第二百三話 実習開始
翌朝、庭には実習生と子ども達がいた。
今日から実習の始まりなのだが、それとは別に魔法の指導をすることになっている。
因みにマシュー君とコタローは、まだ魔法の練習には参加していない。
既にある程度魔法が使える子ども達が、実習生と手を繋ぎ魔力循環を行う。
「うーん、うまく循環できていないね」
「お兄ちゃん、魔力詰まり治すの手伝って」
「もっとゆっくりやってみて」
というのも、魔力詰まりがいたりうまく魔力を制御できなかったりと色々問題を抱えていた。
魔法使い志望も魔力詰まりを起こしていたので、これでよく魔法が使えると思ったよ。
「先ずは一週間、子ども達と一緒に魔力循環の練習をしましょう。体の中を流れる魔力の感覚が、だいぶ変わりますよ」
「「「「はい!」」」」
実習生はいきいきとした目をしていた。
というのも、学園で魔法を教える先生に問題があるという。
「この子達の先生は、よりによって貴族主義のアホ教師なの。魔法の教え方が下手くそなのに、威張って教えるから全く効果無いの」
珍しく朝早く起きてきたエステルが、実習生が魔法の制御ができない原因を話してくれた。
ここでも貴族主義の連中かよ。
しかも親もしゃしゃり出るらしいので、学園でも扱いに困っているという。
時々こういうアホな教師が、学園の中にもいるらしい。
ということで、これから休日以外は毎朝魔法の練習を行います。
朝ごはんを食べたら、実習開始。
侍従組は、早速フローレンスと色々始めるそうだ。
軍属組は、今日は実力を見るために一日庭で適性検査をするという。
と、何故かリーフだけ軍に行くらしい。どうも、今日は依頼があるという。
ということで、俺はレイアと実習生と共に王城に出勤する。
「おー、見たことない人が一杯」
レイアが実習生が沢山いてビックリしていたけど、どの部署も実習生を受け入れていた。
俺はいつもの宰相の執務室に入っていく。
「おお、来たか。こちらも一人いるぞ」
宰相も一人実習生を受け入れていた。
そのまま実習生に説明をしながら、仕事を始める。
「勉強したことがそのまま仕事に生かされることはない。むしろ全然知らない事の方が多い」
「では、レイア執務官はどうやって仕事をしていますか?」
「問題の本質を見抜く。短期と長期の目線で解決策を探る」
「へー、そうしているんですね」
「後は最悪の場合の想定もしておく。最小の労力で最大の成果を上げるように、方法の検討をする」
「はー、為になります」
「後は使えるものは何でも使う。これが一番大事。レイアはパパもつかう。ふふ」
レイアが実習生に仕事の仕方を教えていたけど、それが出来たら物事はうまくまわるよ。
あと、レイアは俺も陛下も遠慮なく使うからな。
「サトー様は、どうやって仕事をしていますか?」
「レイアの様な仕事ができればいいんだけどね。俺もできるだけ本質を探るようにするよ。でないと、解決策を見いだせないから」
俺も本質は変わらないけど、レイアの様に何でも使うことはしないな。
そのままガリガリと業務を進めていくと、お昼の時間になる。
「宰相はどうしますか?」
「いつも通り食堂にいくぞ。サトーは弁当か?」
「はい、実習生も弁当がありますので」
宰相は、宰相担当の実習生と他の職員を連れて食堂に向かった。
俺達は、場所を移動してスラタロウ作成の弁当をあける。
「「「「「「うわあ!」」」」」」
実習生は一斉に歓声を上げた。
いわゆるキャラ弁だからだ。
勿論栄養もバッチリだ。
「とても可愛らしいですね」
「食べるのがもったいないです」
女性陣はデフォルメされたおにぎりがお気に入りで、首席の子はうさ耳をピコピコさせていた。
「うまうま」
「凄い! 美味しい!」
「昨日も思ったけど、スライムの作る料理ではないですよ」
レイアと男性陣は、早速弁当を食べて味に感動している。
女性陣も食べて、その味にビックリしている。
弁当を食べてまったりしていると、宰相達が帰ってきた。
「いやあ、今日の食堂は行かなくて正解だったよ」
「何かあったんですか?」
「どうも工事で水が一部使えなかったらしくてな。料理の作り出しが遅れていたという」
「食堂で水が使えないのは致命的ですね」
地獄絵の食堂が目に浮かぶ。
腹ペコ軍団が、食堂のおばちゃんに押し寄せる所が。
「それで、サトーの屋敷にヘルプがいって、スラタロウと実習生が手伝っていたぞ」
「何故うちにヘルプがいったのか、とっても謎なんですけど」
「スラタロウが作ったからか、ただのオムライスがふわふわトロトロのたまごになっていたな」
「普通のたまごで良かったのに」
スラタロウの料理なら、別の意味で騒動になる気がする。
無事にお昼ごはんが食べられて、良かった良かったと思っておこう。
さて、午後の業務を始めよう。
書類を処理していくと、気になる書類が出てきた。
何々? 学園教師の軍部への出張命令書だって?
「サトーも聞いただろう、学園でまともに魔法を教えられない教師について」
「その話ですか。ビックリしましたよ」
「軍に強制的に送り、性根を鍛え直すことにした。リーフが担当だな」
「朝聞きました。指名が入ったとか言ってましたね」
「臨時講師を派遣して穴埋めをする。たまにリーフにも入って貰うぞ」
「シルとリーフは今や殆ど軍属なので、命令があればどこにでも行くでしょうね」
今日帰ったら、リーフに様子を聞いてみよう。
そこまで駄目だと、とっても気になる。
「サトーの所の実習生に聞いたが、早速魔法の練習をしているそうだな。時々でいいから、うちにきている実習生にも教えて欲しい」
「大丈夫ですよ。子ども達の練習も兼ねてますから、基礎から教えます」
今年はどこの実習生も、魔法関係は苦労しそうだ。
少しでも手助けになればいいな。
書類の書き方を教えつつ、夕方になったので皆で帰宅。
何だか一日気を張っていたな。
「疲れているから、お風呂に入ったほうがいいよ」
「「「「「「はい!」」」」」」
実習生達をお風呂に送り出しながら、俺は食堂に。
スラタロウに感謝しながら、フローレンスにお昼の様子を聞いた。
「皆さんが王城に行ったあとに、こちらに使いが来たんです。それでスラタロウがあっという間に下ごしらえをして、実習生をつれていきました」
「実習中にすまないな」
「それが、スラタロウが料理の仕方や片付け方に配膳の方法を教えてくれたと、逆に実習生から感謝されました」
うん、実習生の為になっているなら、何も言わないでおこう。
と、そこに疲れ切ったリーフがやってきた。
「ただいまー、もう疲れたよー」
「何だかふらふらしているな。タヌキ教師の件か?」
「そうそう、その件だよー」
食堂の専用スペースに座ったところで、水をがぶ飲みしている。
ビールを飲むサラリーマンの様だぞ。
「あの教師、全然魔法使えないのよー。正直コタローの方が上手いよー」
「コタローより下手くそって、何で教師になれたんだ?」
「書類を偽装していたよー。即刻解雇になったよー。それで、文書偽造罪で逮捕ー」
うん、あの貴族主義の連中なら、書類偽装しても何も疑問に思わない。
逆に解雇になって良かったと思う。
「代替教師を見つけるまでの間、私とチナで代わりをするのー」
「チナさんなら教えるのも上手いし、全く問題ないですね」
「ララとリリも手伝うって言っているから、当面は大丈夫だよー」
これだけの事があったのなら、リーフがヘロヘロになるのはよく分かる。
早速明日から授業をするらしいので、チナさんも今は準備をしているという。
チナさんは巡回用の騎士服を持っているので、それで授業をするそうだ。
「流石に疲れた」
夕食を食べてお風呂に入ったら、ベットにダイブした。
レイアは既に寝ているし、他の子ども達も寝ている。
なんだかんだで色々あったし、疲れたのだろう。
俺も早く寝よう。
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