第二百二十四話 料理人スラタロウ

 怪我をして運ばれてきた人は、船員は診療所へ、ソフィー皇女と双子は迎賓館に運ばれた。

 屋敷からホワイトを呼び寄せて、ララとリリと共に診療所での治療を頼んだ。

 俺はソフィー皇女と双子の治療をするが、双子は直ぐに気がついたので軽い治療で済んだ。

 

「う、うーん。ここは?」

「「お姉様!」」


 幸いにも頭の裂傷と打撲だったので、治療をすると直ぐにソフィー皇女も目を覚ました。

 目を覚ました時は少し混乱していた様子だったが、双子が泣きながら抱きついてくると直ぐに微笑んで二人を抱きしめていた。


「ソフィー、良かった。目を覚まして」

「お久しぶりです、エステル王女。こんな姿で申し訳ありません」

「いいのよ、あんな事があったばかりなんだから。無事で良かった」


 エステルも、ソフィー皇女が無事でホッとしている。

 そして、話は必然的に双子に。


「この双子ちゃんが、昔話しをしていた子?」

「そうです。以前留学した際は、まだ母のお腹に入っていた子ですよ。さあ、二人共ご挨拶をして」

「……オーウェンです」

「……ベラです」

「あら、ちゃんとご挨拶ができて偉いね!」


 エステルよ、お前の言動はおばちゃんか!

 もじもじしながら挨拶をした双子の頭を、エステルはグリグリ撫でている。

 年齢は三歳で、マシュー君達と一緒か。

 髪の毛はピンク色で、ソフィー皇女そっくりだ。


「ソフィー皇女、お久しぶりです」

「ご無事でなりよりです」

「リンさん、フローレンスさん。ご心配をおかけしました」


 ソフィー皇女は、リンとフローレンスの名前も覚えていた。

 お互いに、にこやかに挨拶をしている。

 前回の留学中に、良い関係をむすべていたんだな。


「エステル王女、こちらの男性は?」

「ソフィー皇女、ご紹介が遅くなり申し訳ございません。サトーと申します。ライズの姓と伯爵位を仰せつかっております」

「これはご丁寧に。帝国第四皇女のソフィーと申しますわ」

「ソフィーの治療はサトーがしたんだよ。そして、私とリンちゃんとフローレンスちゃんの婚約者でもあるの」

「そうでしたか。治療をして頂き有難うございます」


 エステルよ、ここで婚約者の事を説明しなくてもいいのでは?

 流石にソフィー皇女も驚いていたぞ。

 

 コンコン。


「入るぞ」


 陛下と王妃様達が、部屋に入っていた。

 皇女が襲撃を受けたので、ショコラに頼んで迎えに行ってもらった。

 しかし陛下よ、いくらなんでもこちらが返事をしてから中に入ってくれ。

 ソフィー皇女が着替え中だったら、国際問題になりかねないぞ。

 ソフィー皇女は慌てて淑女の礼をしようとベットから下りようとしたが、陛下が静止させた。


「そのままでよい」

「このような姿で申し訳ございません」

「いやいや、先ずは無事で良かった」

「そうですわ、こんな可愛らしい双子ちゃんも元気ですし」

「色々あると思うけど、先ずはゆっくりしましょう」

「ちょうど、昼食の用意もできていますわ」

「「食べる!」」

「あらまあ、元気ね」

「すみません、朝から何も食べてないもので」

「それはいけないわ」

「ちゃんと食べないと、回復も遅いわ」


 オーウェン皇子とベラ皇女も昼食に食いつき、しかも皆さん朝から食べていないというので、食堂に移動して昼食にする。


「「うわあ!」」


 席について出されたプレートに、オーウェン皇子とベラ皇女は興奮している。

 スラタロウは二人の子どもがいるというので、お子様ランチを急遽作ったのだ。

 ちゃんと帝国の旗もついているあたり、とても芸が細かい。

 

「「いただきまーす! 美味しい!」」

「本当に美味しい! 素晴らしい料理ですわ」


 空腹もあったのか、特にオーウェン皇子とベラ皇女はガツガツ食べている。

 大人は魚を使ったコース料理だけど、ソフィー皇女も満足して頂いている。

 当然陛下や王妃様達に、この場にいる閣僚やノースランド公爵も大満足。


「こんな美味い料理を食べていたとは」

「良いだろう! 一昨日の海鮮鍋なんて、米酒とあって最高だった」

「くう、もっと早く誘いに乗っていれば良かった」


 ドラコの母親の隣には、何故か悔しがる青い髪で青のドレスを着た美女がいた。

 ドラコやシラユキの所には、同じ歳位のやはり青い髪で青いドレスをきた少女がいる。

 どう見てもさっき助けてくれた海龍の親子と思われるから、後で挨拶に行かないと。


「とても素晴らしい料理でしたわ」

「「美味しかった!」」


 ソフィー皇女達は、スラタロウの昼食に満足したようだ。

 とても良い笑顔でいる。

 と、ここで何故かシェフの帽子をかぶったスラタロウが出てきて、オーウェン皇子とベラ皇女に魔法を使った飴細工を目の前で作った。

 飴があっという間に姿を変えていき、オーウェン皇子とベラ皇女の目は興奮でキラキラしている。


「わあ、お魚さんだ!」

「こっちはカニさんだ!」


 二人は貰った飴細工を、美味しそうに食べている。


「ソフィー。このスライムはスラタロウっていって、今日の料理を作った超絶料理人だよ」

「え? スライムが料理ですか? でも、この飴細工を見れば技術の高さがわかります」


 ソフィー皇女は、スラタロウの即興での飴細工の技量をみて料理が凄いと納得したようだ。

 スラタロウは、そのまま各テーブルに食後の紅茶を入れていく。


「う、嘘だろ? スライムが料理を作るなんて」

「私も最初は信じられなかったけど、今じゃ間違いなく大陸でも有数の料理人だと思っているよ」


 海龍と思われる人は、スラタロウが料理を作ったことに驚愕していたが、既にスラタロウの料理の虜になっているドラコの母親は、さも当たり前だと言っている。

 娘の方はすんなりと受け入れていて、また食べたいと言っていた。

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