第二百三十八話 白龍王の山への道のり四日目
今日は白龍王の山での山登り。
といっても冒険者スタイルは変わらず、念の為に上着と雨具を持っていく。
履いていく靴も、滑りにくいものにした。
「えーっと、何々? 初心者にも登りやすく、見晴らしの良い山頂からの景色は抜群っと」
「確かに、難易度は高くない山ですね」
「前に、近衛部隊で行軍した山は険しかったからな」
パンフレットを購入して、山登りスタート。
片道三時間もあれば、登りきれる山だという。
山道っぽい道が続くけど、整備されていて所々に休憩所があるという。
山頂には小さな山小屋もあって、簡単な食事も可能。
なので、普段は白龍王信仰もあって沢山の登山客が訪れるという。
だけど、今は誰もすれ違わないし、麓にも登山客と思われる人はいなかった。
暫くは、木々が周りを生い茂る場所を歩いていく。
普段歩くことに慣れていないソフィー皇女の為に、途中で休みながら進んでいく。
「お兄ちゃん、見てみて!」
「沢山見つけたな」
元々元気が有り余っているミケとドラコ達は、休憩の度にポチをつれて薬草取りをしていた。
珍しい山菜も取ったというので、スラタロウに料理して貰おう。
「三匹もいたんですね」
「ええ、懐かれてしまいました」
岩肌に腰掛けていたソフィー皇女の近くに、小さなサルが集まっていた。
差し出された果物を、小さな手を器用に使いながら食べている。
名前はマウンテンマーモセットだと冒険者ハンドブックに書いてあり、フォレストマーモセットと生息域が違うだけで基本的には同じ生態だという。
よく見ると、ベリルの背中にも一匹乗っているな。
前世ではうりぼうの背中にニホンザルの子どもが乗っていた事があったけど、それに近い光景だ。
段々と大きくなってきたベリルなら、小さいマウンテンマーモセットなんて余裕で乗せられるだろう。
マウンテンマーモセットはこのままついてくる気満々みたいなので、このまま一緒に行くことにする。
「ふふふ」
「この子も元気ね」
「楽しそうにしていますね」
皆の間を、ぴょんぴょん跳ねながら遊んでいるマウンテンマーモセット達。
ベリルの背中に乗っている一匹は、何故かベリルの背中に乗ったまま移動している。
そんなサル達の様子を、楽しそうに見ている女性陣。
山だから登山中は無言になりがちだけど、サルのお陰で和気あいあいと登っていける。
「うわあ、遠くまで見える!」
登山開始から二時間もすれば、樹林帯を抜けて低い木と岩が広がる様になってきた。
そうなると、遠くまで見渡せるようになり、帝国の街並みが見えてくる。
同時に山頂もハッキリと見えてきたので、皆のやる気も再度出てきた。
ミケが鼻歌を歌いながら先頭を行き、その後をベリルと背中に乗っているフォレストマーモセットが続いていく。
休み休みで行ったので、ソフィー皇女も体力は大丈夫の様だ。
「「「「ついた!」」」」
「いい景色ね」
「本当ですね」
登山開始から丁度三時間、無事に山頂に到着。
山頂から広がる景色に、一同感動している。
天気が良くて、遠くの景色までよく見える。
この景色にこの登山難易度なら、確かに多くの観光客が訪れるはずだ。
そして、後ろを振り返れば山小屋が建っている。
ロッジ白龍山と看板が出ている山小屋に、皆で入っていった。
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