第三百四十一話 決勝戦

「お待たせしました。それでは決勝戦の開始です」

「「「うおー!」」」


 舞台の清掃も終わったので、いよいよ決勝戦の開始となる。

 ビューティーさんとシルク様が、完全武装で入ってきた。

 観客のテンションもかなり上がっている。

 

「圧倒的な強さで勝ち上がってきた二人を紹介します」

「「「おお」」」

「冒険者になって僅か数年でBランク冒険者に上り詰め、実は貴族のお嬢様でもあった逸材。剛腕ビューティーこと、ザンディ・フォン・ビューティー!」


 アルス様のお姉さんもノリノリで紹介している。

 ビューティーさんが手をあげて紹介に答えると、観客もヒューヒュー言っている。

 アルス様とビューティーさんの同級生も集まっているのか、野太い声援も聞こえてくる。


「続いては、可憐な少女に似合わずの圧倒的な武の才能。それもそのはず、あの武で有名なランドルフ家の血を引く者です。戦女神シルクこと、シルク・フォン・ランドルフ!」


 シルク様はペコリと挨拶をするが、観客からはどよめきが起きている。

 ランドルフ領は隣の領だしあの惨状はブルーノ侯爵領にも伝わっている。

 まさかランドルフ家の生き残りがいるなんて、思ってもいないのだろう。


「試合のルールに変更はなし。両者とも健闘を祈る」


 この試合の審判は、ドラコの母親が務める。

 俺も魔法障壁を厚めに張っておこう。


「では、試合開始だ!」


 バキ!


「「「おお!」」」


 お互いの右ストレートが交錯した。

 一瞬二人の動きが止まり、観客からどよめきが起こった。

 暫くは格闘戦が続いている。

 ビューティーさんは力押しだけでなく、技術もある。

 シルク様はカウンターを主体にして、ビューティーさんを迎え撃っている。

 そして、お互いが少し離れると、剣を抜いて構えた。


「ここからが本当の勝負ですね」

「はい、さっきまでのはウォーミングアップを兼ねた様子見かと」

「あんなに楽しそうなビューティーは、学園以来だな」


 ルキアさんもアルス様も、ここからが本番だと感じている。

 近くにいる王妃様達や竜王妃様達もうなづいている。


「すげー」

「これが達人同士の戦いか」


 両者ともに、身体強化を使っての剣撃に格闘戦を繰り広げている。

 剣の当たる音が辺りに響いている。


「中々凄まじい試合だのう」

「純粋な格闘術ではなく、両方とも冒険者としての戦闘術ですね」

「どんな形でも良いから、相手を倒す。そんな戦い方ですわ」


 ビアンカ殿下とウィル様にルキアさんが感想をこぼしているが、確かに綺麗な形ではない。

 しかし、その分激しい撃ち合いになっている。


「でも、このままではシルクの負け」


 レイアが冷静に状況を分析しているが、確かにビューティーさんがシルク様を押し始めた。

 いくら武の天才とはいえ、シルク様は格闘技を習い始めてまだ半年。

 ビューティーさんとの経験の差が、徐々に出てきている。


「はあー!」

「ぐっ」


 ビューティーさんの左ストレートがシルク様を捉えた

 シルク様は、この試合で初めて完全な防御体制に入った。

 その瞬間を、ビューティーさんは見逃さなかった。


「えやー!」

「「「あっ」」」


 ビューティーさんの強烈な回し蹴りが、シルク様に炸裂した。

 シルク様は何とか踏ん張ろうとしたが、そのまま場外に吹き飛ばされてしまった。

 ミケとララとリリが、声をあげてシルク様の所に駆け寄っていった。


「そこまで、勝者ビューティー」

「「「うおー!」」」


 ドラコの母親が勝者を告げると、観客からは今日一番の声援が上がった。

 シルク様も直ぐに立ち上がって、ミケ達に支えられながら舞台の中央へと歩み寄った。


「完敗です」

「魔法戦だったら確実に負けたがな」

「それでも、経験の差が出ました」

「まあ、これでも格闘技一本でBランクになったからな。また機会があったらやろう」

「はい」


 シルク様とビューティーさんは、互いの健闘を讃えて握手をしていた。


「激戦を戦った二人に、今一度大きな拍手をお願いします」


 パチパチパチパチ。


 観客からも二人に向けて拍手が飛んでいた。

 そんな中、シルク様とビューティーさんは控え室に下がっていった。


 さて、とても盛り上がっているけど、この後が本当のメインイベントになりそうだ。

 無事に終わるか、とても心配だ。

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