第百八十四話 緊急会議

「先ずはサトーに命を助けて貰ったお礼をせねばならないな」

「いえ、当然の事をしたまでて」

「謙遜するな。並の魔法使いではあの魔法を防げないというのは、誰でも分かることだ」


 お城でも最上階に近い所で会議を始める前に、陛下からタヌキ侯爵が放った魔法を防いだことに対してのお礼を言われた。

 エステルやレイアにビアンカ殿下でも防げたけど、逆に言うとそのくらいの実力者でないと防げないともいえる。


「さて、色々決めないといけないことがあるな。先ずは王都と国境の防衛だ」


 陛下は仮想敵国を言っていないが、誰もが人神教国が相手であると思っている。


「流石に先程の魔法では、妾達が作った防壁では防ぎきれぬ」

「あの魔法は反則だよね」


 エステルが苦笑いするのもわかる。

 タヌキ侯爵の魔法は、瞬間的な破壊力なら中々のものがあった。

 一発ならともかく、複数回撃たれたらいくらビアンカ殿下とスラタロウの作った防壁であっても防げないだろう。


「だか、手はある。防壁の土にドラゴンのウロコの粉を混ぜ込めば、かなりの魔法耐性がつく」

「いやいや、どうやってドラゴンウロコを手に入れれば……って、まさか」

「そう、先日ドラコが脱皮したのを使う」


 この間ドラコが皮膚がムズムズするといって、屋敷の庭でドラゴンの姿になって脱皮をしていた。

 まだ子どもとはいえ、上位龍のレッドドラゴン。

 飛龍とかとは、比べ物にならない程の魔法耐性がある。

 ちなみに、まだ空を飛んだり火を吹いたりはできないという。


「しかも、ドラコの家に行けば大量のウロコがあるという」

「確かに、ドラゴンにとっては唯の脱け殻だよな」


 これがこちらではとんでもない価値があるものだというが、ドラコも全部あげるといっていたよ。


「国境を先にしよう。ビアンカが作った防壁の外側に、ウロコを混ぜたレンガを貼り付ける。それなら奴らにも、唯の補修工事だと思われてばれるリスクは少ないだろう」

「いま手元に、ツボ一つ分のドラコのウロコを砕いたのがある。これを軍務卿に渡して実験してもらおう」

「気楽に渡されたけど、このツボ一つで何億ゴールドの価値があるだろう」


 追加でウロコを粉にして、宰相や軍務卿に渡そう。

 とにかくレンガ製造を急がないと。

 価値観がわからないから、数億ゴールドと言われてもピンとこない。


「王城に使う分は流石に足りぬ。これは、ドラコの実家に取りにいかぬと」

「よし、王国からも文を書こう。こういうのは早いほうがいい」

 

 ということで、早めにドラコの実家に向かうことになった。

 場所は以前にも聞いたけど、バルガス公爵領の南にあるドワーフ自治領にある。

 

「とはいえ、軍の強化もしなければならない。当分シルとリーフは、王城で生活だな」

「王都の防衛強化も必要ですから、ミケ達は残しておきたいです」

「王都の屋敷を引き渡しておく。こちらでも生活できた方が良いじゃろう」


 一番の問題だった隣のゴミ屋敷が解決したので、引っ越しに支障はない。

 あのゴミ屋敷が隣だったら、本当に住むのは嫌だったよ。


「タヌキの後処理が終わったら、直ぐにゴレス領に代官を送ろう。サトー達には、できるだけ王都防衛に時間を割いてほしい」


 引き継ぎが終われば、ゴレス領から王都に生活拠点を移せる。

 時々ゴレス領に行く必要はあるかもしれないけど、これで少しは腰を落ち着けられそうだ。


「後は、タヌキの事だな」


 突然魔獣になったのは、前にもあった。

 また奥歯とかに、魔獣化する薬を隠していたのだろう。

 恐らく改良型だけど、あれだけの魔法を放った原因は何となく分かっている。


「タヌキ侯爵は、死体になったときに一気に老け込んでいました。恐らく体の中の生命エネルギーを、一気に使ったのでしょう」

「研究所の解析結果次第だが、そうであろう。やつは魔法が苦手だったからな」

「うちの子たちは大丈夫ですけど、軍も魔法障壁の訓練は必要ですね」

 

 そういえば護りの魔道具があったはず。

 バルガス公爵領にいった際に、魔道具屋のおばあさんに使い方を聞いてみよう。


「外務卿は人神教国の動向を確認するように。内務卿は貴族主義の連中で、領地に戻ったり謹慎がとけるものを軍務卿と共に監視するように。農商務卿は、物価の変動に気をつけるように」

「「「直ぐに動きます」」」

 

 閣僚に指示を出して、会議は終わり。

 俺は屋敷を貰ったら、引っ越ししてバルガス公爵領に行ける準備をしよう。

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