百八十一話 暇な道中

 共和国の辺境の街を出発して半日。

 うん、道中はとても平和だ。

 魔物は程よく出てくるけど、大したレベルじゃない。

 辺境の街の護衛と、御者を兼ねているジェリルさんがあっという間に倒していく。

 たまに暇になったスラちゃんが、窓からするすると出て行って魔物を倒している。

 特に畑とかも荒らされてなく、とっても平和。

 そして一番驚いたことが道中の検問。


「ブッフォン様からのご依頼である!」

「はい、通っていいですよ」

「検問ご苦労」

「うっす」


 護衛の騎士がブッフォンからの手紙を見せると、馬車の中を確認する事もなくあっさりと通された。

 念の為に町長が窓から顔を出して挨拶するけど、検問の人間はけだるそうに挨拶している。


「全くやる気ないね」

「そうだね、多分希望のポジションじゃなかったのかもね」


 馬車を少し進めてからリズと話し合うけど、全くといっていいほどやる気がない。

 馬車の窓をあけて少し振り返ってみると、ふああとあくびをしている。


「恐らく戦力を首都に集中している可能性が高いですね。逆を言えば、首都を制圧すれば一気に形勢逆転するでしょう」

「後は首都にどのくらいの勢力が残っているか。それが鍵ですね」


 町長と話しながら今後の展開を想像するけど、どの位の規模が首都にいるか。

 それが鍵になりそうだ。


 休憩も最低限にして一気に突き進んだ結果、初日は当初の予定よりかなり早く進んだ。

 しかし、これから先は全てブッフォン派が支配する街を進んで行く。

 万が一の事を考えてブッフォン派が支配する街では宿泊せず、一度国境の街に戻りそれからレイクランド辺境伯様の屋敷に戻った。


「そうか、それなら早ければ三日目の夕方か夜には首都に着くな」

「しかし、首都に着いてからどの様に対応するかが問題ですね」

「分かっているのは、ブッフォンの周辺に百人の精鋭がいる事だ。正直、首都周辺にいる兵のレベルはレイクランド辺境伯領を襲撃したのと同じレベルらしい」

「となると、やはりブッフォンをどうにかするのが先決ですね」


 レイクランド辺境伯様と軍務卿と話をするが、やはり道中にいる兵は大した事はないらしい。

 そう願って初日は終了し、休むことにした。


 二日目も朝早くに起き、準備を行う。

 そんな中、レイクランド辺境伯様の奥様からお昼ご飯を頂いた。


「はい、手軽に食べられる物だけど良かったら食べてね」

「ありがとう!」


 中はサンドイッチが沢山入っていた。

 僕達も朝早くから出かけるのに、とてもありがたい。

 国境の街に行って、町長と合流し今日の旅路もスタート。

 

「今日も昨日と一緒だね」

「全くやる気ないね」

「検問の意味あるのかな……」


 今日もやる気のない検問所を通過していく。

 というか、道中の街の代官も検問所と同じだ。

 ブッフォンの手紙を見せると、どうぞどうぞと簡単に話が進んでいく。

 このブッフォンの手紙は、ブッフォン一派にとってはかなりの効果があるようで、ほぼノーチェックで色々な所をパスできる。


「ブッフォンにペコペコしているのか、はたまたブッフォンに尻尾を振っているのか、あの人達はどういうつもりなんだろうか?」

「ブッフォンの力が増したので、おこぼれを貰おうとしている人達ですよ。ブッフォンの力が無くなれば、直ぐに次の権力者に尻尾を振ります」

「何というか、全く主体性がないわね」

「独裁政権支配の悪いところですね。右を向けば右に、左を向けば左に向くだけです」


 道中暇なのでティナおばあさまと町長と話をするけど、代官は偉い人にペコペコしているだけらしい。

 なので、こういう街だと政権がかわっても街の人の暮らしにはさほど大きな影響はないという。

 

「辺境は別国と接しているので、常に新しい情報と対応する必要があります。なので、どの辺境の街も政治的には中立であるところが殆どです」

「ブッフォンは自分に従わない所が許せないから、辺境に兵を送ったのですね」

「とはいえ、不意打ちさえなければ辺境を守る兵は精鋭です。ブッフォンの私兵ごときでは敵ではありません」


 となると、辺境の街の私兵が今後の鍵になるのかもしれない。

 首都防衛の兵が弱すぎると、国としてどうかなと思うところがあるぞ。

 そんな事を話しながら馬車は進みます。

 はい、なんにも妨害するものが出てきません。

 強いて言うなら、途中出てくる魔物位です。

 ブッフォン一派には印籠の様に手紙を見せればいいし、戒厳令が敷かれているのか一般市民も街中にあまりいない。

 トラブルが起こる要素が全くないのだ。

 あっさりと二日目の行程も終了。

 あまりにも暇だったので、町長を送った後に王城に移動し、陛下と閣僚と話し合った。


「共和国内の街を守る組織が大きく崩れてはいないので、そこまで危険ではないのだろう。逆に言うと、首都がどうなっているかが不安である」


 僕達の報告を受けて、陛下が意見を言ってきた。

 長い間政治が硬直していたので、住民は政治に無関心になっている様だ。

 なんかどこかで聞いた事のある話だな。

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