第二百五話 実習編薬草取り選手権

 実習が始まって十日程。

 実習生もうちでの生活や実習内容に慣れてきたので、ここで異業種体験。

 冒険者の体験ということで、薬草をもりもり取ります。

 軍属希望には護衛の練習も兼ねるので、初心者お勧めのバルガス公爵領ではなくバスク子爵領に行きます。


「一杯取るぞ!」

「「「おー!」」」


 子ども達は沢山薬草を取るつもりだが、実習であることを忘れてはいけない。

 薬草取り名人のタラちゃんとポチとフランソワに、取る対象の薬草を実習生に教えながら進める。


「この薬草は風邪にも効くから、在庫が少なくなると風邪が流行している」

「そういう観点から、色々な事を調べる事ができるのですね」


 レイアのは統計学の応用だけど、実習生はこんなことにも使えるとはと驚いていた。

 使いようによっては何にでも使えるから、こういうのは覚えておいた方が良い。


「薬草は、下処理をすれば食用にできます。非常時に役に立ちますので、覚えておいて良いでしょう」

「「はい!」」


 そういえば前にも薬草を食べた事があったな。

 マリリさんは雑学も豊富だし、意外と博学なんだよな。


「常に護衛対象がわかる位置に。魔物もできるだけ一撃で仕留めて下さい」

「「はい」」


 軍属希望は、オリガからの指示でうまく広がっている。

 何せ今日は護衛対象が多いから、いい訓練になるだろう。

 動きもまずまず良くなっているし、特に魔法使い志望の成長が著しい。

 これなら、実習終わりまでにある程度の実力は持ちそうだ。


「お兄ちゃん、新しいカゴ頂戴」

「こっちも」

「はいはい、直ぐに出すよ」


 そして人手も多いので、どんどん薬草が取れていく。

 次々にカゴが一杯になるので、俺も新しいカゴを次々に出す。


 と言ってもカゴの数は有限なので、お昼前に一旦ギルドに取れた分を卸した。

 精算は午後来たときに纏めて行う。


 そして、お昼はマナーの実践練習。


「よく来たね」

「「「「宜しくお願いします」」」」


 テリー様のご厚意でお屋敷で昼食を頂けるので、食事マナーを実践する。


「しかし、十五名か。うちも一名受け入れているが、サトー殿は凄いな」

「いえいえ、何とかこなすだけで精一杯です」

「ははは、それにバスク領出身者が活躍していて、我が領にも良い影響が沢山あってな。士官希望者も多くて困っておるよ」


 テリー様はニコニコが止まらない。

 リンが独自に名誉爵位を貰っているし、オリガ達も勲章を貰っている。

 聖女部隊としての名声もあるので、実力者を輩出したバスク領は多くの人が集まり発展著しいという。

 王都の領地改革研修にも、文官を三人派遣するという力の入れようだ。

 そして新しい子ども達は、エーファ様とサーシャさんに服のサイズをはかるために連れて行かれた。

 因みに俺とミケが謁見で着ていたスパイダーシルクの服を、エーファ様とサーシャさんが作ったことが広まり、他の貴族からも服の注文がきているらしい。

 服飾専門の侍従を雇った程忙しいのだが、俺達は別枠として扱ってくれた。

 とても有り難いことだ。


「「「「緊張した……」」」」


 と、実習生が言っているが、特に粗相もなかったし大丈夫だと思った。

 フローレンス達も問題ないと言っている。

 因みに実習生も、エーファ様とサーシャさんによって服のサイズをはかられていた。

 俺達のメンバーという位置づけだという。

 今度改めてお礼をしないと。

 恐らくスパイダーシルクが欲しいだろうから、タラちゃん達にお願いしておこう。


「にーに、カゴ頂戴」

「はいよ」


 そして午後も薬草取りを再開。

 マシュー君達はニードルラットのニーがいるので、意外と薬草を取るのが早い。

 因みにマシュー君達は本当は冒険者活動ができない年齢だが、以前ギルドで暴れていた冒険者を制圧した功績で特例で冒険者活動が許可された。

 ただし、お金はお姉ちゃんの管理です。

 コタローとマチルダは、俺がお金を管理している。


「うん、剣士としても腕は良さそうですね」

「ありがとうございます」


 午後は、実習生がお互いの立ち位置を変えて薬草取りをしている。

 なので、今護衛に入っているのは文官希望の実習生だ。

 遠征に行くときは魔物と戦う事も想定されるので、自分の身は守れた方が良い。

 意外だったのが、侍従希望者の強さだった。

 万が一の時は主を守らないといけないということで、時々戦闘訓練を受けているという。

 しかし、メイド服を着た女の子がハルバードを振り回していたのにはビックリした。

 下手な軍属の兵よりも強いんじゃないかな?


「おーい。カゴが無くなるから、今のカゴが一杯になったら終わりだ」

「「「はーい」」」


 子ども達が返事をしたが、カゴを追加購入したとはいえ人数が多いからあっという間に一杯になった。

 三時過ぎだけど、今日はこれでおしまいだ。

 カゴを回収して、再びギルドに卸に行く。

 ふふふ、入金される金額を見てビックリするだろうな。


「俺、こんな金額初めてみた」

「私も」 

「以前に薬草取りをしたけど、金額が違いすぎる」


 実習生は、薬草の買い取り金額を見てビックリしていた。

 うちらは数で補うし、状態が良い様に取るからな。

 これが薬草ハンターと言われる所以です。

 中にはお子様な二つ名とからかう冒険者もいるけど、大抵は大量の薬草を見て黙り込む。


「いい実習訓練にもなるし、これからも何回か薬草取りは行うぞ」

「本当ですか?」

「実家にお土産が買えます!」


 また薬草取りができるので、実習生は大喜びだ。

 休日に王都の近くの森でとってもいいし、これからも頑張ってほしい。


「ふふ、ウーちゃん!」

「キュイ」


 そして、何人かは従魔を持つことができた。

 うさ耳の首席の子は、フォレストラビットを仲間にしてとても嬉しそうだ。

 

「因みに従魔にした魔物は魔法が使える事が多いので、帰ったら適性検査をしておこう」

「本当ですか? 凄いです!」


 従魔ができたということは、それだけ心が優しい証拠でもある。

 他の実習生も直ぐに従魔を見つけられそうだし、ますます賑やかになりそうだ。

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