百九十五話 僕達も会談のお手伝い

 陛下の誕生日パーティも近くなり、王城も色々とドタバタし始めた。

 国外からの来賓は既に王城に到着していて、何人かとは面会する事もできた。


「帝国に贈ってきた飲み物で陣容が崩れて、最後は王国に贈ってきた飲み物で死刑執行されるとは。まさに因果応報だな」

「悪い事が自分に返ってきたのだ。こればかりはどうしようもない。いわゆるバチが当たる事になったな」

「まだまだやらなければならない事が多く大変ですが、やっと一息つけました」


 帝国の外務卿に、教皇国からの使者、それに共和国の外交担当となったクレイモアさんと、ブッフォンのその後を話していた。

 結局ブッフォンは気がおかしくなったまま死刑判決が下されて、死刑執行されたという。

 死刑にするだけの大量の罪状があるし、これには何も異論もない。

 他の幹部も罪に応じて判決が言い渡された。

 あの大騒ぎしていた三人組は殺人を犯していた事がわかり、強盗などの罪と合わさって無期の強制労働となった。

 不正を一掃できたので、これからヤマ場だとクレイモアさんは言っていた。

 それでもクレイモアさんの表情は明るいので、先行きは良いのだろう。


「アレク殿下には、教皇国にも是非いらして頂きたいと思っております。教皇様もお会いしたいと言っておられます」

「お誘い頂き、有難う御座います。今年はイベントが重なっておりますが、機会がありましたら是非訪れたいと思っております」

「殿下は今年五歳になられます。更に成長した姿を見られる事を楽しみにしております」


 豪華な法衣を着ている教皇国からの使者からも、ニコニコしながら僕の事を招きたいという。

 今年は難しいけど、来年以降どこかのタイミングで教皇国に行けたらいいな。


「外務卿閣下。皇妃様の赤ちゃんの様子は如何ですか?」

「ええ、とても元気なお子様です。リルム皇女様も、お姉ちゃん振りを発揮しておられます」

「リルムがお姉ちゃんか。何だか想像がつきませんね」

「ともあれ、我が国待望の皇子の誕生です。国も祝賀ムード一色に包まれております」

「僕達も、赤ちゃんに会える事を楽しみにしております。先日、皆で出産祝いも選んでいました」

「それはわざわざ有難う御座います。陛下に成り代わり、お礼を申し上げます」


 帝国へは、陛下の誕生日パーティの一週間後に向かう予定だ。

 今回は陛下とビクトリア様とアリア様がお留守番になる予定です。

 何故アリア様が実家である帝国に行かないかというと、とある事情があった。


「王国もめでたいですな。二人の王妃様が同時に妊娠されるとは」

「私もびっくりしました。お兄様やお姉様は、大変喜んでおります」

「王国もこれで安泰ですな。アレク殿下が大きくなれば、益々繁栄することでしょう」


 これには僕もびっくりした。

 ビクトリア様とアリア様が同時に妊娠が分かった時には、ルーカスお兄様とルーシーお姉様に、エレノアとリズも大喜びしていた。

 特にエレノアはお姉ちゃんになると言って、大興奮していた。

 とはいえ、王侯貴族だからこのくらいは兄弟がいても全然おかしくないと思うな。

 因みにビクトリア様もアリア様も妊娠初期で悪阻が酷いので、今回の陛下の誕生日パーティは欠席されるという。


「それで、王妃様の代わりにアレク殿下が来賓の相手ですか。幼いのに大変ですな」

「いえいえ、重要な事はお話できませんが、こうして談笑の相手なら何とか」

「何を仰っしゃいますか。昨年から各国で起きている問題を解決し、その話ができるだけでも凄いのですよ」

「そうですわね。私はブッフォンの屋敷の中から怪物化したナンバーズに向けて、アレク殿下とリズ殿下が魔法を放った所をみましたが、それは物凄い魔法でした。こうして目の前で偉業を達成する所を見ると、とても幼い子どもとは思えません」

「なんと。クレイモア殿はアレク殿下とリズ殿下の魔法をご覧になったとは。それはとても羨ましいですな」


 えっと、何だか話がそれてきたぞ。

 僕の褒め合いになってきた。

 五分後に時間となって会談は終了したけど、ちょっと恥ずかしかった。


「「疲れた……」」


 王族用の食堂で、僕とルーカスお兄様が伸びている。

 ルーカスお兄様も僕と一緒で、朝から陛下の誕生日パーティに来た来賓の相手をしていたのだ。


「「「疲れた……」」」


 そして、リズにエレノアにルーシーお姉様は、例のごとくお勉強タイム。

 カミラさん特製の問題集だったから、こちらも疲れてしまった様だ。


「ほらほら、疲れたなら少し休みなさい。夕方も会談があるのよ」

「「「「「はーい……」」」」」


 そして、ビクトリア様とアリア様が安静にしているので、代わりにティナおばあさまが僕達の事を面倒見てくれています。

 とはいえ、皆疲れてしまったので昼食後はティナおばあさまのベッドでひと休憩。


「そうなのね。エレノア王女様もお姉様になるのね」

「うん。とっても楽しみなの」

「それじゃ、アリア様のお手伝いをしないといけませんね」

「いっぱいお手伝いするの!」

「リズも!」


 たまたま午後の会談の相手が御婦人方だったので、エレノアの相手をしてくれた。

 流石は母親だけあって、子どもの相手がとても上手い。

 上手くやる気にさせて機嫌よくしていた。

 そして、何故かリズとスラちゃんもやる気になっている。


「それで、ルーカス殿下とアレク殿下が我々の相手をしてくれているのですね」

「まだまだ若輩ですが」

「ちゃんとお話できなくてすみません」

「いえいえ、これだけ話せていたら立派な者です。ルーカス殿下も、王太子としての自覚が出てきたと思います」

「先日のバザール領の件を直接視察して、色々と感じるものがありました」

「うむ。民の痛みを知るのも、上に立つものとしてとても大切な事です。そうやって色々と感じる事は、ルーカス殿下に良い影響を与えるでしょう」


 僕とルーカスお兄様は、少し年配の男性と話をしている。

 僕から見ても、この間のバザール領の件はルーカスお兄様にとってとても良い経験になったと思った。

 因みにこの男性は、とある人のお祖父様である。


「お祖父様、どうですかルーカス殿下とアレク君は」

「いやはや、ルーカス殿下は以前お会いした時よりも遥かに聡明になられた。アレク殿下は、冷静でよく物事を見ている」

「レイナさん。お祖父様に言ってくださいよ。評価しすぎだと」


 そう、この人はレイナさんのお祖父さんで商務卿のお父さんでもある。

 商務卿に家督を譲って引退しているが、たまに陛下と会うことがあるという。

 僕とルーカスお兄様にニコニコと接してくれて、とても有り難いです。


「レイナさんには、勉強とかでお世話になっております」

「僕は冒険者としても師匠の様な存在です。お隣なので、とても心強いです」

「もう、二人とも口が上手いわよ。でも、有難うね」


 レイナさんは少し照れながらも褒めてくれた。

 僕にとっては色々な事を教えてくれたから、本当に師匠だよな。

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