定を行う。正式に男爵の血筋だと判明すれば暫定で当主にするぞ。拘束されたとはいえ、貴族のままだと色々とめんどくさいのでな」

「保護者はいるのですか? 親兄弟は全員拘束されていますが」

「嫡男の嫁の実家で預かってくれる事になっている。話をしたら、その子の面倒を見てくれるらしいぞ」


 実の孫ではないのに預かってくれるなんて、本当に渡りに船だ。

 嫡男と嫁の間には子どもがいなく、嫁は嫡男を諌めていた為に叩かれていたらしい。

 嫁も被害者なのだろう。


「明日朝、その二人も王城に呼び寄せる。そこで、少女と引き合わせてくれ」

「畏まりました。その様に対応致します」


 あの少女の事は保護者が現れて本当に良かった。

 親兄弟が処刑されて一人になってしまったら、それこそ大変な事態になる。

 財産のあり方も論議しないといけないから、王都の屋敷の事も問題になるだろう。

 

「また、後任の人事が確定するまでは、現在派遣している調査団を暫定の統治者とする。市民生活に影響を出してはならないからな」


 仮の統治者も決まったし、今日は終了となった。

 明日朝、また王城に集合する事にして解散となった。

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