百三十六話 今日は入園式の日
学園見学から一週間後、いよいよエマさんとオリビアさんの入園式です。
今日から長期休暇を除いて、エマさんとオリビアさんは王都の辺境伯様の屋敷で過ごす事になります。
前回一緒に王都に向かった後、エマさんとオリビアさんはそのまま王都の屋敷に残り、王都での生活に慣れるようにしていました。
今日は入園式当日なので、辺境伯様とイザベラ様と王都に向かいます。
「おお、お姉ちゃん可愛い!」
「本当ね、やはり女の子の制服は可愛いわ」
「そうかな、ありがとうね」
「やっぱり新しい服は嬉しいな」
リズとイザベラ様が、エマさんとオリビアさんの事を手放しで褒めている。
エマさんとオリビアさんは、真新しい制服をきて回ってみたりスカートの裾をひらひらとさせている。
楽しそうに制服をひらひらさせている娘を見る辺境伯様の顔が、他人には見せられない程にデレデレになっているのはスルーしておこう。
そして、本来なら僕とリズは入園式に参加する予定はなかった。
いくら辺境伯様に保護されているからって、保護者席にいるわけにもいかない。
しかしながら、急に入園式に参加することが決まってしまった。
しかも何故か来賓として。
それは、一昨日いつもの勉強をする為に王城にいった時の事だった。
王城に着いてティナおばあさまにあった時に、いきなりこういわれた。
「二人とも、明後日の学園の入園式に来賓として参加するわよ」
「えっ!」
「わーい」
ニコニコとティナおばあさまが凄いことを言ってきた。
しかも、この言い方だと決定事項みたいだぞ。
リズとスラちゃんは、思いがけず入園式に参加できると両手を上げて喜んでいるけど。
「一応国立だから毎年王族が参加するけど、今回は私が参加するの。二人の公務の場としても良いかなって」
「公務って事は、何かするのですか?」
「ご入園おめでとうございますって言えば良いだけよ」
「おお。リズ、エマお姉ちゃんとオリビアお姉ちゃんにおめでとうって言うよ!」
「リズちゃんも頑張らないとね。当日は辺境伯と来て、体育館で一緒になれば良いわ。服もステージの袖でぱぱっと着替えられるのよ」
といった感じで、僅か五分で僕達の入園式出席が決定した。
というか、僕はティナおばあさまの笑顔に一抹の不安を覚えたけど。
入園式には、流石に馬車で学園に向かった。
当日は馬車専用の入口が設けられて、貴族はそこで降りるらしい。
僕達も馬車から降りて、体育館の方に向かった。
クラスごとに体育館で座る場所が決まっているらしく、特にエマさんとオリビアさんはAクラスなので一番前になるそうだ。
保護者は二階の観覧席が用意されているが、時間までは下で入学する人と話をしている事が多いらしい。
僕達も辺境伯様とイザベラ様と共にエマさんとオリビアさんとお喋りしていたけど、係の者に袖口に行くように呼ばれた。
「では行ってきます」
「着替えてくるよ!」
「「二人とも頑張ってね」」
おお、流石は双子だ。
エマさんとオリビアさんが僕達を送り出す声が、ばっちりと重なっていた。
係の人に案内されると、袖口のスペースにティナおばあさまが待っていた。
「ティナおばあさま、お待たせしました」
「おばあちゃん、おはよう!」
「ええ、おはよう二人とも。まだ時間あるけど、着替えちゃいましょう」
「うん!」
直ぐに控えていた侍従によって、僕達は着替えさせられていく。
髪もささっとセットされ、リズはティアラもつけていた。
着替え終わったタイミングで、マイク様がひょこっと袖口に現れた。
「おお、これは可愛いな。おっと、ティナ様。ご挨拶が遅れ申し訳ございません。ホーエンハイム辺境伯が次男。マイクと申します。今年の学園の生徒会長を務めさせて頂いております」
「ええ、何回かあった事があるわね。いつも、アレク君やリズちゃんからかっこいいお兄ちゃんって聞かされているわ」
「光栄にございます」
凄い、マイク様が物凄く丁寧な挨拶をしている。
思わず、僕もリズも拍手をしてしまった。
そしてマイク様は、改めて僕とリズをジーっと見ている。
「うん、二人とも可愛らしく出来ているね」
「本当? ありがとう、マイクお兄ちゃん!」
マイク様に褒められて、リズとスラちゃんは嬉しくてくるくると回っている。
そんな様子を、ティナ様も侍従もニコニコとして見ていた。
「おばあちゃん、少しだけエマお姉ちゃんとオリビアお姉ちゃんに見せてきても良い?」
「ええ、少しなら。私も辺境伯に挨拶に行かないと」
「では、私がご案内します」
「お願いね」
「承りました」
颯爽とマイク様が僕達をエスコートする。
舞台上から下に降りると、周りがざわざわとしはじめた。
そりゃ生徒会長の案内で王族が現れたのだから。
新入生の周りにいた他の貴族や官僚は、慌ててティナおばあさまに一礼をしていた。
そして、エマさんとオリビアさんの所に到着。
「これは、ティナ様。こちらからご挨拶できず申し訳ありません」
「いえいえ。入園式では、親は子どもの側にいるものですよ。エマとオリビアも、入園おめでとう」
「「ありがとうございます。ティナ様」」
おお、ティナおばあさまから辺境伯の所に挨拶にいったから、周りからどよめきが起きている。
「エマお姉ちゃん、オリビアお姉ちゃん。リズはどうかな?」
「とっても可愛いわよ。勿論、アレク君もカッコいいよ」
「ドレスもティアラもよく似合っているわ」
「ありがとう!」
エマさんとオリビアさんに褒められて、抱き着いていくリズとスラちゃん。
子どもとはいえ、王族と気安く話しているなんて一体誰だって周りから言われているぞ。
「うんうん、流石は我が妹だ。とても制服が似合っているぞ」
「はいはい、マイクお兄様もしっかりして下さいね」
「生徒会長なのだから、挨拶はキッチリとして下さいね」
「それは大丈夫だ。二人の事を最前列で見守るぞ」
「「とっても不安だ……」」
マイク様がエマさんとオリビアさんに話しかけると、今度は生徒会長の妹かって声が聞こえてきた。
中にはブラコンやシスコンって声も聞こえるぞ。
「式典開始十分前になります。保護者の方は、二階観覧席へお上がりください」
お、十分前のアナウンスが入ったぞ。
他の人もぞろぞろと動き出した。
「私達も舞台上に上がりますね」
「二人の事を宜しくお願いします。私達も二階に行くぞ」
「「はい、お気をつけて」」
エマさんとオリビアさんと別れて、舞台上に用意された椅子に座る。
マイク様は生徒会長のあいさつがあるので、反対側の席に座った。
いよいよ、入園式の始まりだ。
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