第二百二十三話 大型船を救え
「天気が微妙だな……」
皇女が入国する当日、雨は降っていないが曇り空で風も吹いていた。
波も幾分たっているし、航海には少し不向きだ。
うちは流石に全員で来るわけにはいかないので、出迎えは俺とエステルとリンとフローレンスとレイア。
万が一の事を考えて、ミケとララとリリにドラコとシラユキがスタンバイ。
ミケはバハムートに乗れば空を飛べるし、他のメンバーは自力で飛行可能。
軍の船もスタンバイしている。
「万が一、帝国内で船が襲われても大丈夫。助っ人を呼んでいるから」
真っ赤なチャイナドレスを着込んだドラコの母親が何故かここにいるが、何かあっても大丈夫だという。
他に受け入れ側として、ノースランド公爵と軍務卿に外務卿がいる。
「あ、大きな船が出港したよ!」
ミケが対岸の帝国から大きな船が出たといったが、俺には遠くて流石に分からない。
流石は獣人、すごい視力だな。
帝国の紋章を付けた大型船が、こちらに近づいてくる。
おや? 大型船の周りに、足の速い小型船が複数取り付いてきたぞ。
「あ、攻撃した!」
ミケが小型船が何かをしたというが、俺も気が付いた。
小型船に乗っているやつらが、大型船に向かって魔法を放っている。
大型船も反撃しているけど、多勢に無勢だ。
次第に小型船に取り囲まれている。
「お兄ちゃん、助けにいかないと」
「駄目だ、こちらの領域に入らないと手助けできない」
大型船から火の手が上がり、小型船から人が乗り移っている。
本格的にヤバイと思ったとき、大型船の近くから波しぶきが上がったかと思ったら、海から龍が現れた。
「あれは海龍か?」
「おっきい!」
「やっとお出ましか。遅いね」
ドラコの母親が苦笑しているが、二十メートルはある大型船と同じ大きさの海龍だ。
小型船は龍に怯んで、大型船への攻撃が一時的に止まった。
その隙に今度は小さめの龍が現れ、大型船をこちらに引っ張ってきた。
「よし、軍船は国境でスタンバイ。国境を超えたら直ぐに救助開始だ」
軍務卿の指示により、すぐさま軍船が動き出す。
ミケ達も既に上空で待機していて、何時でも動ける様にしている。
その間も大型船は龍引っ張られ、とうとう境界線の島を超え王国の領域に入った。
「行動開始!」
軍務卿の合図に伴い、上空で待機していたミケ達が大型船に着陸する。
船上で、襲撃者を捕獲し始めた。
ララとシラユキは水魔法が使えるので、大型船の消火活動も開始している。
軍船も大型船に接続し、タグボートの様に牽引している。
小型船は形勢不利と判断して次々に逃げ出したが、一部は海龍に捕獲されこちらに連れてこられた。
近づいた軍船によって、小型船ごと確保する。
大型船は魔法攻撃と無理な航行でだいぶ損害を受けているが、何とか港に接岸した。
直ぐに兵が船内に入り、怪我人を担架に乗せて運んできた。
捕縛された襲撃者も運ばれてきたが、中には大型船の船員と思わしき人物も含まれていた。
一番ビックリしたのが、倒された魔獣が運ばれてきた事。
この襲撃に、人神教国が絡んでいる証拠にもなった。
「ソフィー!」
エステルが、船から降ろされた担架に乗せられている人に駆け寄った。
ソフィー皇女は頭を打っているのか、出血をしていた。
更に双子と思わしき、豪華な服を着た男女の子どもも担架に乗せられて運ばれてきた。
歓迎会はひとまず置いといて、先ずは怪我人の治療を始めないと。
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