百七十四話 贈られてきた物と今後の対策

 そして、僕とルーカスお兄様にルーシーお姉様の誕生日パーティの日。

 既に僕は用意してある服に着替えて準備万端なのだが、リズとエレノアが何故か別の事でやる気満々になっている。


「「怪しい物を見つけるよ!」」


 いや、怪しい物があったら大変なんですが。

 スラちゃんとプリンもやる気満々なので、中々止めてとは言い出せないぞ。

 まあ、ベストール侯爵一派も大人しくなったし、何もなく終わるだろう、僕はそう思っていた。


 しかし、見つかってはいけない物が見つかってしまったのだ。


「「怪しいのあったよ!」」

「え? 本当にあったの?」

「「うん!」」


 リズとエレノアは、ドヤ顔で僕がいたティナおばあさまの部屋に入り込んできた。

 スラちゃんとプリンも見つけたと触手をふりふりとしていた。

 実は今回は何も見つからないだろうとティナおばあさまとも話をしていたので、正直僕もびっくりしている。

 だけど、不審物の送り先を見てまたかと思ってしまった。


「ご丁寧に、お子様にどうぞって書いてあるわね」

「手口が同じなのが馬鹿らしいわ」


 ティナおばあさまと一緒に不審物が発見された厨房に向かうと、先に来ていたビクトリア様とアリア様がどこかで見覚えのある物を見ていた。

 そう、ブッフォンが帝国の結婚式に送った毒薬入りのジュース一式だった。

 リズとエレノアでは鑑定をする事は出来ないので、僕の方でジュースの鑑定をしてみた。


「えーっと、中身は帝国の時よりもパワーアップしていますね。大人でも十分重症になりますが、子どもが飲めば死んでしまいます」


 帝国の時は下剤をジュースに混ぜ込んでいったけど、今回は間違いなく毒物だった。

 それを聞いたティナおばあさまが、早速指示を出していた。


「全部処分する必要はないわ。一本残しておきましょう。ふふふ、いつの日にかブッフォンに飲ませてやらないとね」

「そうですわね。折角ですから、ご自分で試飲して貰わないと」

「アレク君が持っていた方がいいわね。ふふふ、楽しみが増えましたわ」


 おお、大人の女性陣がちょっと怖いぞ。

 今回のブッフォンの件で、相当頭にきている様だ。

 僕は言われるがままに、そっと魔法袋にジュースを一本しまった。

 勿論間違って飲まない様に、瓶にドクロマークを書いておいた。


 その後の誕生日パーティ自体は何事もなく終了した。

 というか、トラブルが起こる要素もない。

 子どもというので来賓による挨拶も手短だったし、出された料理もチェック済み。

 プレゼントも大掛かりな物はなしと周知されていたので、後でお礼状を書けば良いだけだ。

 因みに怪しい物を見つけたリズとエレノアは、スラちゃんとプリンと共に任務を果たせたとご機嫌で料理を食べていた。


 そして、パーティ後直ぐに閣僚とレイグランド辺境伯様とホーエンハイム辺境伯を含めた会議が始まります。


「今回の件は些か度が過ぎたな。厳重抗議では済まされないな」

「こちらも対抗措置をしないといけないぞ」


 陛下と宰相が、あまり見たことのないレベルで言葉を強めている。

 他の閣僚も、勿論辺境伯様も共和国に対して何か思うところがありそうだ。


「今まで戦争を起こさない様に出来るだけ配慮してきたが、これでは我が国のメンツが立たない。先ずは報復措置として、輸出規制をかける事にする」


 そっか、先ずは規制をかけて相手の出方を見るわけか。

 でも、一体何を規制するのだろう。


「先ずはぜいたく品などの庶民に影響のない物から禁止する。とはいえ、共和国の政権幹部は見栄っ張りで珍しいものが好きだ。一定の効果があるだろう」

「なら、武器に転用可能な魔道具も禁輸しましょう。丁度魔道具ギルドも農業用魔道具の生産が忙しくて、どうするべきかと相談がありました」

「おお、それはタイミングが良い。国内開拓が忙しいと、十分な理由になるな」

「それらをリストアップし、段階規制をかける様にしましょう」

「よし、直ぐに作業にとりかかろう。勿論、影響を受ける業者への補填の準備も行う様に」


 閣僚に辺境伯様達が加わり、早速規制内容が決まった。

 成程、政権幹部に影響があるものから規制すれば、庶民への影響は少なそうだ。

 業者への補填もしっかり行えば、国内の影響も少なさそうだ。

 そんな中、辺境伯様よりとんでもない情報がもたらされた。


「そういえばアレク君、最近辺境伯領でアレク君とリズちゃんを見守り隊っていうのが出来ているらしいが、何か知っている?」

「え? 何ですか、それは?」


 思わず飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。

 何だ? 見守り隊って。

 あ、もしかして。


「この前、ティナおばあさまと侍従のお姉さんが何か話をしていました。もしかしたら、それかもしれません」

「というか間違いないだろう。アレク君の屋敷やアレク君の周辺に不審人物がいないか監視する組織らしいぞ。街の人の完全有志らしい」

「それは街の人に申し訳ないです。今度、お礼をいいます」

「うん、それが良いだろう」


 何だかもうしわけない気持ちもしたけど、陛下もその行動に賛同していた。


「普段地元にいる人がおかしいと感じる事はとても大切な事だ。意外と重要な物が見つかるかもしれないぞ」

「実は既に今回の件とは関係ありませんが、犯罪者を検挙する実績がでております」

「ふむ、この活動は暫く続けるように」

「はっ」


 あらら、陛下の許可までおりちゃった。

 でも、今度街の人と話をしてみよう。

 何か見つかるかもしれない。

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