第三百二十五話 ライリーの対応
「それでは行ってきます」
「エステル様、申し訳ありません」
「大丈夫だよ。チナ先生は学園だもんね」
「うん!」
「ライリー、良い子にするんですよ」
「はーい」
ライリーがいた孤児院の人の体調が少し良くなったので、エステルとリンが付き添いで行く事になった。
あいにくチナさんは学園があるし、俺も仕事がある。
リンがいれば大丈夫だと思って、王城に向かった。
「これがアンケートの結果ですか。分かりやすくていいですね」
「全員人神教国に帰りたくないとはな」
「しかも人神教なんか信じてないって」
元人神教国の人に今後の事のアンケートをとったら、とてもわかり易い回答になった。
こうなると、当初案にもあった新しい開拓地に移住ってのが現実的な案になりそうだ。
といっても、肝心の元人神教国の人の栄養失調が完全に良くなった訳ではないので、当面は王都で養生しながら暮らして貰わないと。
「さてさてお次はっと。あれ? 宰相、この人事は決定ですか?」
「決定だ。どうも学園の先生に産休が二人出たのでな」
「臨時だけど先生」
チナさんに続いて、マールさんとローゼさんも学園の先生に臨時でなるらしい。
しかも武術担当かと思ったら、マールさんが国語でローゼさんが数学というのが面白い。
子ども達にもうちで勉強を教えているし、採用テストでも全く問題なかったらしい。
正式に決まったら、皆でお祝いしよう。
「お次はと。おっ、とうとう未開地に先遣隊が行くんですね」
「とはいっても、小さな港町があるからそこを拠点にする。開発地の中心にもなるぞ」
「ノースランド公爵領にも近いから便利」
「確かに、物資の補充も直ぐにできますね」
今は村とノースランド公爵領を結ぶ道がなく、現地には海路でしかいけないので街道を整備するのが先決だ。
この辺は、他の街道整備で得たノウハウを使うことにしよう。
温泉とかあったら、開拓班のテンション上がりそうだ。
「でもって、お次が……あれ? 軍部闘技場の使用申請書?」
「ああ、それは却下だ。何でも、決闘で使用したいらしい」
「今は決闘も御法度」
「凄い申請を出してきますね」
たまに凄い書類もあるが、それは問答無用ではじいていく。
その後も、色々仕事をこなしていく。
収穫に関する書類も多くなってきた。
そして、今日の仕事も無事終了。
うちに帰って、早速エステルとリンにライリーの話を聞く事に。
「どうも、他の孤児と共に教会の孤児院で仕事するみたい」
「なので、ライリーの事を宜しくお願いしますって言ってました」
ある程度予想がついた回答だった。
孤児になった子が多いので、教会の施設で面倒をみることが決定していた。
そして、既に仕事を経験しているので、そのまま就職って事だ。
後は、ライリーをうちでみる手続きをすれば大丈夫だな。
ライリーは、帰ってきたチナさんと今日の事を話しているらしい。
すっかり仲良くなったな。
「そういえば、ブルーノ侯爵領の収穫祭が二週間後に決まったぞ」
「お、決定したんだ」
「久々にゆっくりできますね」
今年はルキアさんの体制になって初めての収穫祭だし、結婚式も無事に終わったので少し大掛かりになるそうだ。
「手伝いとかはいいの?」
「街の人や侍従が張り切っているらしいよ」
「それなら、下手に手出しはしないほうがいいですね」
俺は、この時まで何も起こらないと思っていた。
まさかの爆弾が降ってきた。
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