百五十話 辺境様の若奥様?
道中のトラブルもなく、魔導船は無事にレイクランド辺境伯の街の郊外にある駐屯地に着陸した。
確かに前の魔導船よりも早くなっていた。
そんな事を思いながらも、地上に降り立つ。
僕に続いて、リズもぴょんと地面に降り立った。
「さて、到着して直ぐで悪いが、アレク殿下には幾つかの場所をゲートで繋いでくれないか?」
「分かりました。直ぐに試してみます」
レイクランド辺境伯領に来た理由の一つが、僕がゲートを使えるかどうか。
試しに王城やホーエンハイム辺境伯領、更には帝国にもゲートを繋いでみたけど問題なくできた。
「特にいつもと魔力の消費量も変わりませんし、問題ありません」
「そうか、それは上々。私は駐屯地の兵の状況を確認するので、また明日だな」
「お疲れ様です。また明日よろしくお願いいたします」
軍務卿とはここで別れて、僕達は迎えにきた馬車に乗ってレイクランド辺境伯様と侍従と共にレイクランドの街に向かった。
駐屯地から進み防壁の検問所を抜けると、レイクランドの街並みが見えてきた。
市街地の市場などをみると魚介類なども売られている様で、丁度夕方というのもあって多くの買い物客で賑わっていた。
「あ、お兄ちゃん。冒険者ギルドがあったよ」
「本当だね。この街の冒険者ギルドも、ホーエンハイム辺境伯領のと同じく大きいね」
「レイクランド辺境伯領には、山地などもあるので素材採取の依頼が多くあります。また、ホーエンハイム辺境伯領と同じく輸送関連の依頼も多くあります。どちらかというと、中級者向けの依頼が多いですね」
「そうなんだ! ギルドも覗いてみたいな」
「リズ、僕達はまだFランクなんだから、依頼は受けられないよ」
「えー!」
リズよ、そもそも僕達は公務でレイクランド辺境伯領にきているでしょうが。
スラちゃんも一緒になってがっかりしないの。
しかし、レイクランド辺境伯領では素材集めができるのか。
確かDランク以上になるには特定の素材を集める必要があったら、いつか冒険者としてレイクランド辺境伯領にくる可能性もありそうだ。
そのまま馬車は街並みを進んで行き、やがて大きな屋敷の前に到着。
もしかしてでもなくて、ここがレイクランド辺境伯様の屋敷なんだろう。
辺境伯というだけあって、ホーエンハイム辺境伯様の屋敷と同じくらい大きい。
馬車から降りると、侍従と一緒に小さくてとても可愛らしい令嬢が並んでいた。
もしかして、レイクランド辺境伯様の娘様なのかな?
「ただいま。急な連絡で済まない。こちらがアレク殿下とリズ殿下だ」
「お帰りなさい、あなた。国の大事ですから仕方ありません。それに昨日の内に連絡貰っていますので、準備は万端です」
「そうか、流石はカレンだな」
えーっと、目の前で辺境伯様と女性がラブラブイチャイチャし始めたぞ。
リズもスラちゃんも、ポカーンとしている。
ラブラブオーラに当てられたか、僕の頭の上に乗っていたプリンも思わず目を覚ましたぞ。
しかも話ぶりからして、二人は夫婦の様だ。
うん、リアル美女と野獣だ。
「おっと、紹介しよう。妻のカレンだ」
「初めまして、アレクサンダーと申します。今日は宜しくお願いします」
「エリザベスです。宜しくお願いします」
「あら、とても可愛い上にキチンと挨拶出来て偉いわね。私はレイクランド辺境伯夫人のカレンよ。宜しくね」
「はい、宜しくお願いします」
「お願いします」
「うーん、とても可愛いわね。もう食事の時間ですし、部屋に案内しましょう」
カレン様はとっても明るい方で優しそうなんだけど、どうしてもエマさんにオリビアさんと同じ位の年に見えてしまう。
そんな事を思いながら、まずは宿泊する部屋に通される。
準備をしたらお風呂に入るのだが、ここでも侍従が誰が担当するかでじゃんけん大会が開かれていた。
僕とリズは、じゃんけんをしている侍従を尻目に、そーっと体を洗っていた。
じゃんけん大会が終わってさあ体を洗いましょうっという時には、僕とリズは既に湯船に浸かっていた。
その様子を見た侍従は、とっても落ち込んでいた。
そして、僕とリズの歓迎も込めての夕食タイム。
「お兄ちゃん、美味しいよ!」
「はいはい。ああ、また口を汚して」
「「「ニヤニヤ」」」
僕がリズの口の周りを拭いていると、侍従も含めた大人が僕達の事を微笑ましいものを見るような視線で見ていた。
うん、何だか今日はそういう視線がとても多いぞ。
スラちゃんとプリンは、視線を全く気にせずに食事している。
これは、何か話題を逸らさないと。
「レイクランド辺境伯様、お子様はいらっしゃるのですか?」
「いるぞ。男が二人でな、今は学園に通っておる」
「ふふ、とても腕白な子なんですけどね。母親から見るととても可愛い物ですよ」
うん、きっと間違っていない発言のはずだ。
でもカレン様が言うと、とっても違和感があるぞ。
更に、レイクランド辺境伯様の発言で、僕とリズは混乱する事に。
「誤解しない様に言っておくが、私よりカレンの方が年上だぞ」
「え、本当ですか? 学園生といっても通じますよ」
「カレン様、凄い若いよね!」
「ふふふ、有難う。でも、もうおばちゃんなのよ」
少なくとも十四歳位の息子が二人いて、尚且つレイクランド辺境伯様よりも年上。
いや、ダメだ。全くそんなふうには見えないぞ。
でもティナおばあさまも若々しいし、この世界の貴族の女性はそういう人が多いのかな?
因みに僕達が寝る時は、変わるがわる侍従の人が様子を見にきていた。
リズは関係なく寝てしまったけど、僕は気になって少し寝るのが遅くなってしまった。
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