第三百八十五話 慶事

 王城の警備も厳重になる中、それでも日々業務と結婚式に向けた準備を進めていく。

 そんな中、子どもが生まれた情報が二つ飛び込んできた。

 それを夕食時に話をすると、みんなとても喜んでいた。


「バルカス様の所とルイ様の所で、赤ちゃんが生まれたよ」

「「「やったー!」」」


 バルカス様の所は何と双子だった。

 この間あったときにお腹大きいなと思ったけど、双子なら理解できる。

 男の子と女の子の双子で、名前を決めている最中だという。


「お兄ちゃんの所は、ちょっと危なかったのでしょ?」

「早産だった上に、出産に時間がかかったからね。いくら俺でも先天性の病気は治せないけど、とにかく奥様も子どもも無事で良かったよ」


 ルイ様の所は少し早産で、なおかつ出産に時間がかかって体力を消費したらしく、ルイ様の奥様も赤ちゃんも少し危険な状態だった。

 急に俺が呼ばれた時は、何があったのかと思ったよ。

 体のダメージを治療して安静にしてもらったら、だいぶ体調も回復した。

 今では赤ちゃんも元気よく泣いていて、乳も沢山飲むようになった様だ。

 

 という事で、休みの日に出産祝いを皆で買って赤ちゃんを見に行く事に。

 先ずはバルカス様の所に移動。


「わあ、可愛いね」

「ちっちゃいね」

「寝ているね」

「指握った」


 子ども達は、生まれたばかりの小さな双子に興味津々。

 抱っこは怖くてできない様で、指を握らせたりほっぺをつついたりしていた。

 そんな子ども達の様子を、バルカス様とマリー様が見つめていた。


「これで公爵家も、将来は安泰じゃな」

「ハハハ、それはどうでしょうか。でも、男子が生まれたのは有り難いですな」


 今日はビアンカ殿下にウィル様も一緒にきている。

 サリー様は子ども達に混じってあれこれ話をしていた。


「バルカス様、お子様の名前は決まったのですか?」

「ああ、決まったよ。男の子がアレックスで、女の子はジェシカだ」

「ふむ、良い名じゃのう。将来、兄上の子の妃候補になるじゃろうな」

「ビアンカ殿下、気が早いですよ。先ずは健康に育って貰わないと」

「そうですわね。すくすくと育って貰いたいですわ」


 こちらでそんな話をしていると、エステル達が順番に赤ちゃんを抱っこしている。

 何だか赤ちゃんを見てニマニマしているのは、気のせいではないようだ。


「しかし、沢山の贈り物を貰って悪かったな」

「いえいえ、皆赤ちゃんに会えるのを楽しみにしていましたから」

「この前来た時もそう言っていたな。その様に言ってくれるのはとても有り難いな」

「まあ、あれだけの贈り物の数を見れば分かりますよ」


 俺の視線の先には、沢山の貴族から贈られてきたプレゼントの山が。

 公爵家への繋がりをアピールすると共に、将来の嫁候補にと必死なのだろう。


「サトー殿の所や知り合いの所は気兼ねなく接するが、流石にこうも貴族としてのアピールが強いと考えるものもあるな」

「あちらとしては、何とかしようと必死なのでしょうね」

「そのうちサトー殿の所も分かると思うぞ」

「うう、あんまり考えたくないな……」


 うちも子どもが出来たら、アピール合戦に巻き込まれる気がする。

 王家に皇族に公国と繋がりが得られるから、余計大変な事になりそうだ。


「「あう、ふぇ」」


 と、このタイミングで赤ちゃんがぐずり始めたので俺達はバルカス様の所をお暇して、今度はルイ様の所に移動する。


「うわあ、更にちっちゃいね」

「ちっちゃくて可愛いなあ」


 またもやベビーベッドを囲んで赤ちゃんを見ている子ども達。

 その中には、ウィリアム様にルーナちゃんも混じっていた。


「サトー、改めて感謝しよう。サトーの治療がなければ、二人とも危なかったぞ」

「私からも感謝します」

「サトーは王家の恩人ですわ」

「今では、ああやって寝ているなんて奇跡と思っておりますわ」

「俺はできる事をしただけですから。しかし、改めてこうして元気に育っている所をみてホッとしています」


 陛下と王妃様達から、改めて感謝された。

 俺としては、目の前の命を助けようと必死だったからな。


「サトー、私からも改めて感謝する。危うく二人を失う所だった」

「私からもお礼を申し上げます。私はともかくとして、何とかあの子を助けたいと思っておりました」

「ルイ様に奥様、頭を上げて下さい。こうして元気に育ってくれれば、いくらでもお手伝いしますよ」

「ありがとう、感謝する」

「やはりサトー様は聖女であられますわ」


 ルイ様と奥様からも感謝されてしまった。

 何はともあれ、赤ちゃんがすくすくと育ってくれればいいな。


「お兄ちゃん、名前決まったの?」

「フリードリヒだ」

「おお、かっこいい名前だね」

「はは、名前負けしないようにしないとな」


 エステルがルイ様に赤ちゃんの名前を聞いているが、確かにとてもかっこいい名前だ。

 今は小さいけど、大きく育ってほしいな。

 そんな事を思っていたら、ミケ達からお決まりの質問が飛んできた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃんの赤ちゃんっていつできるの?」

「それは少し先だね。いつできるかは分からないよ」

「ふーん、そうなんだ」


 さらっとミケの質問を流したけど、エステル達は顔が真っ赤になっている。

 流石にどうやって赤ちゃんができるか聞いてこなくてよかったぞ。


「どうせサトーの所も直ぐに赤ん坊ができるはずだ」

「そうだわね。いっぱい赤ちゃんが生まれるはずよ」

「皆可愛いから、生まれてくる赤ちゃんもきっと可愛いわね」

「赤ちゃんが沢山の屋敷も明るくていいわね」


 更に陛下も加わって話に乗ってきた。

 エステル達は更に顔が真っ赤になってきた。

 そんな中、フローラ様がぼそっと本音を漏らした。


「でも、エステルが教育できるか心配だわ。一緒になって遊びそうで」

「あー、マシューくんとかの反応を見ると否定できないですね……」

「お母さんにサトーも酷いよ!」


 実際には他の人がいるから大丈夫だと思うけど、念の為に気をつけようと心に誓ったのだった。

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