百八十二話 共和国首都に到着

 三日目になって首都に近づくと、流石に警備も厳重になってきた。

 とはいえ、守っているのは例の兵なのでやる気のない人が増えているだけ。

 よく見ると、商人も普通に通過している。

 うーん、検問所の意味があるのか物凄い疑問だ。


「結局、首都に近づいても街の様子は何も変わらないですね」

「これまでもそうでしたが、政権が変わったので従っている振りをしつつ、様子見をしている可能性が高いです」


 過激な政権なので、何をしてくるか様子見状態なのだろう。

 ここまできたけど、街の人からもブッフォンの政治姿勢が聞こえてこないなあ。

 町長と話をするけど、ブッフォンが何をしたいのかさっぱり分からない。

 

 そのまま馬車は進んでいき、夕方前には首都についてしまった。

 しかも、ここでも簡単に首都の中に入ることができた。

 首都にくるのにかなり危険な思いをすると思ったので、かなり拍子抜けだ。

 そのまま、首都にある町長の屋敷に到着。

 ここも特に兵によって封鎖されているわけではない。

 

「旦那様、よくご無事で」

「ご無事も何も、何も起こらなかったぞ」

「左様ですか。ブッフォンが政権を握った直後は粛清が行われたので、私は心配しておりました」


 直ぐに屋敷の執事が迎えてくれたが、どうも粛清も最初だけの様だ。

 独裁政権を握ったなら、反対派を徹底的に弾圧しようと思うのが普通な気もするよ。

 そう思っていたら、執事が僕達に気がついた様だ。


「旦那様、こちらの方々は?」

「我々の強い味方だ。丁重にもてなす様に」

「畏まりました」


 執事に客室に案内されてから、今後の事を考える事に。

 早速レイクランド辺境伯様と軍務卿と外務卿を呼んで、町長との打ち合わせを行った。


「ブッフォンは国家代表就任式を三日後に行う様で、その前に私達を集めて殺害するつもりでしょう」

「最初の粛清で主だった人を殺害や追放できたから、気が緩んでいる可能性が高いな」

「では、明日一日かけて首都の中を徹底的に調べて情報を集めよう」

「私達もそれとなく情報を集める事としましょう」


 戒厳令の為に夜間外出禁止令がでているが、斥候なら関係なく動けるだろう。

 ましてブッフォンの近くにいる精鋭部隊以外は、兵も大したことはない。

 という事で、早速軍務卿は斥候を使うと言って僕にゲートを開く様に頼んできた。

 そして、十人程の斥候が、首都の闇の中に消えていった。

 そして軍務卿は、今度はスラちゃんに向き直った。


「スラちゃんには、可能ならこの街のネズミ駆除をしてもらいたい。例のテイマーがいる可能性もあるからな。情報も集められたら助かる」


 スラちゃんは軍務卿の提案に任せろっと触手をフリフリして、さっきの斥候と同じく首都の闇に消えていった。

 明日朝合流する事にして、僕達はレイクランド辺境伯様と屋敷に戻った。


「あ、そうだ。久々にホーエンハイム辺境伯様の屋敷に戻っていいですか? プリンを連れて来ないといけないのと、ミカエルの様子を見に行きたいので」

「大丈夫だよ。こっちは心配せずに行ってきなさい」

「ミカちゃん久しぶりだな」


 プリンを連れて行くのと同時にミカエルの様子を見に、ティナおばあさまと共にホーエンハイム辺境伯様の屋敷に向かった。

 直ぐに屋敷の応接室に案内されると、ソフィアさんに相手をされているミカエルとプリンがいた。


「あら、アレク君とリズちゃんじゃない。おかえりなさい。ティナ様もようこそ我が家へ」

「にー、ねー!」

「ミカちゃん!」


 ソフィアさんが僕達の事を呼ぶと、ミカエルが気がついた様でソフィアさんから離れてこちらに歩いてきた。

 ミカエルは最近よちよち歩きが出来るようになったので、リズはあえてミカエルが歩いて来るのを待ってから抱いていた。

 プリンも僕の手の中にぴょんと跳ねて来た。


「はは、久しぶりの再会でミカエルも喜んでいるな」

「ええ、本当ですわね。ミカエルもニコニコとしていますね」


 そこに、辺境伯様とイザベラ様が部屋の中に入ってきた。

 やっぱりというか、ミカエルは寂しかったのだろう。

 今はリズに抱かれていてニコニコとしている。

 

「成程。となると、ブッフォンは満足してしまった可能性があるな」

「満足ですか?」

「そう、満足だ」


 これまでの事を話をすると、辺境伯様が腕組みをしながら話をしてくれた。

 満足とはどういう事だろう?


「例えば、この前アレク君が帝国から多額の賠償金を貰ったよね。更に賠償金を欲しいと思う?」

「いえ、その賠償金でさえも多額だったのでそれ以上は。あ、そういう事ですか」

「そう、ブッフォンは共和国の代表に収まった事で満足してしまった可能性が高い。これが本気で世界征服を目指すのなら、既に色々と動いているだろう。あくまでも推測でしかないがな」

「しかし、金と自分の欲求の為に犠牲になっている人もいるという事ですよね?」

「ああ、それは間違いない。今は動く時ではないので、中々歯がゆいな」


 街中の様子を見る限り、辺境伯様の推測はあながち外れではないと思う。

 特に兵の体たらくぶりを見ると、そう思わざるを得ない。

 この辺は偉い人と話をしないといけないだろう。


「アレク君。明日の午前中には斥候からの情報が集まるから、その情報を元に明後日の対応を決めましょう」

「そうですね。スラちゃんからの情報も入ってくるので、戦法も決まりますね」

「その為にも、今日はゆっくりと休まないとね」

「なら、美味しいものもいっぱい作りましょうね」

「やったー!」


 イザベラ様からの美味しいご飯の提案に、リズとプリンは大喜びしている。

 ティナおばあさまからも言われた様に、体を休めるのも仕事だと思って夕方以降を過ごした。

 首都にいく間ずっと気を張っていたので思ったよりも疲れていたらしく、僕もリズもティナおばあさまとミカエルと共に直ぐに眠ったのだった。

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