第百八十五話 王都の屋敷

「うわー、おっきいーねー!」

「隣には何回もきたけど、改めて見ると大きいな」


 王城の内務局で俺が受け取る屋敷の鍵を貰い、皆でお屋敷に移動する。

 ゴミ屋敷対応で何回もきたけど、改めて見ると大きいよな。

 部屋数も多いって言うし、うちの人数でも一人一部屋は余裕である。


「おおー! ひろーい!」


 ミケのはしゃぐ声が、お屋敷の中に響いている。

 建物は二階建てで、一階にメイドや執事などの部屋にサンルームとかがある。

 二階にパーティールームと俺達の部屋がある。

 ここでパーティーする事ってあるのかな?

 庭には馬小屋と別の使用人の部屋がある。

 このお屋敷が王国に没収された際に、絵画や壺などの美術品も没収されたらしい。

 最低限の物しかないので、中はスッキリとしている。


 ゴレス領にいる面々も集めて、部屋の割り振りを決める。

 この中に継承権付きの爵位持ちが四人いるけど、俺が一番高位なので主人の部屋は俺になるという。

 というか、俺が伯爵でミケとシルク様が子爵にレイアが男爵。

 いくら俺の保護下にあるとはいえ、爵位持ちが多いな。

 早速主人部屋のドアをあけると、既に子ども達によって占拠されていた。

 

「お前達にも、部屋はあるだろうが!」

「「「「寝る時は一緒!」」」」


 この子らは、もう少し大きくならないと一人で寝られなさそう。

 ドラコとマチルダは、個別の部屋で寝るそうだ。

 まあ、マチルダは誰かの部屋で寝てそうだが。

 シルク様も部屋を決めて、早速荷物を出している。

 リンにエステルも部屋を決めているが、エステルは結婚前だから王城じゃないの?


「王城だとお母さんがうるさいし、ここだと自由に羽を伸ばせるからね」


 後で、フローラ様にチクってやろう。

 既にベットの上でゴロゴロしているし。

 

「流石に妾は王城の部屋にいくぞ。たまに泊まる事はあるがな」

「その言葉を、エステルに言ってやって下さい」


 どう考えても、ビアンカ殿下の考えが正しい。

 

 アメリア達も各部屋を決めたが、流石にマシュー君達と一緒だ。

 マシュー君達の部屋も用意してあるので、大きくなっても大丈夫。

 クロエは使用人の部屋を使いそうになったので、二階の部屋を勧めた。

 フローレンスは使用人扱いになるので、使用人部屋になる。

 オリガとガルフにマリリさんとマルクは、今は別々の部屋だけど結婚したら一緒の部屋になる。

 ここであることに気がついた。


「使用人が少ない……」

「皆さん冒険者でもあるので、自分の事は自分でできますからね」


 フローレンスも思わず苦笑い。

 マルクが執事をこなしてくれるけど、メイドさんが二人しかいない。

 私兵扱いのオリガとガルフもいるけど、門番もいない。


「お兄ちゃん、馬が門番やる気だよ」

「それは駄目だ。何かあった際に被害が大きくなる」


 今は良いかもしれないけど、あの馬では襲撃者が逆に危なくなる。

 スラタロウという最強の料理人がいるしタコヤキだって料理ができるが、料理人を雇わないわけにはいかない。


「最低でも、メイドは三人に料理人は二人。兵は四人に、庭師や馬係も必要じゃな」

「バルガス様に会うときに、色々聞いてみよう」

「ルキアでも良いじゃろう。どうせサトー達は金もある。余分に雇っても問題ないだろう。ただし、メンバーがメンバーなだけに信用できるものだけ雇う事になるじゃろうな」


 ビアンカ殿下のアドバイスもあり、バルガス様にルキアさんとテリー様にも来てもらって相談にのってもらいます。


「ははは、一から屋敷を起こすことは少ないからな。しかも王女が嫁ぐとなると、信用信頼が一番になる」

「私の所はじいやとばあやがいましたから、全て一からでないので助かりました。サトー様ならきっと大丈夫ですよ」

「それだけサトー殿が大きくなったということですな。ガルフもオリガも、マリリにマルクまで勲章を頂けるなんて、バスク家としても嬉しい事だよ」


 うう、皆良い人だよ。

 大変だと言って慰めてくれるよ。

 しかも人員問題も一発で解決した。


「バルガス家で預かっている違法奴隷の子で、将来はサトー殿の役に立ちたいと言っている者がおる。庭師も余りがいるので、丁度よい」

「獣人夫婦で是非サトー様に仕えたいという人が何人かいます。ランドルフ領でも、サトー様が治療したメイドが仕えたいと。後は、チナさん達もサトー様に恩返ししたいと言っています」

「うちは馬係が余っているし、どうもワース商会から助けた牝馬二頭がサトー殿の馬の子を宿しているので、ついでに引き取って欲しい」


 全員関係者だから俺達もよく知っているし、全然大丈夫だ。

 というか馬よ。助けた牝馬と、ちゃっかりやっているとはどういうことだよ!


 関係者が集まっているので、ついでだから陛下からの手紙を渡した。

 一読して、直ぐに状態を判断してくれた。


「成程、またまた大変な事になりましたな。明日サトー殿が来られるように、こちらも準備をしておこう」

「アルス殿下に連絡が行っていると思いますが、念の為にギース伯爵領のヘレーネ様にもお伝えします」

「こちらの領も不審者の監視を強化しよう。何せ王都南の要所だからな」


 流石優秀な皆様、直ぐに色々動いてくれるという。

 貴族主義の連中も、大いに見習って欲しいよ。

 バルガス様達を送りながら、仕えたい人に様子を聞くと直ぐにでも行きたいと言ってくれた。

 準備があるので、明日朝にもう一回迎えに行くことで合意できた。


「サトーさん、王都にもオース商会がありますので、必要なものを購入してもいいですか?」

「そういえば、オース商会は王都にも店を出していましたね。お願いできますか? 基本的な買い物は、オース商会かこの間の王族御用達の所にしておきましょう」

「それが良いじゃろう。オース商会ならバスク家御用商人でもあるし、全く問題ないじゃろう」

「では、早速連絡しておきますね」


 生活必需品とかを揃えれば、当面の間は問題ないな。

 というか、俺は明日から早速出張になるけど。

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