第三百六十話 新年
「新年おめでとう、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
新年になり、屋敷に皆で集まって新年会を始める。
王族のエステルとバスク子爵家のリン達以外は実家と呼べるものがないので、結局はワイワイしながら飲み食いする何時ものスタイル。
ドラコ達は実家はあるのだが、新年を祝う風習があまりないので結局はうちにいる。
「サトー、お父さんの所に行くのは午後でしょう?」
「そうだけど、何か予定あるのか?」
「何もないよ。だからのんびりだらだらするの」
「何なんだ?」
エステルがだらけモードになったのだが、これはいつもの事だと思っていた。
ところが一瞬にして状況が変化する。
エステルの従魔であるショコラが、エステルの母親であるフローラ様を連れてきたからだ。
「エステル、王家の新年の挨拶があるから来る様に言ったのに、何でここでごろごろしているの?」
「ショコラ、何でお母さん連れてきているのよ」
「私が事前に頼んでおいたんです。エステルが王城に来なければ私を連れてきてと」
「ショコラ! 私を裏切ったの!」
「......ピィ」
未だにピィと鳴くフクロウのショコラは、エステルの事を世話がやけるご主人だと思っているようだ。
プイっとそっぽを向いている。
というか、新年の挨拶って何だ?
「フローラ様、新年おめでとう御座います。王家の新年の挨拶があったのですか?」
「そうよ、歴代の王家の墓に行って新年の挨拶を行うのよ。この子ったら、寒いからって毎回難癖つけて参加を渋っているのよ。本当に誰に似たのだか」
わお、とっても大事な王家の行事じゃん。
エステルよ、何でさぼるんだよ。
因みにフローラ様、エステルは絶対に父親似です。
「ほら、エステルにとっては最後の挨拶になるのよ。直ぐに行くわよ」
「うう、絶対罰が待っている」
「当たり前だ、ここはスパっと気持ちを切り替えて行ってきなさい」
「はーい」
「ふふ、なんだかんだでサトーが言うと言う事を聞きますね。ではショコラ、王城へ運んでね」
「「「いってらっしゃーい」」」
こうしてエステルはフローラ様に首根っこを捕まれて、ショコラのワープで王城に向かって行った。
うん、今日中には絶対に帰ってこないな。
さて、気を取り直して宴会を再開しよう。
とはいえ、これではいつも通りなので新年の予定を確認しよう。
解説はリンとフローレンスです。
「先ず始めに、エステルとリンとフローレンスが学園を卒業か」
「まさか卒業が決まるよりも先に結婚が決まると思いませんでした」
「私もです。でも、最終学年は色々あって思い出になりました」
三月に最高学年組が卒業する。
とはいえ今までと殆ど変わらないのが救いだ。
「今年は入園組が一杯いるなあ」
「しかも全員優秀ですし、学園側も期待をしています」
大きく変わるのは学園入学組。
入学人数も多いので日中は一気に人が少なくなる。
小さい子ども達が寂しがらないか、少し不安があるな。
「で、その後に結婚式が二組と」
「オリガとガルフに、マリリとマルクですね」
「最初は身内だけの予定でしたが、参加希望の貴族が多いですね」
「貴族は知り合いだけに絞って参加してもらおう」
オリガとマリリさんは昨年打ち立てた功績が凄いので、新年の謁見で名誉貴族になる事が確定している。
なので、身内だけでやる事が出来なくなってしまったのだ。
この辺は要調整になるぞ。
「で、俺達の結婚式と」
「これは王都の教会で大々的にやる予定ですね。どうもかつてない規模らしいですよ」
「ほぼ全ての貴族に海外の王族が参加します。王族でもこの参加者はないらしいですよ」
「それでうちの屋敷では場所が足りないので、王城を借りる事になっているんだよな。なんてこった」
何故、俺の結婚式が王国史上最大規模で行われ無ければならないのだ。
といっても、王妃様たちが色々裏で動いているっぽいし、誰にも止められそうにもないぞ。
「リーフとシルは継続して軍属か」
「指導教官として昇進するらしいですよ。王都防衛戦でも鍛えた兵が活躍していますし」
「兵として実力があっても指導力は別ですからね」
しかし俺の従魔なのに、妖精のリーフとウルフのシルが昇進か。
特にリーフの評価が軍の中で高いらしいので、将来は妖精将軍ってなる可能性もあるぞ。
「チナさん達は学園の教員を継続ですね」
「評判がいいので、生徒に慕われています。優しい先生と専ら言われていますね」
「新年度は、新入生の担任に決定しているそうです。チナさんでないと、あのメンバーを抑えられないという判断らしいです」
普通の学園の先生にドラコ達を止めるのはきついよな。
二年、三年と学年が上がって学園に慣れれば学園の先生でも止められそうだけど、新入生の内はチナさんにドラコ達が暴れない様に抑止役も含めて頑張って貰わないと。
「その他のうちにいるメンバーは、ほぼ変わらずか」
「ヴィータさんの回復次第で動きはありますが、当面はリハビリですね」
「少なくとも春まではうちで療養です」
うちは小さい子が多いから、数年は変化はないだろう。
ヴィータに関しては教会で働く事を希望しているみたいだが、体の回復と必要な知識を覚えないといけないので、当分はうちで過ごす事になる。
とりあえず、確認するのはこの位か。
「バスク子爵家にお土産持っていきたいのだが、何が良いだろう?」
「でしたら、新しい生地があると、その、母が喜ぶと思います」
「あー、絶対に喜ぶね。色々服を作って貰ったから、お礼を込めて外国製の生地を差し入れしよう」
帝国や公国に行った際に買った生地があるから、うちで使う分を除いてサーシャさんにあげよう。
ついでだから、タラちゃんとポチのスパイダーシルクも分けてあげよう。
このお土産を持ってバスク子爵家に新年の挨拶に行った所、やはりというかサーシャさんは大喜びでお土産を受け取っていた。
これでウェディングドレスができると言っていたが、素材が素材なだけに国宝級のウェディングドレスが出来上がりそうだ。
余談だが、エステルは翌日の夕方にようやくうちに帰ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます