第二百八話 被災者を救い出せ
「瓦礫を運べ! 怪我人はピストン輸送だ!」
「人命第一に! 他の領からも怪我人がくるかもしれないぞ!」
うちのメンバーに加えてルキアさんの獣人部隊と軍からの部隊も加わり、崩れた建物から閉じ込められた人を助け出す。
ニール子爵の屋敷前にある広場に救護所を作り、手分けして治療を行っていく。
屋敷も被害を受けていたが、幸いにして領主とかは怪我をしたものの無事だった。
「お父様! 無事でよかった」
「エスメ、駆けつけてきてくれて嬉しいが今は人命救助が先だ。エスメも手伝ってくれ」
「勿論です!」
屋敷にあるパーティールームを臨時の対策本部にして、文官や実習生が集めた被害状況が集められる。
ニール子爵領で建物の三分の一が全壊しているから、震源地に近いブレンド伯爵領がどれ位の被害を受けているか想像もできない。
俺とニール子爵は、被害状況を纏めて一旦王城に向かった。
「ニール卿、よく無事だったな」
「陛下の素早い対応に感謝します。被害が大きく、我が領だけでは対応できませんでした」
直ぐに陛下と閣僚が迎えてくれた。
ニール子爵が生きてと言うのが、とても大きいのだろう。
「こんな中で悪いが、ブレンド伯爵領からの難民にも気をつけないとならない」
「陛下、どういう事ですか?」
「王都にあるブレンド伯爵の屋敷に救助を打診したが、貴族主義の連中で対応するからと断られてしまった」
「何と! そんなことが起きるなんて」
ニール子爵もビックリだけど、俺もビックリだぞ。
普通災害が起きたのだから、直ぐに救助要請はするものだと思うけど。
それ程まで貴族主義を貫くとは。
もしかしたら、災害の酷さを知らないのかもしれない。
「ニール子爵領に関しては、災害対策本部にいたエスメからの要請にしてある。事後承諾になりすまないな」
「いえ、ここはエスメを褒めてやるべきかと。私はそう思います」
うん、普通はこうだよね。
これは思ったよりも不味いことになるかも。
難民キャンプは広めに作ろう。
何人かの追加の文官も引き連れて、俺とニール子爵はニール子爵領主に戻った。
「やっぱりそうかと思ったのじゃ。既にスラタロウが郊外に大きめのキャンプ地を作っておる」
「難民と街の人は、キャンプ地を分けたほうが良いですね」
臨時の対策本部で対応していたビアンカ殿下は、貴族主義の動きは予想通りだと思っていたようだ。
俺はそこまで馬鹿だと思わなかったけど。
「それよりも怪我人が多くて治療の手が足らん。サトーには直ぐに治療に回ってほしい」
「分かりました。ニール子爵にエスメ、後は頼みます」
「こちらは任せよ」
「サトーさんもお気をつけて」
屋敷の前の救護所に行くと、多くの怪我人で溢れていた。
子ども達とホワイトを筆頭にした従魔が、懸命に治療をしていた。
「お兄ちゃん来た!」
「早く早く」
ララとリリの所に行って、先ずはエリアヒールで軽傷者を一気に治す。
アイテムボックスからポーションをあるだけ出して、侍従希望の実習生に渡していく。
その間に、重傷者を治療していく。
レイアも治療にまわっているということは、本当に手が足りないんだ。
「おりゃー!」
「うりゃー!」
ミケやドラコの様な力自慢が、人間ブルドーザーの様に次々と壊れた家を解体していく。
そして空いたスペースから、獣人と兵士が人を救出していく。
「あそこに誰がいるよ!」
「こっちにも!」
マシュー君達の探索能力が遺憾なく発揮され、閉じ込められた人を探し当てていく。
残念ながら亡くなってしまった人は探し当てられないが、それでも多くの人を探す事が出来た。
一部部隊は近隣の領地に散らばっていき、ニール子爵領を中心にして救出の手の範囲を広げていった。
「はい、どうぞ。温かいスープですよ」
「有り難い」
「息子も救出されて、本当によかった」
スラタロウが郊外に整備したキャンプ地には次々とテントが建てられ、フローレンス達を中心として炊き出しが行われていた。
中には治療を終えた家族と再会し、涙を流している人もいる。
倒壊現場には灯りが灯されて、夜を徹しての捜索が続いていた。
今日は夜を徹しての捜索が続くだろう。
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