第二百三十九話 白龍軍団出撃

「「「「こんにちは!」」」」

「いらっしゃい!」


 ロッジ白龍山に皆で入ると、おばさんが迎えてくれた。

 直ぐに席に勧めてくれて、温かいお茶を出してくれた。

 あー、疲れた体に染み渡るよ。

 皆もほっと一息ついている。

 と、ここでドラコ達がお茶を出してくれたおばさんを凝視していた。


「あの人、龍族だよ」

「間違いない」

「角が出ていないけど、確かにそうだ」


 え? さっきのおばさんが龍族?

 普通の人にしか見えなかったぞ。

 今度は別のおばさんが、メニューを持ってきてくれた。

 この人は角がでているから、龍族で間違いなさそうだ。


「はい、メニューですよ。あれ? もしかしてドラコにシラユキ?」

「あれれ?」

「え、おばあちゃん?」

「やっぱり二人だったのね! よくここまで登ってきたわね」


 メニューを持ってきてくれたおばさんは、ドラコとシラユキのおばあちゃんだった。

 二人もまさかこんなところで祖母に再会できるとは思ってもなく、かなりビックリしていた。

 対してドラコとシラユキのおばあさんは、のほほんとしていてあらあらっていった感じで二人と喋っていた。


「おーい、ばあさんや。何かあったかい?」

「「おじいちゃん!」」

「おやまあ、ドラコにシラユキか。おじいちゃんビックリしたぞ。ははは」


 そこに厨房から、一人の男性が顔を出してきた。

 どうもこの人が、ドラコとシラユキの祖父の様だ。

 好々爺って感じのおじいちゃんだ。

 あれ? 確か二人の祖父母は白龍王の所に遊びに行っているはず。

 ということは、もしかして今厨房にいるご夫婦がそうなのか?

 シラユキが代表して聞いてくれた。


「おじいちゃん。もしかして、奥の厨房にいる方が白龍王様?」

「そうだ。お前らも龍族だから感覚で分かるのだな」


 探していた白龍王があっさりと見つかった。

 というか、山小屋の主人で普通に料理作っているぞ。


「はい、おまたせ。ぜんざい五つね」

「わーい!」


 そしてミケにドラコ達にエステルよ。

 何しれっと注文しているんですか。

 諦めて俺達もぜんざいを注文した。


「おばあちゃん、食べ終わったら白龍王様とお話してもいいかな?」

「全然大丈夫だよ。最近はお客さんも殆ど来ていないから、余裕があるの」


 うん、この分だと下界で起きている事を知らなさそうだ。

 シラユキが話をしていいかと聞いても、暇だからと答えるあたり間違いないだろう。

 ちなみにぜんざいは登山の疲れもあったのか、とっても美味しかった。

 ミケとエステルとドラコは当たり前の様におかわりもしていたが、気持ちはよくわかる。

 

 さて、一息つけたしお手洗いも済ませたので本題に入ろう。

 ドラコとシラユキのおばあさんに、白龍王夫妻を連れてきて貰った。


「何だって、孫のドラコちゃんにシラユキちゃんがわざわざ来てくれたのか」

「遠い所から、わざわざありがとうね」


 話を聞いたら、あっさりと白龍王夫妻だと話してくれた。

 知り合いのおじいさんおばあさんの様に、ドラコとシラユキの頭を撫でていた。


「ルシアちゃんもわざわざありがとうね」

「いえ、ぜんざいとっても美味しかったです」

「あら、ありがとうね。実は登山客にも好評なの」


 ルシアにもニコニコと話してくれるあたり、とってもいいおばさんだ。


「そっか、少し見ないうちに大きくなったな。昔あった時は赤ちゃんだったから、ビックリしたぞ」

「あ、はい。有難うございます」

「帝国の皇族は白龍一族の血を引いている。故に儂にとっても孫みたいなもんだよ」


 そして、白龍王もニコニコしながらソフィー皇女の頭を撫でていた。

 何とソフィー皇女が赤ちゃんの時に、城で会った事があるらしい。

 それにはソフィー皇女もビックリしていた。

 皆さん懐かしんでいる所悪いですけど、そろそろ本題に移らせて頂きます。


「白龍王様にドラコとシラユキのおじいさん。最近登山客が少ないと思いませんか?」

「そうじゃな、ここ一ヶ月位めっきりと少なくなったな」

「儂等は買い出しのときにしか下界におりんからな。長いと半年は山にこもるぞ」

「そうなんですか。実は……」


 あ、やっぱりそうだった。

 半年も山にいれば、下界の事なんてわからないだろうな。

 俺は、現在下界で起きている事を話した。

 人神教国の事、内務大臣の事、皇帝と王子二人が毒に冒されている事、ソフィー皇女とオーウェン皇子とベラ皇女が命がけで王国に逃げてきた事、ソフィー皇女が白龍王に助けを求めている事。

 ついでにシラユキも人神教国に襲われて、命が危なかった事を付け加えた。

 俺が話し終えると、目の前の白龍王とドラコとシラユキのおじいさんは、怒りからなのかぷるぷる震えていた。


「許せーん! 帝国にそんなちょっかいを出すやつなんて、吹き飛ばしてやる!」

「儂のかわいいシラユキちゃんに毒だなんて。ギッタギタにしてやるわい!」


 あ、怒りの限界を突破した様だ。

 怒りの炎でメラメラしている。

 そりゃ関係者に実の孫が襲われたとなれば、怒るのも無理はないだろうな。

 よく見ると、おばあさん達も相当怒っているようだ。


「ばあさんや、麓に一度いこう」

「ああ、皆にも知らせないとね」


 白龍王夫妻がそういったので、山小屋の戸締まりをして皆で麓の街にワープした。


「「「何だって?」」」


 直ぐに集会場に人が集まったので、再度俺が説明した。

 普段白龍一族は、このあたりの観光を生業として暮らしているという。

 とっても穏やかで人当たりの良い一族なのだが、まさか毒まで使われているとは思っていなかった様だ。

 皆一様に、内務大臣と人神教国のやっている事に怒っていた。


「儂はこの後、この子らを城まで乗せていく。皆には牽制も含めてサポートしてもらいたい」

「「「おー!」」」


 ということで、外に出ると皆一斉に龍に変身した。

 俺達は白龍王夫妻とドラコとシラユキの祖父母の背中に、それぞれ分かれて乗っていく。

 準備が整った所で、百頭を超える龍が一斉に王都に向かって飛び立った。

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