百九十八話 ジンさんの結婚式の準備
「ねー、すー、ぷー」
「ほら、ミカちゃんこっちだよ」
「あぃ」
暑いのでお部屋でミカエルの子守りをしています。
帝国の時も思ったのだが、スラちゃんは子守が本当に上手。
今もミカエルと追いかけっこの相手をしているのだが、絶妙な距離で待ち構えてる。
捕まえられそうになったら短距離ワープで逃げるし、かと言ってちゃんとミカエルに捕まったりもしている。
リズは基本ミカエルの事を待っていてわざと捕まってあげて、逆にプリンは逃げている事が多い。
僕はどちらかと言うと、スラちゃんに近いかな。
まあ、ミカエルはみんなが好きだから、呼ばれた方にてててと走っていくけどね。
「はい、昼食ができたから食堂に移動しましょうね」
「はーい」
「あーい」
侍従のお姉さんがご飯が出来たと呼んでくれたので、みんなで食堂に移動します。
皆でご飯を食べた後は、皆でお昼寝をしてギルドに移動。
そう、ジンさんの結婚式の準備をする為だ。
因みに、レイナさんとカミラさん、それにナンシーさんとルリアンさんの家の方はもう辺境伯領にきていて、辺境伯様の屋敷に泊まっています。
今日午前中に王城に迎えに行ったのだが、気のせいかレイナさんの父親である商務卿の目が既に潤んでいた気もした。
閣僚も結婚式に参加予定で、皆ギルドで出される料理をとても期待していた。
ビクトリア様とアリア様が妊娠しているので、王族からの出席はティナおばあさまとこども達になった。
近衛騎士も護衛に付くけど参加者は屈強な冒険者が多いから、恐らく身の安全はバッチリだと思う。
「じゃあ、行ってきます。そんなに遅くはならないと思います」
「分かりました。気をつけていってきて下さい」
「ミカちゃん、行ってくるね」
「あーう」
侍従のお姉さんとミカエルに見送られながら、僕とリズそれにスラちゃんとプリンはギルドを目指して歩いて行きます。
夕方に差し掛かる時間なので、護衛の人と一緒に歩いて行きます。
ギルドまでゲートを使えば一瞬なのですが、わざわざ歩いて行くのには理由があります。
「街の中の飾り付けが、更にパワーアップしているね」
「凄いよね。何だかお祭りの様だね」
そう、明日のジンさんの結婚式に向けて街の中の飾り付けが、ジェイド様とソフィアさんの結婚式の時よりも豪華になっているのだ。
これを見たいが為に、わざわざ街を歩いているのだ。
スラちゃんとプリンも、僕とリズの頭の上から街の飾り付けに見入っていた。
「おう、待っていたぞ」
「さあ、飾り付けを始めましょう」
「「はーい」」
冒険者ギルドに着くと、冒険者の人達が僕達を待ってくれていた。
通常業務もしているから、飾り付けは半分のエリアを使う事に。
因みに明日もギルドは営業するけど、規模は縮小するという。
皆で手分けして、ペタペタと壁に装飾を貼り付けていく。
いつもギルドの食堂のテーブルには何も敷かれてないけど、当日はテーブルクロスを敷くという。
なので、そこは食堂のおばちゃんにお任せです。
食堂は明日の料理の仕込みの真っ最中。
なんでも、前回ギルドで結婚式を開いた時よりも人数が多いという。
なので、食堂のおじちゃんも張り切って料理を準備していた。
「取り敢えずこんなものか。また明日だな」
「そうですね。教会から移動している間にやりましょう」
二時間もかからずに準備は完了。
後の飾り付けは、明日続きをやるそうだ。
「街の人もジンさんの結婚式を楽しみにしていましたね」
「そりゃこの街に久々に現れたAランク冒険者だ。街の人も良く知っているぞ」
「Aランクになったら貴族の娘と結婚するって、常日頃言っていたわ。女性からすると夢物語だよ」
「しかも、自分に惚れていた女も一緒に娶るとはな。というのもあって、ジンは街の話題の人物だ」
そっか、ジンさんとレイナさんが結婚した経緯に物語があって、そこにカミラさんも加わった。
一種のおとぎ話だよね。
「後は、こういうお祭りの時は得てして出会いの場でもある」
「特に私達女性の冒険者は、中々結婚相手が見つからなくてね。こういう場は貴重なのよ」
「そうなんだ。お姉さんキレイなのになんで出会いがないんだろうね?」
「そりゃ、見た目は良くても中身が男勝りだからだよ」
「あんた、一言うるさい」
「おがっ!」
あらら、剣士の女の人が余計なことを言った髭面の冒険者をぶん殴った。
確かにこれでは男性は引いちゃうかもしれない。
どうか、このお姉さんに良い出会いが訪れる事を祈っておこう。
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