第二百四十二話 ペテン師になりきれていない内務大臣

「内務大臣よ。その姿はどうした?」

「陛下。私には人間の体は不都合でしたので、こうして新しい体を手に入れたのですよ。陛下も如何ですか?」

「そのような体には、一切興味が無い」

「あら残念。とても良い体なのですよ。くふふふ」


 内務大臣と思わしき魔獣は、まるでピエロの様な喋り方だ。

 ピエロというか、ペテン師の喋り方だな。

 ニヤニヤしながら皇帝陛下に魔獣の体を勧めるあたり、思考が既にまともではない。


「帝国を中心とした世界統一国家を作り上げる。以前にも陛下に申し上げたでは無いですか」

「くどい、予は詭弁は嫌いだ」

「詭弁ではないですよ。魔獣の力と人神教国の力があれば、ですが」

「それを詭弁というのだ。民の幸福などない国家などあり得ぬ」

 

 人神教国の世界統一計画は、未だに進行中か。

 王国での野望が打ち砕かれたので、帝国に矛先を向けてきたわけか。

 人神教国の考えで制圧すればいいので、他人の幸福や不幸などは一切関係ないのだろう。


「まあ、そろそろ皇族の皆様方にはご退場して頂く予定でしたが、皆様方中々にしぶとい。まるでゴキブリの様ですね」

「ははは、中々に上手い表現だな。予もこのしぶとさにはビックリだ」

「くっ、死にぞこないが何を言う」


 中々死ななかった皇族に対してかなりの侮辱をしているが、完全に皇帝陛下の方が一枚上手だった。

 段々と、内務大臣の表情に焦りが見えてきた。


「それにそなたは気がついておらんのか。そちの息子を除いて、既に魔獣が倒されていることを」

「はあ?」


 内務大臣が長々と喋っていて暇だったので、暇になったミケ達が玉座の間の周りにいた魔獣を倒していた。

 しかし、それにも気が付かないとは。

 魔獣化の薬の影響で、完全に頭がおかしくなっているのだろう。

 皇帝陛下が指摘するまで、全く気が付かなかった。


「ふふふ、あはははは。これは中々の傑作ですね」

「本当じゃよ。これで世界征服を目指していたとは」

「いやはやなんとも。そこで皇帝陛下に一つ提案があります。私の息子とソフィー皇女が結婚し、生まれた子どもに世界征服をさせる。素晴らしいアイデアではありませんか」


 大げさに何を言うかと思ったら、息子とソフィー皇女を婚姻させ子どもで世界征服を目指すという。

 どこかで聞いたような馬鹿な話だった。

 両手を広げ、まさにナイスアイデアと言わんばかりにアピールしてくる。

 そんな中、ソフィー皇女が一歩二歩と玉座に近づいていった。

 それを見た内務大臣はニヤニヤしながら、息子に前に行くように指示をした。


「おやおや、娘様の方が色々と理解してらっしゃいますね。ほら、優しく相手してやりなさいな」

「ぐへぐへ、ハァ!」


 息子は息子で、まともな精神状態ではなくなっていた。

 まともな言葉も話さずに、ヨダレを垂らしながら近づいてきた。

 うん、オークの方がまだ品性があるな。

 そして、やはり馬鹿の息子は馬鹿であった。

 

「ぐぼ……」

「何!」

「はあ、余りにも滑稽だな」


 そう、ソフィー皇女の抑えきれない殺気に全く気がついていなかったのだから。

 聖魔法を使った身体強化が使えるようになり。ソフィー皇女の戦闘力は格段に上がっていた。

 音もなく首をはねられた息子を見ることなく、ソフィー皇女はこちらに戻ってきた。

 その様子をみた皇帝陛下は、余りの馬鹿さ加減に呆れていた。

 そして、音を出すこともなく崩れ落ちた息子の姿を見て、とうとう内務大臣が怒り狂いだした。

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