第二百四十一話 玉座の間の前での攻防
「陛下、ご無事で」
「陛下!」
部屋を出ると、何人かの豪華な服を着た人達が駆け寄ってきた。
城の自室に隔離された閣僚達だという。
陛下に駆け寄り、無事であることに安堵をしている。
しかし何か変だ。
明らかに、怪しい匂いを漂わせている人物がいる。
「がっ」
「そのナイフは何だ?」
俺はちらりと見えたナイフを持った奴を捕まえようとしたが、一歩早く白龍王が取り押さえていた。
「外務大臣!」
「何ということを」
成程、内務大臣と繋がっていた大臣か。
皇帝陛下を直接殺害しようとしたんだな。
外務大臣は、あっという間に兵によって拘束されていく。
「直ぐに投獄せよ」
「「は!」」
皇帝陛下が兵に指示を出し、外務大臣は連れて行かれた。
観念したのか、外務大臣は項垂れたまま何も話さずに連行された。
その後も何人かの兵がこちらに合流しようとしたが、皇帝陛下を殺害しようとするものは直ぐに摘発されていった。
「悲しいものよ。ここまで人々の心が離れてしまったとは」
「お父様、諦めるにはまだ早いです。幾らでもやり直しができます」
「陛下、我々もついております。一緒にこの国を再建しましょう」
次々に捕縛されていく兵を見つめて皇帝陛下が弱気になってしまったが、ソフィー皇女やついてきた閣僚が陛下を励ましていた。
まだ国が滅びたわけではないので、再建可能だと俺も思っている。
「お、サトーも着たか」
「ビアンカ殿下、巻き込んでしまって申し訳ない」
「妾が自ら行くといったのだ。サトーが気にすることはないぞ」
ビアンカ殿下が指揮する所まで追いついた。
どうやらこの先が玉座の間らしい。
「皇帝陛下、このような格好で失礼する」
「いや、有能と名高きビアンカ王女殿下がいるとなると、予も安心する事ができる」
「畏れ多い事じゃ」
ビアンカ殿下の事は帝国にも知れ渡っていたのか。
相当有能だと、皇帝陛下も高く評価していた。
「陛下、地下牢に幽閉されておりました騎士団長と軍務大臣を救出しました」
「よくやった。二人も無事でなりよりだ」
「この度の不祥事を止めることができず、騎士団長として断腸の思いです」
「兵が陛下を殺害しようとしたと聞き、誠に遺憾です」
「罪は後で幾らでも問うことが出来る。今は城と城下の制圧を第一に考えよ」
「「はっ」」
兵が、地下牢に幽閉されていた人物を連れてきた。
騎士団長と軍務大臣が早速動き出そうとした時、白龍王が二人に声をかけた。
「上空にいる白龍の一部も協力させよう。悪人を見抜く力を使うが良い」
「白龍王様、ご協力頂き感謝申し上げます」
白龍が協力するとなれば、王都も一気に制圧出来る。
騎士団長と軍務大臣は、白龍王に感謝を述べて走り出した。
「さて、これはどうしようかのう」
「次から次に、魔獣が発生していますね」
ビアンカ殿下も思わず考え込んでいる。
俺達の実力なら問題にならない相手なのだが、如何せん数が多すぎる。
倒しても何故か次々に魔獣が発生してくるので、中々玉座の間に近づけない。
物は試しでやってみよう。
「ビアンカ殿下、一旦この城全体を浄化してみます」
「何もやらぬより、先ずはやってみるか」
ということで、魔力を溜めて一気に城を浄化していく。
「おお!」
「何という魔力だろう」
「これが噂に名高き聖女様の力なのか」
後ろにいる閣僚がビックリするが、そんな事は気にしてられない。
特に目の前の玉座の間がめちゃくちゃ淀んでいるので、念入りに浄化していく。
すると、魔獣の発生がだいぶ抑えられてきた。
「今じゃ、一気に押し込め!」
「「「うおー!」」」
その瞬間を逃さず、ビアンカ殿下が指示をし、うちのメンバーが一気に切り込んでいく。
魔獣の動きも悪くなり、あっという間に玉座の間の前まで辿り着いた。
「うーん、開かないよ」
「中から鍵をかけられているのかな?」
玉座の間の扉は固く閉ざされていて、開くことができない。
ミケやエステルの馬鹿力でも開かないとなると、破るしかないのかもしれない。
「予が許可する。扉を破るのだ」
「はーい、いくよ!」
皇帝陛下が許可を出したので、ミケがバトルハンマーを振り回して扉をぶち開けた。
開いた扉から一斉になだれ込む。
「くくく。陛下、ご無事でなりよりです」
玉座の間には沢山の魔獣がおり、玉座には内務大臣と思わしき人物が座っていた。
既に内務大臣は人間の姿を捨てており、周りとは一回り大きな魔獣となっていた。
ニヤニヤ笑いながら、全く思っていないセリフを皇帝陛下に投げかけていた。
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