第三百十六話 研究所

「改めて、寺院に入る前に皆さん綺麗になりましょう」


 血まみれのままでは俺が怖いので、直ぐに生活魔法で綺麗にしていく。

 うん、これで大丈夫。

 では、改めて寺院の前に到着。


「すっごいデカいな」

「無駄の極みですね」

「真っ白ですね」


 寺院はかなり大きい。

 高さは五階建て位はあり、幅も百メートルはゆうにある。

 前世でいうキリスト教の教会と、イスラム教のモスクが合体したような、よくわからない作りの建物だ。

 そう言えば、前世でも国民の貧しさを顧みずにとんでもなく大きい建物を作った所もあったな。


 階段を上がってこれまた大きな扉の前に着くが、扉が閉まっていて全く開かない。


「ミケちゃん、やっちゃって」

「よーし、行くよ! ドーン!」


 こういう時は物理で破壊する一択だと、エステルがミケに頼んだ。

 ミケはバトルハンマーを振り回し、扉をぶち破った。


「さて、中に入るか」


 ぶち破かれたドアから中に入ると、またもや沢山の人の歓迎を受けた。


「人神様に逆らうものだな」

「ここで大人しく殺されるがいい」

「人神教に栄光あれ!」


 三十人を越える人が、刀を抜いて襲いかかってきた。

 しかし、全く訓練を受けていないのか下手くそな剣技だったので、あっという間に襲撃者は拘束された。

 その間、ビアンカ殿下は建物の案内図を見ていた。

 正直な所、建物が広すぎて全貌が全く分からない。

 と、同時に一つ感じていた事をビアンカ殿下に話した。

 

「ビアンカ殿下、流石に人神教の本拠地だけあって淀みが酷いです。建物全体を浄化してもいいですか?」

「構わんというか、この建物全部をか?」

「はい」

「ハハハ、相変わらずでたらめな魔力じゃのう」


 ビアンカ殿下に呆れられたが、一気に建物を浄化していく。

 ついでに生活魔法で綺麗にしていく。

 

「殆ど淀みは消えたな」

「はい、これで少し楽になりました」


 空気も良くなったところで、再度案内図を確認。

 成程、でっかい中央塔の最上階が人神教の教祖の部屋と言うわけか。

 となると、出来れば早く落としたいがもう一箇所気になる場所がある。


「ビアンカ殿下、研究所がありますね」

「直ぐ近くじゃ。教祖の部屋に行く前に押さえるとするか」


 右塔に研究所があるらしい。

 散々嫌な目にあった魔獣を作る本拠地だから、ここを押さえればかなりのダメージになるはず。


 という事で、皆で研究所に向かっていく。

 道中何人もの刃物を持った人物に襲われるが、全てタラちゃんやポチにフランソワによって拘束されていく。

 拘束した人物はそのまま放置して、目当ての研究所に到着。

 そして、研究所付近はまたもや淀みが酷くなった気がする。


「ビアンカ殿下、もう一回浄化します」

「この分だと、教祖の部屋はとんでもない事になってそうじゃな」


 あんまり当たってほしくない予言を聞きつつ、研究所の前の扉から念入りに浄化を行う。

 中からギャーとか聞こえてくるけど、もう何も気にしないで浄化をする。


「ふう、だいぶ良くなりました」

「では、入るとするか」


 研究所の扉は施錠されてなく、そのまま開いたので皆で入っていく。

 

「いやあー!」

「くそ、何故か薬の成分が飛んでいるぞ」


 あ、白衣を着た男達が女性をベットに拘束して何かを注射している。

 

「何をしているんだよ」

「この外道が!」

「だ、だれグガア」

「ブオッ」


 すぐさまドラコとルシアの母親が、白衣の男を吹き飛ばす。

 他にも研究員らしき男がいたので、他のメンバーで拘束した。


「ぐあ、ああ、ぎゃあ!」

「くそ、何かを注射しやがったよ」


 苦しんでいる女性を、急いで治療する。

 暴れているので、拘束はそのままにする。

 段々と落ち着いてきたので、拘束を解いて飲み物を渡した。

 失禁もしていたので、生活魔法で体を綺麗にする。

 

「ふう、どなたか知りませんが助かりました。危うく殺されるところでした」


 女性はふらふらとしながらも、立ち上がってきた。

 女性が殺されると言っているのは、研究室に檻があって中には事切れた男女が複数入っていたからだ。

 どうやら助かったのは、この女性一人だけだ。

 

「ここは間違いなく危険じゃ」

「全ての物を回収します」


 この部屋にあるものを、全てアイテムボックスに回収する。

 薬やら本やら、何でもかんでも入れていく。

 

「ふう、綺麗になりましたね」


 研究員は、綺麗サッパリ何もなくなった。

 亡くなった人は、ビアンカ殿下が氷魔法で冷凍してシーツに包んでおく。

 後は残った人か。


「一旦、全員を王城に連れていきます」

「それが良いじゃろう。女性は、王城の医務室で経過観察じゃな」


 拘束した研究員は、再び王城の収容所にワープして収容する。

 そして、もう一度研究所にワープして今度は女性を連れてくる。


「サトー、その女性はどうした?」

「人神教国の研究所で、何かの薬物を投与されていたんです。かなり危ない状態でした」

「なんと酷いことを。直ぐに医務室へ運ぶのだ」

「「はっ!」」


 王妃様がちょうど現れて、事情を話すと直ぐに医務室に連れて行ってくれた。

 そして、王妃様の後をシルク様やドラコにララ達も付いてきた。

 スラタロウやバハムートに乗ったホワイトもいる。

 

「サトー、ドラコ達は休養も十分だ。戦力になるだろう」

「有難う御座います。流石に本拠地は人が多いので」


 そう言って、王妃様は再び収容所に向かっていった。

 白衣を着た研究員を見ていたので、再度尋問を行うのだろう。

 俺は、ドラコ達を連れて研究所に戻った。


「お、メンバーが増えたな」

「ここからは、ララも頑張るよ!」

「レイアも頑張るよ!」


 ララとリリにシルク様。

 ドラコとシラユキにルシア。

 スラタロウにバハムートに乗ったホワイト。

 一気に主力級が合流し、戦力もアップした。

 このまま一気に、教祖の部屋まで攻略しよう。

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