第三百三十五話 格闘技大会の準備

「サトーさん、面倒を見てもらってすみません」

「色々と買ってきましたので、良かったら食べてください」

「有難う御座います。二人ともいい子でしたよ」


 ヘレーネ様とカロリーナさんが戻ってきたので、ノア君とカーター君を戻した。

 二人は一時間位寝ていたが、ちょうどお姉さんが来たタイミングで起きてくれた。

 ちなみに二人を起こした陛下は、王妃様達に連れて行かれて姿を見ていない。

 きっと無事だと信じよう。


 貰った出店の品物を食べつつ、そろそろ格闘技大会の準備が始まるので、屋敷前の広場に移動。

 特設会場が用意されていて、観客席とは柵で区切られている。

 舞台は、だいたい十メートル四方の大きさで結構広い。

 そして、既に舞台を見に来ている人が一人。


「ビューティーさん、早いですね」

「戦う舞台は早めにチェックしないと。特に今回は決勝が楽しみだ」

「ハハハ、今年九歳になる子どもなので御手柔らかに」

「多分それは無理だな。あれだけの手練とは中々やる機会がないからな」


 舞台の硬さや滑り具合などをチェックしているビューティーさん。

 今回シルク様はただのシルクとして登録してあるが、ビューティーさんは直ぐに誰だかわかったようだ。

 とてもワクワクが止まらないようで、俺に向けてニヤッと笑ってきた。

 

「張り切るのは良いが、周りに被害を出すなよ」

「そうですわ、せっかくのお祭りですから」


 と、ここで現れたのがアルス様にルキアさん。

 ちゃんとビューティーさんに注意をしている。


「それなら大丈夫だろう。サトーに魔法障壁を張ってもらえば。聖女様バリアで安心って事だ」

「はあ、それしかないな。エキシビションも危ない可能性はある」

「サトー様。ビューティーさんとシルク様の試合と、エキシビションで魔法障壁を張って頂けますか?」

「念の為に、予選からやっておきます。多分二人とも予選は圧勝だとおもいますが、何かあったら困りますので」


 シルク様はともかく、ビューティーさんの場合は相手を観客席まで吹き飛ばす可能性もある。

 魔法障壁は絶対に必要だ。


「ところで観客席の近くでスラタロウとバハムートが屋台をやっていますが、誰か指示ありました?」

「あれは、さっき念の為に警備を兼ねてお願いしたんです」

「流石に、飛竜を相手に喧嘩は売らないだろう」


 観客席の近くで、スラタロウとスライム軍団があめ細工の屋台を開いていた。

 接客しているのが、飛竜のバハムートってのも凄いな。

 ちゃんと、出来たてのあめ細工を手渡ししている。

 そしてスラタロウはあめ細工が得意なので、リクエストを受けて即興で作っている。

 一番人気が、接客しているバハムートだ。

 そりゃ、子どもはいえ飛竜だからな。


「あ、窃盗。直ぐに捕まった」

「うひょー、えげつない罰ゲームだね」


 窃盗がいたのだが、スラタロウは直ぐにショートスタンで麻痺させた。

 そして、バハムートが窃盗を捕まえてちょっとした空の旅に連れて行った。

 うん、急降下すれば窃盗だって悲鳴を上げるよね。

 その光景を、ビューティーさんも思わず苦笑してみている。

 そのままバハムートは窃盗を兵に引き渡すと、何故か見ていた観客から肉の串焼きを奢って貰っていた。

 子ども達から囲まれてキャーキャー言われているし、ちょっとしたヒーローになっている。

 

「確かに、あれを見ると悪い事はできないですね」


 ものすごい抑止力になりそうなので、あそこはそのままにして舞台の準備の様子を眺めていた。

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